カオスな組織の率い方「心地よい職場のレシピ」 第3回

2025年5月号 <カオスな組織の率い方「心地よい職場のレシピ」>

池田浩一

実践編

第3回

「改善が必要なSV」はどんなタイプ?
センター長・マネージャーがすべきこと

オペレータへの指導やクレームなどの二次対応、業務フローの構築・改善といった重要な役割を担い、コールセンターのカナメといえるスーパーバイザー(SV)。しかし、中にはマネジメントに関する理解やコミュニケーションの取り方が不十分で、管理者として正しく機能できていないケースもあります。今回は、SVを改善に導くために何をすればいいのかを見ていきましょう。

PROFILE
ブランニューデイ 代表取締役
池田浩一
コールセンター専門のコンサルタントとして、300社以上のセンターの立ち上げや業務改善を支援。コールセンター従事者のためのeラーニングサービス「BIZTEL shouin」、無料ビジネススクール「BIZTEL大学」の講師としても活躍する。

 当然ながら、コールセンターにおけるSVの役割は非常に重要です。「苦情や事務ミスが減らない」「離職率が高い」「オペレータ同士が揉めて雰囲気が悪い」など、センターの課題はさまざまですが、顧客対応・オペレーション・人員管理を現場で回しているSVの動き方を改善することで、ほとんどの問題が解決できます。そして、そのためにはSVを管理する立場であるセンター長・マネージャーが彼らを正しく導くことが不可欠です。

 では、改善に導く必要のあるSVとは、どのような状態にあるのでしょうか? 代表的なケースを見ていきましょう。

 まず挙げられるのが、“誠実さ”が欠如したSVです。Aさんには注意するけど、Bさんにはしないといった不公平な対応。オペレータとの約束を守らない。お気に入りの人をえこひいきする。エスカレーションから逃げる、など。こうした不誠実な振る舞いをすると、SVは信頼を失います。その結果、オペレータに不満がたまり、離職者の増加へとつながります。現場の士気にも影響するため、パフォーマンス低下が数値にも出てきます。

 また、常に不機嫌でイライラしているSVも要注意です。オペレータからすると気軽に相談できませんし、ミスや苦情を起こしてしまった際も怒られるのが怖くて報告しづらくなります。トラブル発生に気づきにくくなるため、リスクが高い状態といえるでしょう。

 それから、優秀だけど、いつも一人で仕事を片付けてしまうタイプのSV。「効率を追求するなら、自分がやったほうが早い」「他の人に任せたら品質が下がる」という考えがあってのことと思いますが、これでは下の人が育ちませんし、権限の移譲ができないままでは組織力が高まりません。こうした方には、ぜひSL理論(細かく指示したり、任せてみたりと、状況に合わせて適切なリーダーシップを発揮するマネジメント手法)を参考にしてほしいです。

 ほかにも、問題が起きた際に「オペレータが悪い」と言って責任を取らないタイプや、自分から挨拶せず、無意識に同僚との間に壁を作ってしまうタイプなど、さまざまあります。

図 改善が必要なSVのタイプ
図 改善が必要なSVのタイプ

SVが抱える問題の根幹は
管理者になるための教育不足

 こうした態度・振る舞いになってしまう原因は、SVになるための教育が不足している点にあります。

 SVにはオペレータを指導する人材育成力と、組織として目標を達成するマネジメント力が求められます。しかしながら、SVの人事では業務知識が優先されるため、管理職になったことのない人が就くケースがほとんどです。そして、人材育成やマネジメントについて教わることなく、現場に配置されます。経験も、教育を受けたこともない人が突然チームを束ねるわけですから、問題が起きても仕方のないことかもしれません。オペレータに新人研修があるように、新人SVにも学習の機会は絶対に必要です。

 SVが学ぶべき内容は、クレーム対応、KPI管理、シフト管理などのセンター運営に関するものから、指導やコミュニケーションの方法、マネジメントの基本、SWOT分析といった業務改善のための分析手法など多岐にわたります。

 SVは、広く知識をもったジェネラリストでなくてはなりません。すべてを学ぶことはたいへんに感じますが、それぞれ基本を知っておくだけでも物事の捉え方が変わります。センター内で研修を準備するのが難しい場合は、外部の研修や「BIZTEL shouin」などのコールセンター向けeラーニングを活用するとスムーズです。

 実際に、以前はミスをしたオペレータに「なんでこうなるの?」と感情をぶつけるだけだったSVが、マネジメントを勉強したことで、トラブルの原因となった背景を冷静に分析し、問題解決に取り組むようになったケースを多く見てきました。まずは知ること、学ぶことから始まり、それが実践につながり、その人の変化となります。

 ただし、SVの能力は一朝一夕で身につきません。学んだことを実践し、できなかったところをPDCAで改善して、初めて本当の力となります。参加した研修のテキストを読み返したり、eラーニングを再度視聴するなど、定期的に知識を点検することも大切です。

SVを成長へと導くことが
センター長・マネージャーの役目

 SVを指導し、育てるのはセンター長やマネージャーの役割です。SVの強み・弱み、どのような課題に取り組んでいるかを把握したうえで、コミュニケーションを取りながら、自社やセンター独自のMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)に沿う方向へ成長を促します。このとき、上司が自身のやり方や考え方を押しつけるのはNGです。SVが自発的に考えたことに取り組んでもらいます。上手くいかないこともありますが、人は失敗から学ぶこともたくさんあります。これも教育と割り切り、長い目で見守ってください。

 SVが変わればセンターは確実に良くなります。つまり、センターの良し悪しは、センター長がどれだけSVを育成できるかにかかっているということ。SVとともに成長を楽しみながら、理想のセンターを実現していきましょう。

2025年04月20日 00時00分 公開

2025年04月20日 00時00分 更新

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