カオスな組織の率い方「心地よい職場のレシピ」 第2回

2025年4月号 <カオスな組織の率い方「心地よい職場のレシピ」>

池田浩一

実践編

第2回

仲間割れ、離職、採用活動への悪影響──
コールセンターの「派閥」問題を解決する

20人以上が所属するコールセンターで発生しやすいとされる「派閥」。チーム間の分断を招き、人間関係や業務にさまざまな不協和を起こしてしまいます。中には、管理者の目には映らないようにする派閥の当事者たちの思惑が働き、問題が表面化していないケースも。今回は、派閥の発生要因や発見する方法、管理者がとるべき対策について紹介します。

PROFILE
ブランニューデイ 代表取締役
池田浩一
コールセンター専門のコンサルタントとして、300社以上のセンターの立ち上げや業務改善を支援。コールセンター従事者のためのeラーニングサービス「BIZTEL shouin」、無料ビジネススクール「BIZTEL大学」の講師としても活躍する。

 派閥化は、多くのコールセンターで発生している問題です。もともと人には集団本能が備わっており、グループになろうとするのは自然なことです。この集団が目標達成のために力を合わせる方向へ行けば「チーム」と呼ぶことができ、センター運営に貢献する存在となります。しかし、自分たちの仕事のしやすさや優位性を保つためだけに排他的になる道へ進むと、管理者にとってもやっかいな「派閥」となってしまいます。

 派閥ができるとどういう問題が起きるのか。私が見てきた事例でいうと、まず人事への介入といじめです。気に入った人を自分たちのチームに入れ、逆に気に入らない人は追い出そうとします。

 さらに進むと、他の派閥との対立が生じます。陰口を言ったり、苦情・トラブルといった面倒な応対を別のグループに押し付けたり。連絡を取り合わず、センター内の情報共有の妨げになることもあります。システムを操作し、自分たちだけ入電数を減らして楽していた、なんてことも過去に起きていましたね。

 最悪のケースでは、同じ派閥の人が他社に一斉移籍することがありました。立て直しで伺った際、マネジメント不足による不公平・モラル低下が多く発見されました。また、派閥のあるセンターは「働きにくい職場」という風評が立ち、採用活動にも悪影響が出ます。

 このように、派閥はセンター内の雰囲気や運営効率を悪くするさまざまな事象を引き起こすのです。

派閥の7つの発生原因と発見方法
休憩室で“気づき”を得よう

 コールセンターで派閥化する原因として、次の7つが挙げられます。

図 派閥化する7つの原因
図 派閥化する7つの原因

1.固定化/硬直化:異動や担当業務の変更、席替えが少ないと、派閥化しやすい傾向にあります。

2.チーム運営/シフト構造:コールセンターはチームやシフトで人を分けることが多いですが、各チームが独自の文化を持った働き方をすることで派閥化を助長する場合があります。

3.組織間の競争:高い成果が求められる環境では、自然と競争が激化しやすくなります。これが同僚間の結束を強める一方、他チームと対立を生むことがあります。

4.マネジメント/リーダーシップ:特定のリーダーにつく従業員が増えると、その人の影響力が強まり、派閥が形成されやすくなります。

5.コミュニケーション不足:チームやシフト間でのやり取りが不足すると、情報共有がうまくいかず、誤解や摩擦が生じやすくなります。

6.長時間労働とストレス:ストレスが高まると同僚間の結束が強まり、派閥化が進むことがあります。

7.不公平や曖昧な評価制度:不公平な扱いがあったり、時給・昇給に関する制度に不明確な点があると、不満を持つ人同士が結びつき、派閥が生まれやすくなります。

 問題となる派閥の存在に気づいたら、上記のような原因や事情を1つずつ特定し改善していきます。

 私がコールセンターのコンサルティングに入る際、業務データや休憩時間の記録を見せてもらうことがあるのですが、派閥による問題が生じているとチーム間の偏りが数値にも出るので、そこで気づくことがあります。また、面談や仕事ぶりの点検をする中で見えることも多々ありますね。

 より簡単に、派閥がないかチェックできる方法があります。それは休憩室の観察です。誰と誰が仲が良くて、どんなグループができているのか、すぐに把握できます。私くらい場数を踏むとその人の“オーラ”を感じとれるので、誰が派閥の中心人物かまで見極められます。管理者の皆さんはぜひ定期的に休憩室に足を運んでみましょう。

管理者の行動で職場が変わる
派閥解消に有効な手段とは?

 派閥解消にはどんな手段があるでしょうか。実は大型のコールセンターは比較的簡単で、別の部署やチームに異動させることで物理的に派閥を解体できます。難しいのは、こうした打ち手が取りづらい中小規模のセンターです。そこで、どの人数規模でも有効な手段を2つ紹介します。ずばり「管理者のマネジメント学習」と「コミュニケーションの活性化」です。

 先述のとおり、派閥による影響はセンター内のさまざまな事象から察することができます。しかし、マネジメントに対する感覚や理解力が十分に備わっていないSV・マネージャーは、こうしたセンサーが働かないことがあります。マネジメントについて継続的に学ぶことで、センター内の現状や変化に自然と関心が向き、何が効率を妨げているか考えるようになります。

 マネジメント力がついてくると、コミュニケーションの重要性にも気づくはずです。オペレータが普段から管理職と気軽に対話できる環境でないと、どうしても仲間内で固まり、派閥化しやすくなります。逆に挨拶や定期面談、電話応対のフィードバックなどが日頃からできているセンターでは、派閥化はほとんど見られませんでした。

 マネジメントの学習やコミュニケーション活性化に便利なツールも増えています。例えば、コールセンターに特化したeラーニング「BIZTEL shouin」では、管理者向けの教育プログラムに加え、オペレータが日々の業務について報告・相談できる「日報」機能も搭載されています。面談や会話の機会が少ないセンターではこうしたツールの活用もお勧めです。

 ぜひ、マネジメントとコミュニケーションを強化して、派閥の発生を防止していきましょう。

2025年03月20日 00時00分 公開

2025年03月20日 00時00分 更新

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