AfterCall~電話の後で 第144回

2024年4月号 <AfterCall〜電話の後で>

山田祐嗣

コラム

第144回

テクニカルサポートの好事例に見た
「寄り添い」「共感」の重要性

 ブログ作成が流行った15年ほど前、私も独自のドメイン名を取得しサイトを立ち上げて他愛もない日常を発信していました。最適なレンタルサーバーを探していたところ、大手通信会社の企業向けのサービスが比較的安価で独自ドメインのメールも安定運用できたので、そのサービスを使うことにしました。何の問題もなく10年以上使っていましたが、数年前にサービスのセキュリティ強化のために基盤システムが変更された際、急にサイトを見ることができなくなりました。サポート窓口の電話は何度かけてもつながらないので、メールで問い合わせをしようとしましたが、膨大な数の「よくある質問」のサイトへのリンクが案内されるのみで、自分のケースがどれに該当するのかが分からず、疑問は解消できませんでした。当時ブログを主に利用していた家内からは、「早く動くようにしてほしい」と言われましたが、原因がわからず、多忙もありそのまま放置していました。

 最近、サービス提供会社から送られてきた郵送物にサポートセンターの電話番号が掲載されていたので、あまり期待せず電話をかけたところ、すぐに電話がつながり驚きました。「数年前からサイトが使えなくなっており困っている」旨を伝えると、過去の対応に対して気持ちのこもった謝罪があり、「リモートで一緒に管理画面を見ながら原因を探しましょう」と提案してくれます。そのうえで、「サポートセンターでは停止した原因を推測して修正提案をすることはできるが、直接、設定ファイルを修正したり、プログラムを更新したりすることはできない」など、サポートできることとできないことの説明がありました。データベースを含む各種システムのバージョンや設定ファイルを確認したうえで修正案を提示してもらい、一つひとつ対応していきました。途中、「過去に同じようなケースがなかったか調べるので時間が欲しい」との話があり、「17時までは仕事があるのでそれ以降に連絡をしてほしい」と伝えると、時間通りに連絡がもらえました。結局、サイトが正常化するまでに数日かかりましたが、動いたときには「良かったですね」と一緒に喜んでもらえました。担当者の誠意ある対応に、私は「このまま、この会社のサービスを使い続けたい」と心から思いました。

 テクニカルサポートでは電話がつながりにくく、つながってもこちらが困っていることに対する共感や寄り添いの言葉がなかったり、マニュアル的な対応を淡々と事務的に行ったりと、できるだけ早く対応を終えようとするケースが見られます。

 テクニカルサポートにおいては、スピーディーに課題を解消することは重要です。だからこそ適度な共感や寄り添いの言葉があり、心のこもった対応をしてもらえると、顧客のモチベーションも上がりやすいのではないでしょうか。互いにポジティブに協力しあうことで、課題解決までの時間は短縮します。さらに、顧客満足度が上がることでサービスを長く使い続けることにつながるのではないでしょうか。

PROFILE
山田祐嗣
HDI国際認定資格取得者:HDIイベント、認定トレーニング、格付けベンチマーク、メンバーネットワーキング、実態調査などを通じてサポート業界に価値を提供し、サポートセンターのサービス品質向上および地位向上を目指し活動をしています。

2024年03月20日 00時00分 公開

2024年03月20日 00時00分 更新

その他の新着記事

  • スーパーバナー(リンク1)

購読のご案内

月刊コールセンタージャパン

定期購読お申込み バックナンバー購入