AfterCall~電話の後で 第154回

2025年2月号 <AfterCall〜電話の後で>

山田祐嗣

コラム

第154回

フィリピンではサポートセンターが花形職種
日本でも人気になる可能性は?

 私が利用するフィリピンの英会話学校は自分で学びたいテーマをマンツーマンの講師に伝えると、講師がネットで教材となるコンテンツを探し、それで学習する仕組みになっています。今年、私が伝えたテーマは、「フィリピンのBPOとカスタマーサポートについて」です。担当講師6名のうち3名が大学卒業後に複数のコールセンターで働いた経験があることが分かり、センター未経験の講師も大学の友人の多くがセンターで働いているとのことで、現場の状況についてよく知っていました。私は仕事柄、フィリピンのサポートセンターを見学したり、責任者や管理者の方々と話したりする機会があるのですが、実際にカスタマーサポートを行っている担当者と話す機会がなかったので、講師や友人の体験談には大変興味を持ち、引き込まれました。

 実際にフィリピンのサポートセンターが集まるオフィス街に行くと、多くの運営企業が一等地の外から最も目立つ場所に人材採用のスペースを設けています。また、採用希望者の列はビルの外に設置された椅子にまで延び、スマホを片手に数多くの若者が面接の順番待ちをしています。オフィス街のホテルから、毎日のように就職希望者の長蛇の列を見ていると、この国のサポート業界の就職人気が分かります。就職希望者は多いですが採用する企業も多いことから、みんな自分に合った少しでも条件の良い会社に行くそうです。

 採用時に提示される給与は通常の時給に加えて継続勤務ボーナスの金額も提示されます。ボーナスは分割で毎月支給されるので、約束の金額欲しさで継続して働きます。毎年の契約更新時には前年の働きに応じて次のボーナス金額が決まり、提示金額に納得すれば継続して働き、納得できなければより良い条件の会社に転職します。ボーナス以外にも毎日の成績優秀者に主食のコメを渡すことは多くのセンターでやっています。

 フィリピン国内に向けたサポートサービスは、日中の勤務で顧客の主張もあまり強くないので、肉体的にも精神的にも楽ですが、収入は少ないです。そのため、国内向けのサポートから始めた人も電話対応に慣れてくると、より高い収入が得られる北米向けのサポートに移ります。ただし、北米向けの仕事は勤務時間が夜間になること、顧客のクレームが非常に厳しいことから、ストレスが大きい仕事とのことです。

 サポートセンターを運営する企業は優秀な人材を継続雇用するためにストレスに見合った給与を支払うだけではなく、サポート担当者のストレスを解消することに余念がありません。教育体制や支援体制を整えたり、きれいなカフェテリアやフィットネスジムなどの職場環境を整えたりしています。他社と競って行われるそれらの取り組みが、業界全体を魅力的なものにし、大卒者に人気がある職種にしているのでしょう。

 日本では最近、サポートセンターでの人材採用に苦労している話をよく聞きます。フィリピンのサポートセンターには人気職種にするためのヒントが数多く含まれているので、一度訪問する価値があると思います。

PROFILE
山田祐嗣
HDI国際認定資格取得者:HDIイベント、認定トレーニング、格付けベンチマーク、メンバーネットワーキング、実態調査などを通じてサポート業界に価値を提供し、サポートセンターのサービス品質向上および地位向上を目指し活動をしています。

2025年01月20日 00時00分 公開

2025年01月20日 00時00分 更新

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