2022年9月号 <特集>

特集扉

CX戦略拠点化の第一歩
「コールリーズン」分析・活用法

Part.1 <目的と手法>

「注文」「照会」「変更」は理由ではない!
“行動のきっかけと背景”を数値化する価値

「どのような行動をした顧客がロイヤルカスタマー化するのか/離反するのか」──この法則が理解できれば、企業は確実に成長する。そのためには、「どのような電話がかかっているのか」を知ることが最短の近道であり、唯一の方法だ。現場がノンボイスシフトやリソース戦略を立てるうえでも、コールリーズン分析は欠かせない。その目的と手法についてまとめる。

 コールリーズン分析とは、マネジメントの基本中の基本といえる。しかし、2021年に編集部が実施した「コールセンター実態調査」では、「コールリーズンを集計している」という回答が179社中、59%。集計はしていても、“分析”“活用”までできているセンターは少ない、という見方が強い。

 リーズン分析の目的は、多岐にわたる()。呼量抑制やセルフサービスの強化といったコールセンター内の取り組みだけではなく、経営課題に直結する施策にも活用可能だ。

 多くのセンターが取り組んでいる、オムニチャネル化や自動化は、従来のコールリーズンのバランス(構成比)を変える。言い換えれば、自動化の成果を検証するためにも、コールリーズンの現状と全体像を捉え、変化値を測ることが必要だ。さらに、問い合わせた後の行動までを紐付けて分析・把握できれば、ロイヤルカスタマー、あるいは離反顧客(あるいはその可能性の高い顧客)の行動がモデル化できる可能性すらある。それによって、顧客接点でのサービスやコミュニケーションが経営貢献することを、データで検証できる。カスタマーサクセスのKPIに設定されることの多い継続率やチャーンレート(離反率)に基づくマネジメントにも大きな貢献となるはずだ。

図 コールリーズン分析の目的と手法

図 コールリーズン分析の目的と手法

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Part.2 <ケーススタディ>

顧客視点でコールリーズンを読み解く
センターの最重要課題に取り組む5社の挑戦

コールセンターに求められる「顧客視点のマネジメント」とは、“迅速な問題解決”が最優先される。そのためには、日々入電・着信する問い合わせ内容を可視化・分析するコールリーズン分析による「顧客理解」のための施策が欠かせない。Part.2では、コールリーズン分析に対する取り組みについて、5社の事例をもとに検証する。

CASE STUDY 1:スカパー・カスタマーリレーションズ

「AIと人」のタッグで精度と生産性を向上
偏見・思い込みを排除し“真の理由”を把握

 スカパー・カスタマーリレーションズでは、コールリーズンの適切な分類とリーズンごとのAHTを把握し、オペレータの人員配置を最適化するため、問い合わせ履歴の分析に注力してきた。従来、オペレータが後処理業務として問い合わせ内容を入力していたが、分類項目が実際の問い合わせ理由と差違が生じた結果、後処理に時間を要し、生産性・信ぴょう性に課題が浮上した。そこで、会話内容を全件テキスト化し、テキストマイニングツールで分類をやり直したが、振り分け精度は向上せず、設定した700項目の分類作業に相当な手間が発生。解決策として、コールリーズンの分類にAIを活用、分類精度の向上と現場オペレーションの負荷軽減を図った。

CASE STUDY 2:BIGLOBE

自動化できるコールリーズンを特定
「使えるチャットボット」構築に活かす

 インターネットサービスブロバイダ大手のBIGLOBEでは、オペレータがCRMシステムにコールリーズンを記録することで、日々の問い合わせカテゴリや傾向、具体的な内容などの把握に活かしている。とくに近年は、顧客による自己解決の促進に注力しており、「どのような問い合わせであれば自己解決が可能か」「システムやAIを活用して自動化できるものはないか」という観点でコールリーズンを分析し、AIやチャットボットを活用して導線改善を図っている。

CASE STUDY 3:オリンパスマーケティング

発信元によって窓口を分担
緊急度で分類し最適チャネルへ誘導

 オリンパス製医療機器の販売・サポートを行うオリンパスマーケティングでは、人命にかかわる緊急のコールへ迅速に対応できるよう、オペレータへ優先接続する「医療機関向け窓口」と、「取引先企業専用窓口」、および音声認識IVRを活用しFAQへの誘導を促す「社員向け窓口」の3種類の窓口を設置。限られたリソースでも診療時や手術前など緊急を要する医療従事者からの問い合わせに、確実に対応できる体制を整えた。

CASE STUDY 4:三井住友海上火災保険

コールログからFAQの課題を分析
エフォートレスな自己解決を実現

 FAQ作成へコールリーズン分析は避けられない。三井住友海上火災保険は、年間約130万件もの入電の30%をデジタルチャネルに移行するという目標を掲げている。なかでも公式サイト経由の入電は9万件にも上り、FAQサイトの改善が必須と考えている。

 まず、過去の応対傾向から、コールリーズンごとに課題点を検証。感染症拡大や自然災害の種類や初動対応によって、応答率の予測値と実際の数字が大きく異なる場合もあるため、入電量が増加した原因を各チャネル分析によって検証する。そのうえで、オペレータの人員配置の変更やFAQサイト・チャットの改善を実施するというプロセスだ。

CASE STUDY 5:オリックス生命保険

「全件テキスト化」がもたらす成果
トレンド把握と“新たな気付き”

 オリックス生命保険は、オペレータが入力したCRMシステムのデータ、テキスト化した音声ログのテキストマイニング結果の2通りの方法でコールリーズンを集計している。

 オペレータが記録するデータは、主に呼量予測に活用。リーズンコードは約120種類に分類。オペレータは大カテゴリと中カテゴリについて、プルダウンメニューから該当するコールリーズンを選択・記録している。重要な意見やクレームの場合は、別途、チェックボックスにチェックすると、VOCとして品質管理部門と連携可能だ。

 テキストマイニングについては、音声ログを全件、音声認識システムでテキスト化し、テキストマイニングツールで加工してコールの傾向を把握する。

2024年01月31日 18時11分 公開

2022年08月20日 00時00分 更新

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