2022年8月号 <センター探訪>

センター専用に建てた自社ビル

センター専用に建てた自社ビル

あいおいニッセイ同和損害保険

スローガンは“コミュニケータ・ファースト”
働きやすさを実現する「設備」と「制度」

 一般的に顧客対応は、正確性や迅速性が重要。金融機関の顧客対応となれば、その傾向はさらに強くなる。保険会社のコールセンターは、約款にまつわる問い合わせといった専門知識も求められ、現場は常に高い緊張感に置かれる。

 損害保険会社大手のあいおいニッセイ同和損保では、“コミュニケータ・ファースト”を掲げ、コミュニケータの働きやすさに気を配っている。コールセンターを「会社の顔」とも捉え、2011年には成増(東京都板橋区)にセンター専用の自社ビルを建てた。7フロアを執務室に充て528席を設ける。

 声を使う電話業務への配慮から、ビル内の湿度は50%以上を保持。いわゆる“感情労働”と、ストレスも抱えやすいことから、エレベーターホールにはリフレッシュを促すアロマを炊く。アロマの香りを月ごとに変えるほか、出勤時間帯は気持ちが高まり、帰宅時間帯はリラックスを促すなどの工夫も凝らす。

 近隣は、住宅街とコミュニケータは主婦層がメイン。そのため、託児所も併設する。初期に利用した子供の中には、高校生くらいに成長した子もいる。ほかにも、女性用トイレの広さを男性の倍以上にするなど、細部にまで配慮している。

 ビル最上階にある休憩室は、眺望の良さからも人気が高い。天気の良い日は富士山が見える。実はこの休憩室、利用できるのはコミュニケータのみ。それについてコンタクトセンター事業部の國﨑美香グループ長は、「気兼ねなく休みたいとの声を受けて、コミュニケータ専用にしました。スタッフが気持ちよく、働き続けてもらえるならと管理者も賛同してくれています」と説明する。コミュニケータ・ファーストが、社内全体に浸透していることが分かるエピソードだ。

最上階の休憩室は広く眺めも最高

最上階の休憩室は広く眺めも最高

執務室の様子

執務室の様子

承認がやる気を生む

 VOE(Voice Of Employee)を取り入れなど、職場改善にも積極的だ。これは、「コミュニケータへの承認の表れ」と野口朋泰部長は話す。「できないこともありますが、時間を置かずに答えを出す。それだけでも、意見を聞いてもらえると分かり、働く意欲につながると考えています」(野口氏)。もちろん、できることはすぐに実行する。矢嶋慶介グループ長は、「各階に冷蔵庫や、電子レンジが欲しいとの要望は、数週間のうちに対応しました」と一例を紹介してくれた。

 コミュニケータへの承認は、評価制度にも表れる。同社では表彰制度を設けて、モチベーションアップを図る。評価項目は、契約者からの感謝、分かりやすい説明をする工夫、日常で気づいた業務改善への提案など幅広い。緒方康夫推進役はその理由について、「人によって得手不得手はあります。評価基準を広げることで、誰にでもチャンスがある。きちんと仕事をしていれば、誰もが認められる風土であることを伝えたいのです」と思いを語る。

 給与に反映させるだけでなく、評価の結果を“かたち”にもしている。表彰されたスタッフには、金や銀などのバッジを授与するほか、掲示も行う。そうすることで、功績が周知され、まだ評価を得られていないコミュニケータのやる気にも火をつける。ほかにも、全国のセンターが一堂に介す、応対コンテストの審査員を務められるなど、仕事に対する付加価値の創出も図っている。

トップの参加は“本気の表れ”

 全国のセンターが集まる「明るく元気活動発表会」は、現場で行う創意工夫や、改善事例を共有する場になっている。“同社で働く価値を見つけてほしい”との思いから、2016年に開始。社長をはじめ役員らも顔を揃える“本気の場”とあって、スタッフたちにも熱が入る。各拠点が、1年間の部門の成果を共有することで横展開にもつながり、全社的な品質向上にも効果を生んでいる。

 安心で安全な働き方を、コミュニケータにしてほしいとの思いから、コロナ禍では在宅勤務を導入した。苦労は多かったが、研修のオンライン化による効果も出ている。全拠点に、同じ教育プログラムを展開できるようになったことで、対応品質の平準化につながった。

 さまざまな角度から、働きやすさを追求する同社の取り組みは、今後も加速していくだろう。

ずらっと並んだ優秀者の掲示

ずらっと並んだ優秀者の掲示

面談を希望する場合は専用ボックスに相談シートを投入

面談を希望する場合は専用ボックスに相談シートを投入

 

2024年01月31日 18時11分 公開

2022年07月20日 00時00分 更新

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