実践編
第2回
コンタクトセンターには、たくさんの人が快適に働くためのルールが存在します。しかし、そのルールは、センター管理者の意識や行動次第で、いとも簡単に破られることになります。SVがルール違反をしたオペレータに注意しても、なかなか守られなかったり、オペレータを注意しなかったことで、センター内で不協和音が発生することもあります。ルール遵守のポイントを考えてみましょう。
コンタクトセンターには、さまざまなルールがあります。缶ジュースを持ち込んではいけないとか、携帯電話を持ち込んではいけないとか、所持品は透明バッグに入れるなど、たくさんの人が働くセンターでは、事故やトラブルが起きないよう、また多くの人が気持ちよく働けるようルールを設定し、オペレータに入社時や入社後に説明をして、注意喚起をしています。

以前、こんなことがありました。私がいた24時間365日稼働しているセンターで、ある夜勤シフトの時のことでした。オペレータのYさんの仮眠時間が終わり、交代して、オペレータのHさんが仮眠室に行きました。数分後、仮眠室に行ったはずのHさんがセンターにすごい剣幕で戻ってきました。
Hさん:「寺下さん、お仕事中、すみません。……あんなんじゃ寝れないんですけど……」
私が「どういうこと?」と聞いても、すぐ見てきてほしいと言われ、言われるがまま仮眠室に行きました。仮眠室のドアを開けて、びっくり。餃子の匂いが部屋中に充満していたのです。冬だったこともあり、暖房の熱気と相まって、すごい匂いになっているのです。
仮眠室では、夜勤のオペレータが交代してベッドで仮眠を取るため、飲食をしてはいけないルールになっていました。食べ物の匂いで寝られなくなってしまうオペレータもいるからです。Yさんは、そのルールを破ったのです。
リフレッシュルーム(休憩室)で食べればよかったのですが、仮眠室で晩ご飯を食べてしまったのです。センターに戻り、Yさんを個別に呼び出し、注意しました。すると、Yさんは「だって、深夜に一人で休憩室でご飯食べるの怖いんだもん」と言い訳をしました。
そして、数日後、こんなことがありました。
センターが入居するビルの1階に数台の車が停められる駐車場がありました。オペレータ全員分の駐車スペースはないし、元々はお客様用の駐車場のため、SVやオペレータは、その駐車場は使ってはいけないルールになっていました。しかし、Yさんは遅刻ギリギリになると、センター前にある駐車場にこっそり車を停めるのです。
寺下:「窓から見てたけど、下の駐車場に車停めたでしょ!?」
Yさん:「ばれました!? だってー、間に合わないかと思ったんですよー。危なかった、セーフ!」
寺下:「ここに停めたらいけないルールじゃなかったっけ?」
Yさん:「もともと今日は休みの日だったし、SVから頼まれて急遽シフトに入ったんで、それくらいいいじゃないですか」
寺下:「シフトに入ってくれたのはありがたいけど……、でもなぁ……、違反は違反だから」
また、こんなこともありました。Yさんは夜勤シフトが多いのですが、たまに日勤も入っています。日勤で朝の繁忙時間帯でのこと。電話がひっきりなしに鳴っており、オペレータもSVも総力戦で電話対応をしています。SVは、通話時間や後処理時間などオペレータの動向をPC画面上でリアルタイムに監視しており、ステータスが後処理になっているオペレータに対して、「後処理急いでねー」と声をかけていきます。
Yさんは、後処理を一生懸命やっているようでした。周りのオペレータは次から次へとかかってくる電話に対応しているにもかかわらず、Yさんは電話を受けている素振りがありません。私は、Yさんの席に行って、PCフォン(PC上で電話のステータスがわかるもの)を見てみました。するとYさんは、他の画面でわざとステータスボタンを隠していたのです。
Yさんに「隠したらダメだよ」と言ってその時も注意しましたが、Yさんは「だって、夜勤と違って、大変なんだもん」と拗ねた様子を見せました。

それから数日後、Yさんの契約の更新時期が迫ってきました。私は、いろいろ考えた末、Yさんの契約を期間満了で終了することに決めました。予想していましたが、SVからは猛反対されました。SVから「Yさんみたいなありがたいオペレータはなかなかいないですよ。新しい業務もすぐ覚えてもらえるし、新人さんの面倒見もいいじゃないですか。電話の件数も他のオペレータより倍近くさばけるんだから」とか、またあるSVは「夜勤とか、どうするんですか!? シフトが埋まらなかったら寺下さんに夜勤入ってもらえます?」とか言ってくる始末です。
いろいろな反対意見がありましたが、自分の決断は揺るがず、Yさんとの契約は更新せず、期間満了で終了しました。
どんなに優秀なオペレータでも、どんなに貢献度の高いオペレータでも、ルール違反に対しては厳しく対応すべきです。もし、ここで特別扱いすれば、センター全体の士気に影響してしまうからです。
まず、SVはオペレータより高いモラルを持つことが必要です。SV自身がルール違反をしていれば、オペレータを注意できないからです。万一、SVがルール違反をしてしまうと、リカバリーに時間も労力もかかってしまいます。ルール順守の基本は、まずはSVが徹底してルールを守ることなのです。
2025年10月20日 00時00分 公開
2025年10月20日 00時00分 更新