2022年6月号 <インタビュー>

守島 基博 氏

役職や給与だけではエンゲージメントできない!
ジョブ型雇用時代の「全員戦力化」マネジメント

学習院大学
経済学部経営学科教授
守島 基博 氏

在宅シフトによって、「仕事と向き合う時間が増えた半面、企業への帰属意識は希薄化している」と指摘するのが、学習院大学 経済学部経営学科教授の守島基博氏だ。組織のあり方が変化していくなか、組織力を維持、向上するためのマネジメントはどのように変化していくべきか。従業員エンゲージメントの方向性を聞いた。

Profile

守島 基博 氏(Motohiro Morishima)

学習院大学 経済学部経営学科教授

慶應義塾大学、米国イリノイ大学修了。人的資源管理論でPh.D.を取得。サイモン・フレーザー大学(カナダ)経営学部助教授。慶應義塾大学総合政策学部助教授、同大大学院経営管理研究科助教授・教授。一橋大学大学院商学研究科教授を経て、2017年より現職。近著『全員戦力化 戦略人材不足と組織力開発』

──コロナ禍によって在宅勤務が普及しました。こうした就労環境の変化は人々のエンゲージメントにどのような影響があるのでしょうか。

守島 最も大きな変化にエンゲージメントの対象が“企業”から“仕事”や“職務”へ移行したことが挙げられます。

 従来、日本では終身雇用制が長く続いた結果、企業への帰属意識そのものが、雇用者のエンゲージメントの基盤として機能していたといえます。例えば、大企業における人事異動は、個人の意図や意思とはほぼ無関係に行われてきました。高い企業忠誠心があり、会社の命令には従ってきたわけです。これは、会社で上司や同僚と同じ空間で、かつ上司による直接的な指示に従って仕事をするという業務形態においては、非常に有効です。秩序を守るというマネジメントで非常に効率的でした。ところが、在宅シフトしたことで日常のコミュニケーションが希薄化し、自発性や主体性が求められる就業環境へと変化しました。“仕事”と向き合う時間が増えた半面、“会社”そのものへの帰属意識が薄らいでいます。

ジョブ型雇用が急速浸透
組織から業務へ比重が変化

──企業側、つまり経営にはどのような変化を求められていますか。

守島 私どもの研究によると、働く人は、やりがいを与えてくれる企業への帰属意識を高めます。家庭や趣味へのエンゲージメントが高まると、組織や職務へのエンゲージメントは低くなる傾向がありますので、家庭などに意識がいきやすい在宅という環境において、仕事のやりがいを高める取り組みの重要性は高いと思います。つまり“業務”にエンゲージメントできる環境を整えていくことです。

 従来、日本の人事管理は、「組織エンゲージメント」を強調してきました。組織へのコミットメント、つまり愛社精神をどのように高めるかが重要だったわけです。しかしながら、2013年頃に特定の職務に特化した採用を行う「職種別採用」が登場し、さらに、コロナ禍において知名度の高い大企業が「ジョブ型雇用」への転換を表明する中で、大きく変わりました。ジョブ型雇用でのエンゲージメントの対象は、企業ではなく業務そのものです。業務に対するエンゲージメントが高い人材は、上司の指示だけでなく、主体的に自分で何がやりたいかを考え、動いていくので成果に対するモチベーションも高い。人事管理として大きな変化が求められています。

(聞き手・嶋崎有希子)
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