業界別 電話業務におけるカスハラ対策に関する調査

2025年9月号 <DATA FILE>

業界別 電話業務におけるカスハラ対策に関する調査
──リンク

7割以上がカスハラを経験
対策実施率は5割未満

カスタマーハラスメントはコールセンター従事者にとって脅威だ。クラウド型CTIシステム「BIZTEL」を提供するリンクは『業界別 電話業務におけるカスタマー・ハラスメント対策に関する調査』を実施。結果、カスハラ経験者は全体の75.3%に達することが判明。一方で対策実施率は47.0%にとどまり、十分な対策が講じられていないことが浮き彫りとなった。

 クラウド型CTI/コールセンターシステム「BIZTEL」を提供するリンク(東京都港区、岡田元治代表取締役社長)は、全国の20〜99歳の男女を対象とした『業界別 電話業務におけるカスタマー・ハラスメント(カスハラ)対策に関する調査』を実施した。同調査におけるカスハラとは、顧客や取引先などからの不当または過度な要求・暴言・脅迫といった行為で従業員の業務遂行を妨げ、精神的な負担を与えることを指す。

 2025年4月に「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」が施行開始されるなど、昨今、社会的に注目されている「カスハラ」は、電話で顧客と接するコールセンターや問い合わせ窓口でも発生している。そこでリンクは、勤務先で顧客と電話によるやり取りをする人を対象にアンケート調査を実施。電話業務におけるカスハラの発生状況や、現場での対応・対策に加え、業界別の特徴や違いがあるのかを調査。電話対応窓口でカスハラ対策を進める際に重要視すべきポイントをまとめている。

 調査方法はインターネット調査、期間は2025年4月30日〜5月7日。調査対象は全国に住む20〜99歳の男女(性別均等割付にて回収)。有効回答数は400件を得た。

福祉関連業は経験率100%
法人対応が多い建設業も9割に

 カスハラの発生状況を見ると、全体の7割以上(75.3%)が、電話応対時にカスハラを受けたことがあると回答(図1)。また、業界別では「福祉関連業」(100%)、「建設業」(88.9%)、「官公庁・公共・団体」(83.9%)の順でカスハラを受けた経験がある割合が多い結果となった(図2)。このことから、一般消費者や市民と接する機会の多い業種だけでなく、建設業といった法人との応対が多い業種でも、カスハラが発生していることが明らかとなった。

図1 電話応対時にカスハラを受けた経験はあるか?
図1 電話応対時にカスハラを受けた経験はあるか?
図2 業界別「カスハラを受けたことがある」と回答した割合
図2 業界別「カスハラを受けたことがある」と回答した割合

 経験したことのあるカスハラの内容は、「暴言・罵声を浴びせられた」(88.4%)、「延々と同じ内容のクレームを繰り返された」(75.4%)、「長時間拘束された」(68.1%)が多く挙げられた(図3)。このような一方的な暴言や執拗なクレーム、長時間の拘束は、現場で対応する従業員に大きな負担を与えかねない問題であるため、発生している場合には迅速かつ効果的なカスハラ対策が必要となる。

図3 具体的にどのようなカスハラを受けたか?
図3 具体的にどのようなカスハラを受けたか?

 しかし、カスハラが発生した際の対応については、「話を聴きつづけた、または謝りつづけた」(62.5%)が最も多く、次いで「上司に助けを求めた」(48.5%)という結果だった(図4)。現場では根本的な解決策がないことによる受け身の対応が中心となっており、従業員が精神的な消耗を強いられているという実態がうかがえる。

図4 電話応対時にカスハラを受けた際、どのような対応を取ったか?
図4 電話応対時にカスハラを受けた際、どのような対応を取ったか?

建設業、金融、IT・通信で5割超
まだまだ不十分な対策実施率

 カスハラの対策状況について聞いた結果、対策実施率は5割未満(47.0%)という結果となったが、業界別で見ると「建設業」(55.6%)や「金融」(53.8%)、「IT・通信」(50.9%)で対策実施率が高い傾向にあることがわかった(図5、6)。しかし、半数以上の現場では依然としてカスハラに対して十分な対策が講じられていないことも明らかになった。

図5 電話応対時のカスハラについて、社内で対策を実施しているか?
図5 電話応対時のカスハラについて、社内で対策を実施しているか?
図6 業界別 電話応対時のカスハラについて、社内で対策を実施していると回答した割合
図6 業界別 電話応対時のカスハラについて、社内で対策を実施していると回答した割合

 「対策を実施している」と回答した人に、具体的な対策内容を聞いたところ、「カスハラの発生状況と内容の把握、社内への共有」(76.6%)、「対応マニュアルの作成・配布」(47.9%)が多く挙げられた(図7)。これらの対策を第一段階として取り組む企業が増えているが、今後はマニュアルの周知や改善、実運用に向けた対応研修の実施など、効果を発揮するための取り組みや、対応後のメンタルケアなどフォロー体制の構築が必要になると考えられる。

図7 具体的に社内でどのような対策を実施しているか?
図7 具体的に社内でどのような対策を実施しているか?

 対策を進めるうえで課題と感じていることについては、「お客さま第一という考えが強く、カスハラを問題にしにくい」(26.3%)が最も多い結果となった。また、「カスハラの基準づくりに苦慮している」(17.3%)、「他の業務が優先で後回しになっている」(16.3%)という回答も一定数見受けられた(図8)。

図8 カスハラ対策を進めるうえで、課題と感じていることは?
図8 カスハラ対策を進めるうえで、課題と感じていることは?

 この結果から、現場と企業の間でカスハラに対する考え方や問題意識に乖離があることがうかがえる。カスハラによって従業員に負担がかかっている場合、従業員を守るためにも組織全体で問題を認識し、方針を検討することが重要といえそうだ。

東京都の防止条例認知は5割未満
求められる制度の理解拡大と浸透

 今年4月から、東京都でカスハラ防止条例が施行開始されたことを知っているかを聞いたところ、「はい」と答えた人は48.0%と、5割を切る結果となった(図9)。施行から間もないことや、対象地域が限定されていることも要因といえそうだ。条例の認知は、組織的なカスハラ対策を推し進める際の後押しにもなるため、企業として従業員への周知や、理解の浸透を深める動きが求められる。

図9 東京都カスタマー・ハラスメント防止条例の施行開始を知っているか?
図9 東京都カスタマー・ハラスメント防止条例の施行開始を知っているか?

 また、カスハラ防止条例が施行開始されたことを知っていると答えた人に対して、カスハラ条例に期待する効果を聞いたところ「カスハラという問題の認知拡大」(61.5%)、「カスハラ加害者への抑止力」(49.5%)などの回答が多く挙げられたことから、カスハラに対する問題意識の変化や、発生の防止に期待感を持っていることがわかった(図10)。しかし、東京都以外に実施している地域は北海道・群馬県など限定的であることから、全国への拡大が今後の課題と考えられる。

図10 カスハラ防止条例が施行開始されたことを受け、どのような効果を期待しているか?
図10 カスハラ防止条例が施行開始されたことを受け、どのような効果を期待しているか?
調査結果から見えた
電話業務におけるカスハラ対策

リンク 取締役 BIZTEL事業部長 坂元 剛氏

 最近、メディアで取り上げられることが増えている「カスハラ」ですが、今回の調査では電話による顧客接点にフォーカスして調査したところ、7割以上(75.3%)の人が、カスハラを経験していることが明らかになりました。この結果から、主に電話による顧客コミュニケーションを行うコールセンターや問い合わせ窓口でも、カスハラに悩む現場が多いことが予想されます。しかし、カスハラ対策の実施率は47.0%と、半数以上が未実施という状況です。

 カスハラ対策が進まない要因として、調査結果にもある通り「お客さま第一という考えが強く、カスハラを問題にしにくい」(26.3%)や「カスハラの基準づくりに苦慮している」(17.3%)といった課題が考えられます。企業や団体が、お客さま第一、つまり顧客満足度の向上を目指すことは重要ですが、顧客満足につながる質の高い対応をするためには、従業員が安心して働ける環境が必要不可欠だと考えています。

 また、顧客の不満や悩みの声とカスハラを区別することは、顧客を重視するほど難しくなります。しかし、自社におけるカスハラの定義を明確にしないと、対応する従業員に負担や不満を与え、最終的には離職につながる可能性があります。企業が目指す顧客満足度の向上を実現するためには、従業員を守る「カスハラ対策」がとても重要です。

生成AIをカスハラ対策に生かす

 カスハラ対策の方法は多岐にわたります。対応マニュアルを作成・周知したり、カスハラの原因が企業側に起因していないか応対品質を管理したり、カスハラ対応や応対品質向上を目的とした研修の実施など、さまざまです。しかし、「他の業務が優先で後回しになっている」(16.3%)や「費用や人手など対策を進めるためのリソースが不足している」(15.0%)という意見があるように、対策を進めたくても、リソース不足で進まない状況は非常にもったいないことです。そこで活用していただきたいのが「生成AI」です。

 例えば、生成AIを活用して対応マニュアルの雛形を作成すれば工数の削減が実現します。他にも、応対品質を生成AIで自動チェックすることも可能です。使い方次第で、カスハラ対策に向けた準備を効率的に進めることができると考えています。

 カスハラ対策の強化は、企業の持続的な成長に不可欠です。従業員が安心して働ける環境を整えることが、顧客満足度の向上にもつながります。今後、企業はカスハラ問題に真摯に向き合い、効果的な対策を講じることが求められるのではないかと思います。

2025年08月20日 00時00分 公開

2025年08月20日 00時00分 更新

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