実践編
第5回
SVが習得すべきスキルは幅広く、どれも手を抜くことができません。SVは、オペレータからの質問対応業務だけでなく、シフト作成やシフト調整、1on1やコーチングなど、オペレータに関わる仕事が実は非常に多いです。これを怠っては、センターがうまく回らなくなる可能性があります。今回は、オペレータ管理スキルにスポットを当てて解説します。
シフト作成は、固定シフトの場合は特段の問題は発生しませんが、複数シフトで運用している現場では、作成や調整に時間も労力もかかるため、SVの頭を悩ませる業務の一つです。本当は、WFM(ワークフォース・マネジメント)というボタン1つでシフト作成をやってのけるシステムが導入できればよいのですが、欧米で作られたシステムでは日本の労働条件に合わなかったり、また、システムも高額なため、大型センターでないと費用対効果の点で導入が難しかったりします。
最近は、夜勤のある看護師や鉄道会社の駅員向けの比較的安価で利用できるシフト作成システムを、センターで活用する現場も見られるようになりましたが、まだ多くの現場では、エクセルベースでシフトを作成しています。
シフト作成は、オペレータの希望を取り入れる希望シフト制と、あらかじめ「毎週〇曜日の〇時〜〇時」のように、働く曜日や時間を相談し、固定して勤務する固定シフト制で運用されている現場がほとんどです。どちらも一長一短があり、SVはシフトの作成と調整に苦慮しますが、希望シフト制で運用したほうがシフトは埋まりやすいのは事実です。ただし、夜間や土日祝日など、人気のないシフトもセンターによっては存在し、なかなか人員が埋まらず、SVがオペレータに手当たり次第、あたってみる姿もよく見かけます。
入社面接の時点や導入研修の際などに、「必ず週1回は夜勤に入る」などのルールを事前に決めて伝えておき、オペレータ全員にとって公平な仕組みを作っておくことです。特定のオペレータばかりに負担がかからないように、配慮する必要があります。
シフトをオペレータに発表した後は、オペレータ自身の体調不良や子どもの学校行事で急遽シフトを休まなければならなくなった際などに、他の交代要員を見つけるなどの調整が必要となります。これからインフルエンザが流行り出す時期に入るので、注意が必要です。200名を超えるセンターで、座席も固定制でない場合は、シフトと連動して座席移動も発生するため、困難を極めます。
私は、繁忙期の時は、シフト担当の専門スタッフを2名配置して、シフトの作成、調整、座席の配置などもお願いしていました。
シフトの調整は、シフト担当のSVがやってもよいのですが、大型のセンターですと、調整だけでも一苦労のため、オペレータ同士のシフト交換も認めたほうがオペレータの満足度も高く、シフトの充足率も良くなります。実際、私がマネージャーをやっていた大型のセンターでは、シフトの掲示板を作って、オペレータ同士で情報交換できるようにしていました。
掲示板を導入してからは、オペレータからも「これまでは個別で声掛けしなくてはならなかったし、お願いできる人も限られていたけど、これがあると知り合いのオペレータ以外にもお願いできるからいい」と好評でした。
ただし、オペレータ同士によるシフト交換は、こんな問題も発生してしまいます。シフト調整をオペレータ同士に任せたのですが、代わってあげたオペレータが欠勤してしまったことがあります。SVが交代を把握していなかったため、2人とも休んでしまう結果となり、その原因が判明するまでに相当の時間がかかりました。そのため、シフト交代が発生した場合は、必ずSVに報告させるなどのルールを徹底させることです。
次に1on1です。ヤフーでは、1on1は経営者が変わった2012年からずっと実施しています。
週1回、毎回30分、場所はどこでもいいというルールで実施していました。ヤフーの1on1は、書籍になるくらい有名な制度なので、簡単に紹介したいと思います。
人事にいた頃は、よくいろいろな企業の方が毎日のように訪問され、同じ質問をしてきます。「どうすれば1on1をうまく導入できますか?」「1on1はコーチングですか?」──こうした質問です。
SVは、1on1の基本とその型を知っておくべきです。まず、1on1はコーチングかという疑問ですが、コーチングも入りますが、ティーチング(教えること)もフィードバックも行います。面談でもなく、対話です。そして、基本の流れは図に示した通りです。
気をつけてほしい点は2点です。1点目は、本論からすぐに入らないことです。天気の話でもいいので、まずは緊張をほぐすためのアイスブレイクをするようにしてみてください。2点目は、最後に激励をして1on1を終えることです。時に厳しいフィードバックをすることもあるかもしれません。しかし、最後は「期待してるよ」「一緒に頑張っていこうね」という激励の言葉が大切です。ちょっとした一言が、オペレータの心を奮い立たせるのです。
私は、1on1をやっていて驚いたことがあります。それは、多くのオペレータは自分の話をSVに聞いてもらいたいと思っていることです。そのため、SV業務で多忙かもしれませんが、1on1の時間を定期的に取り、オペレータの話を聞いてみてください。そうすると、意外なセンターの問題点の発見や、日頃見えない人間関係が垣間見えたりしますよ。
2024年11月20日 00時00分 公開
2024年11月20日 00時00分 更新