コラム
第14回
新社会人となって、これから多くの人と接することになる新入社員に「正しい言葉づかい」を教育することは企業にとって、とても重要です。前回は「二重敬語」や「尊敬語と謙譲語の混同」など、その基本となる「敬語」についてお伝えしました。
しかし、企業で働く人にとっては、敬語さえ使えればいいというわけではなく、お客様や上司に使ってはいけない言葉やルールというものがあります。
とくに上司や先輩から受けたアドバイスに対して、「参考になりました」という言葉を返すのは失礼です。「参考にする」という言葉は、意図しているかどうかにかかわらず、「自分のやり方で十分だと思うが、あなたの意見も『参考程度に』足しにします」という意味になってしまいます。返す言葉としては「勉強になりました」という表現の方が感謝の意図が伝わります。
また、「なるほど」も相手の話の内容を評価したうえで同意するというニュアンスが含まれるため、上司や目上の人に使うべきではありません。その「なるほど」に「です」をつけて、「なるほどですね」という方がいらっしゃいますが、いくら丁寧語をつけても、失礼な使い方が帳消しになるわけではありません。上司やお客様の話に相づちを打つときは、「おっしゃるとおりですね」「たしかにそうですね」といった言葉を選んで同意や同調を表すようにしましょう。
先輩のプレゼンテーションを聞いて、「先輩、素晴らしかったです。感心しました!」という言葉がけもよく見かける誤りです。「感心しました」という言葉は、例えば「君の字は綺麗だね。報告書がとても見やすくて感心したよ」というように、上司が部下を評価するときに使う言葉です。先輩を評価するような言葉をかけるべきではありませんから、「勉強になりました」「感銘を受けました」といった言葉でその感動を伝えるべきでしょう。
部長に呼ばれて、「このプロジェクトを君に任せようと思うんだが……」と嬉しい言葉をかけられました。光栄だけど、自分の力量では少し不安。期待してくれた部長への謙遜のつもりで、「私には役不足ですが、精一杯努力します」という返答。これはいけません。「役不足」の正しい意味は、本来のその人の力量よりも低い仕事を与えられること。つまり、「そんな簡単な仕事、私には物足りない」と逆の意味になってしまいます。また、「そんな簡単な仕事を私に課すなんて」という不満を表す言葉にもなります。「私では力不足かと思いますが、精一杯努力してまいります」と、「力不足」という言葉での対応が正しい使い方になります。
「言葉づかい」は、「第一印象を高める5原則」のうちのひとつです。心を配り、美しい言葉を話すことで、その人の印象がとても良くなります。
こうした「言葉づかいのルール」を理解して、皆さんの職場における良好な人間関係の構築に役立てていただきたいと思います。
会員限定2024年06月20日 00時00分 公開
2024年06月20日 00時00分 更新