2022年3月号 <市界良好>

市界良好

<著者プロフィール>
あきやま・としお
CXMコンサルティング
代表取締役社長
顧客中心主義経営の実践を支援するコンサルティング会社の代表。コンタクトセンターの領域でも、戦略、組織、IT、業務、教育など幅広い範囲でコンサルティングサービス及びソリューションを提供している。
www.cxm.co.jp

ナレッジ

秋山紀郎

 スマートフォンの機種変更を行った際、インストールしていたアプリの多さに改めて驚いた。電子マネー、ネット銀行用のアプリ、エンタメ、ショッピング、そしてワクチン証明書まで、もうスマホは手放せない。小さなスマホは、ハードとして多機能であるとともに、さまざまな企業のアプリが組み込まれている。それ故、突如エラーになったとか、勝手にシャットダウンしたとか、ユーザーの誰もが原因不明のトラブルに見舞われた経験があるだろう。完全に故障すると、電車にも乗れないし、コンビニで買い物もできなくなる。便利なスマホは、さまざまな企業が提供しているサービスの集合体だから、ひとたびエラーが発生すると、どこに原因があるのかユーザーが判断するのは難しい。周囲の人に助けを求めたり、携帯ショップに駆け込んだり、中には諦めて泣き寝入りの人もいるはずだ。

 BtoBの世界でも、似たような事象は起きている。例えば、パブリッククラウドによるサービスだ。販売、生産、経理、人事などの基幹業務からメール、そしてコンタクトセンターまで、幅広くクラウドサービスが普及しているが、大規模障害や設定ミスによる情報漏洩のニュースが後を絶たない。利用企業はSLAがあると言っても、ビジネスアワーのシステム停止による影響は計り知れない。詳しい原因追求ときちんとした対策を講じてほしいと言いたいが、複数の企業で構成するサービスの場合、原因を突き止めるには高い技術や経験を求められ、コストも相当かかる。BtoBの場合、責任の窓口はSIベンダーであろう。障害発生時は、どこに原因があろうが、保守の窓口担当が先頭に立って、クライアント企業との折衝にあたる。実に頭の下がる思いである。

 BtoCでもBtoBでも、複数の企業によるサービスが連携して安価に提供され、社会が回っている。うまく行っているときは良いが、障害が発生すると利用者も提供者も大騒ぎになる。とくにBtoCのサービスの場合、どのようにトラブルシューティングすべきか。ひとつの解になるのが、やはりコンタクトセンターの役割であろう。障害などエラー発生の状況を聞き取り、考えられる原因を探っていく。利用者の勘違いという場合もあるだろう。やはり障害だと分かれば、原因分析に必要な情報を取得し、各サービスの責任分界点をもとに原因追求を依頼する。高度な技術が求められる、とても重要な組織だ。果たして、その組織はどこか。

 私がスマホの機種変更をしたきっかけはこれであった。交通系ICカードのアプリにログインできくなった。アプリを提供する企業、ICチップのベンダー、スマホの窓口でたらい回しの状態になりかけた。結局、ある操作で復旧したのだが、その方法、いわば解決策を報告する受け口がない。他にも似たケースがあった。身に覚えがないと思ったクレジットカード明細についても同じだ。カード会社に尋ねて不正ではないと分かったため、サービス提供会社に問い合わせて、正しいと判明した。ある条件において、明細の記載が分かりづらくなるのだが、それをカード会社に伝える機会がない。

 今日も似た問い合わせが各窓口に寄せられ、たらい回しを誘発しているかも知れない。

2024年01月31日 18時11分 公開

2022年02月20日 00時00分 更新

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