2022年5月号 <わたちゃんのかすたま〜えくすぺりえんす>

わたちゃん

<著者プロフィール>
職業:顧客経験価値にこだわる戦略立案&業務改革コンサルタント
過去勤めたことのある企業:日本ユニシス、日本IBM、日本テレネット
週末の過ごし方:
<ケース1>隅田川あたりをぶらぶら散歩して浅草で飲んだくれたあと銭湯で汗を流す
<ケース2>スポーツジムでヨガレッスンを受けて汗を流す
最近の悩み:昔は痩せの大食いだったのが、最近は小食の小太りになっていること

サイネージの広告利用に異議あり!

ISラボ 代表 渡部弘毅

 最近は、広告よりも友人のオススメの方が購入動機になることが多い、わたちゃんです。広告を見て興味が沸くと、まずはその商品を知っていそうな知人に評判を聞いてみるという傾向が強まりました。

 広告といえば、デジタルサイネージを単に情報掲示の電子化ではなく、サイネージ広告として利用する技術や需要が高まっています。

 ファミリーマートは、サイネージを単なる看板の電子化ではなく「店舗のメディア化」と捉え、広告メディア事業を本格展開します。コンビニ業界が直面する「成長の踊り場」を打開する、ひいては収益を伸ばす手段としてサイネージ広告に目をつけて、実証実験中のサイネージ設置店を3000店舗に拡大する予定です。店舗での強みは販売データを活用した効果測定にあります。サイネージ広告を見た顧客の購買率の測定による効果的な広告発信など、ECサイトに近いデータ分析活用が実現できるというわけです。カメラ映像の分析および効果測定も可能で、リアル店舗ならではの強みを活かした有力メディアになったといえます。

 デジタルサイネージは、小売り店舗以外にもコロナ禍でも人流が減らないといった理由で、マンションにも設置されています。景観の問題で、紙での掲示板を避けたい高級マンションのエントランスでは、住民向けの案内を流しながら広告も配信しています。そうした機器をマンション側に無料提供・設置し、広告主から対価を得る「広告メディア型」モデルも登場しはじめています。

 しかしながら、こうしたサイネージ広告の流行に対して、私は否定的な見解をもっています。

 小売業界における新たな収入源を否定するわけではないのですが、本来、リアル店舗は顧客の購買体験を向上させる、あるいは小売企業が掲げるブランドや世界観を体感してもらう場です。その顧客体験を高めるためにこそデジタルサイネージ技術を使うことが本筋であり、決して「売らんかな」のための広告配信が主になってはいけません。マンション設置でもしかりです。住民の生活に役に立つ情報を分かりやすく伝えるのがサイネージのメインの役割であって、決して広告がメインのサイネージになるべきではありません。行き過ぎると高級マンションも安っぽく見えるでしょう。

 店舗やマンションは、顧客や住民に通い続けて良かった、住み続けて良かった、と思っていただくためのデジタル施策に投資すべきです。決して過度な広告収入重視の策に走るべきではないのです。

 というわけで、いきつけのファミリーマートにサイネージ広告が登場するのを興味本位で待っています。実際にはものの見事にはまって、購入金額が増えてしまうかも、とも危惧しています。

図 小売店舗にとってのデジタルサイネージ

図 小売店舗にとってのデジタルサイネージ

2024年01月31日 18時11分 公開

2022年04月20日 00時00分 更新

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