Part.1 <現状と課題>
今春、パワハラを理由とした保育士の大量離職が大きく報道された。コールセンターでも、類似のトラブルを耳にする機会はある。法改正を受けハラスメントへの意識は高まっているが、若い世代と管理職層の認識のギャップはまだ大きく、対策が後手に回ると、大量離職や企業のイメージダウンにつながりかねない。コールセンターに必要なハラスメント防止施策を検証する。
昭和の体育教師が令和にタイムスリップするテレビドラマ「不適切にもほどがある!」(TBS)が、大きな反響を呼んだ。「運動中は水を飲まない」「連帯責任」など、現代では考えられない、昭和の“常識”が描かれ話題となった。
教育現場や企業の人材マネジメントの常識は、大きく変わった。コンプライアンス意識が高まり、叱責や精神論はパワハラ(パワーハラスメント)と捉えられるようになった。採用難と若い世代に合わせた意識のアップデートが重なり、人材育成やマネジメントは高度化している。コールセンターも、例外ではない。
コールセンターの場合、同一階層のなかに多様な雇用形態が混在する「多重ヒエラルキー」のケースも多い(図1)。職位としての上下関係に加え、雇用形態や在籍年数もパワーバランスに影響する。
労働集約型のコールセンターでは、人材マネジメントの問題は運営課題の大半を占める。オペレータの不満が募ればモチベーションが下がり、応対品質が下がる。大阪府堺市の認定こども園で、パワハラを理由に保育士が大量離職したが、同様のことが起これば、顧客対応業務は成り立たない。管理者は、ハラスメントに対する深い理解と防止策の徹底が不可欠だ。
Part.2 <20のチェックリストと実態調査>
人手不足が深刻化する令和の人材マネジメントで求められるのは、「1人も脱落者を出さない」ことだ。距離感を近づければセクハラ、叱責すればパワハラ、距離をおいても指導放棄とされる、「不寛容な時代」。マネジメントやSVが円滑にセンター運営するには、何をすればいいのか。有識者や運営企業へのヒアリングから作成した「20のチェックリスト」を解説する。
人手不足が深刻化する令和の人材マネジメントで求められるのは、「1人も脱落者を出さない」こと。しかし、距離感を近づければセクハラ、叱責すればパワハラ、距離をおいても指導放棄とされる、「不寛容な時代」に、それが可能なのか。まずは、日常の業務における姿勢や行動をセルフチェックすべく、有識者や運営企業へのヒアリングから作成した「20のチェックリスト」を作成した。
同時に、編集部ではコールセンター従事者を対象としたアンケート調査も実施。ハラスメント行為の有無や内容を含め、多岐にわたる設問を用意した。
近年、大企業を中心に作成するケースが増えた「ハラスメントに関するガイドライン」は、約71%が「ある」と回答している。それを現場に落とし込む作業の1つである「研修」については、「定期的に実施している」が約半数。しかし、その多くは「正社員が対象」で、非正規社員や業務委託先までカバーしているケースは少ないようだ。
個々人の意識改革や定着はもちろんだが、まず防止すべきは「組織がハラスメント体質化」することだ。別記事でまとめた日本トータルテレマーケティングによる過大請求事案においても、外部の調査委員会は同社の「パワハラ体質」を指摘している。ハラスメントが横行する組織では、ミスや都合の悪い案件を隠蔽しようとする意識や行動が定着しやすい。結果、とりかえしのつかない事態にならないとも限らない。まずは「何がNGで、どこまでOKなのか」を基準化しつつ、それを現場に落とし込むプロセスの定着化が求められる。
2024年04月20日 00時00分 公開
2024年04月20日 00時00分 更新
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