2021年11月号 <わたちゃんのかすたま〜えくすぺりえんす>

わたちゃん

<著者プロフィール>
職業:顧客経験価値にこだわる戦略立案&業務改革コンサルタント
過去勤めたことのある企業:日本ユニシス、日本IBM、日本テレネット
週末の過ごし方:
<ケース1>隅田川あたりをぶらぶら散歩して浅草で飲んだくれたあと銭湯で汗を流す
<ケース2>スポーツジムでヨガレッスンを受けて汗を流す
最近の悩み:昔は痩せの大食いだったのが、最近は小食の小太りになっていること

タクシー業界に見る
「カスタマーサクセス」「DX」の影響力

ISラボ 代表 渡部弘毅

 京都に単身赴任していた頃は、夜、MKタクシーを呼んでお気に入りの銭湯めぐりをしていた、わたちゃんです。電話して「自宅前まで」と言えば通じるし、タオル片手の降車時には手動でドアを開けてもらって、「いってらっしゃいませ」と運転手から声をかけられるし、銭湯上がりに牛乳飲んでいると「お車到着しました」と迎えにきてくれ、王様気分を味わっていました。

 タクシー業界は、長期的な需要減少やドライバーの高齢化、人手不足などで苦しんでいます。また、コロナ禍で、インバウンド観光客の激減と人の動きが減少したことからその苦境に拍車がかかり、廃業する事業者も少なくありません。タクシーは地域の足を担う重要なインフラです。とくに地方では、鉄道やバスなどの不採算路線が撤退、交通空白地域となった場所の穴埋めとして、重要な役割を演じているエリアも多く、業界の衰退は社会問題でもあります。

 そんななか、独自の取り組みでタクシー業界のあるべき姿のひとつとして注目されている企業があります。

 仙台市にあるフタバタクシーでは「介護タクシー」を提供しています。ドライバーの9割が介護職員初任者研修の資格を取得、営業車両の約半数を福祉車両として配置しています。介護タクシーは一般のタクシーと違い、運んで終わりではありません。顧客の部屋で利用者を車椅子に乗せるところから、病院到着後の介助や看護師へ引継ぎして乗務完了になります。実際に、コロナ禍で一般のタクシー利用は減ったものの、介護タクシーの利用は減らなかったようです。

 注目されるもうひとつのサービスが「子育てタクシー」です。塾や学童保育への子供の送迎、妊婦や乳幼児を連れた母親の外出サポートをするサービスです。

 いずれの例も、タクシーを単なる「移動サービス」事業と位置付けず、「お客様が移動する目的」を達成するために、付加価値を加えたサービスを提供しています。昨今、SaaS業界では提供するクラウドサービスを使って企業の経営目標を達成する支援を訴求する「カスタマーサクセス」という考え方が広まっています。本事例はタクシー業界でカスタマーサクセスの実践事例といってよいでしょう。

 一方、都会のタクシー会社を中心にDXも加速しています。今まで最も経験と勘が必要だった「お客様を見つける」という仕事を配車アプリが担い、さらに規制緩和による、飲食デリバリーサービス、ダイナミックプライシング、相乗り、交通情報の発信拠点など、さまざまな新サービスの可能性が広がりました。いずれも顧客、車、本社、他交通機関、地域社会がデジタル上でつながる「OMO(Online Merges with Offline)」が実現し、DXが加速されています。

 ということで、コロナが落ち着いたらまた銭湯めぐりをしようと思っていますが、今回はコストを抑えてタクシーではなく、OMO的新サービスである自転車のシェアリングサービスを使ってみることにします。

図 タクシー業界の変革ドライバー

図 タクシー業界の変革ドライバー