実践編
第3回
オペレータが人間である限り、失敗はゼロにはできず、どこかで必ずミスが発生してしまいます。オペレータがミスをした際に、どうSV(リーダー)がリカバリーやサポートをするかが、オペレータや周囲の人々の心をつかむカギとなります。今回は、オペレータの誤案内により大事件に発展してしまった、ある出来事の顛末をリアルにご紹介します。
コンタクトセンターでは、トラブルが発生したとしても、直接お客様とお会いすることなく、電話やメール、チャットで完結することがほとんどです。オペレータのミスにより、お客様に迷惑をおかけしてしまい、その結果、お客様から直接訪問による謝罪を求められることもあります。
ある時、センターでこんなことが起こりました。主婦のオペレータのTさんが、聞き間違いでお客様に誤案内をしてしまい、お客様に無駄な料金がかかるなど迷惑がかかってしまいました。その結果、お客様が非常にお怒りになるという事件が起きたのです。

お客様は、声からすると50代の男性で、オペレータが着用するヘッドセットから声が漏れ聞こえるくらいお怒りでした。お客様は、ミスをしてしまったTさんを電話に出せと何度も叫んだり、Tさんが出るまで何度もセンターに架け直してこられたりしました。
どんな優秀なオペレータでも、人間なのでミスを犯すことだってあります。Tさんには、しばらく仮名を名乗って電話対応をしてもらっていましたが、その後もお客様は何度もセンターに電話をしてきて、出たオペレータを罵倒するため、Tさんも気が気ではありません。ついには、Tさんも他のオペレータに迷惑がかかっていることを申し訳なく思ったのか、電話に出て直接お客様に謝罪したいと私に申し出てきました。
いろいろ検討した結果、お客様もそれで納得してくれると思い、Tさんにお客様と電話で話をしてもらうことにしました。私は、Tさんのそばについてモニタリングをしていましたが、あまりのお客様の怒り口調で、Tさんのメモを取る手は震え、目に涙を溜めて対応しています。Tさんは必死になって謝罪しましたが、Tさんなりの精一杯の誠意や謝罪も通じず、お客様は許してくれませんでした。
もう限界と思われた時、お客様から「お前はもういい。一番偉いやつを出せ!」と言われ、私が上席対応することになったのです。お客様に丁重にこれまでの経緯を正直に説明し、誠意を持って謝罪しましたが、直接会って謝らなければ絶対に許さないと言うので、直接お客様に会うことにしました。
夕方、私と副センター長、料金担当者の3名でセンターを出発し、特急電車に1時間ほど揺られ、最寄駅からタクシーに乗って、お客様から指示された場所に向かいました。お会いした時の衝撃は、今でも忘れません。遠くから、まさかあの人じゃないよなと思いながら近づいていくと、見た目からして、かなり強面の人でした。そう、頭にヤのつく職業の方だったのです。ちなみに、薬剤師でも役者でもないですよ。
直接、お客様と話をすること約2時間。今回は100%センター側に非があるため、お客様には、こっぴどく叱られました。そして、ようやく許してもらい、別れ際に菓子折りをお渡しして、お客様とお別れしました。
帰り道、一緒に同行した料金担当者が「寺下さん、よく2時間も目を1回も逸らさずに対応しましたね」。私が「そりゃ、目を逸らしたら、やばかったでしょ」と言うと、料金担当者が「あの時、目を1回でも逸らしていたら、殴られてましたよ」。以前、クレーム時に担当者を殴ったことがあるらしく、逮捕されたこともある、いわくつきのお客様でした。テレビCMではないですが、「それ、早く言ってよぉ」と思ったものです。

訪問謝罪をした翌日の朝。Tさんは、いつもより30分も早い時間に出社して真っ先に私の所に来ました。Tさんは、すぐ駆け寄ってきて、「寺下さん、本当にありがとうございました。さっき、夜勤のSVさんから、夜遅い時間にセンターに戻られたとお聞きしました。本当にありがとうございました」と、深々と、そして何度もお辞儀をされました。
私は、Tさんに「何とかお客様に許してもらったから、もう大丈夫ですよ。お客様も、もう怒ってないですし、電話がかかってくることはないから心配しないで。普段通りお仕事してくださいね。でも、ミスには気をつけてくださいね!」と伝え、大事件もようやく一件落着しました。
今回のお客様への直接訪問で得たものがあります。まず、お客様からの信頼の回復です。それ以外にも副産物がたくさんありました。
・よく小さなミスを犯していたTさんがより注意深くなり、ミスを犯さなくなった
・Tさん以外のオペレータから大きな信頼を寄せられるようになった
・SV間の結束力が強くなった
これも、問題から逃げずに正面から向き合って、真摯にお客様に対応したからです。
クレーム対応は、私も得意ではありません。怖いか怖くないかと聞かれれば、やはり怖いです。しかし、苦手でも、SVやマネージャーは対応しなければならない時があります。それが求められる役割だからです。その際、いかに落ち着いて対応できるか、また、お客様と正面から向き合っているかを、オペレータも周りのSVもじっと見ているのです。お客様の立場で考え、誠実に対応すれば、解決の糸口も見つかりますし、オペレータとの絆も深まることになります。
2025年11月20日 00時00分 公開
2025年11月20日 00時00分 更新