2021年10月号 <市界良好>

市界良好

<著者プロフィール>
あきやま・としお
CXMコンサルティング
代表取締役社長
顧客中心主義経営の実践を支援するコンサルティング会社の代表。コンタクトセンターの領域でも、戦略、組織、IT、業務、教育など幅広い範囲でコンサルティングサービス及びソリューションを提供している。
www.cxm.co.jp

自動化の時代

秋山紀郎

 先日、久しぶりにレンタカーを利用する機会があった。初めての車種に乗車して、最初にてこずるのがカーナビだ。普段乗っている車と仕様が異なるから仕方ない。カーナビについては、だいたいの機能は分かっているので、すぐに目的地設定を済ませて出発した。今回、意外と戸惑ったのが安全装置だ。オートクルーズを利用すると、前走車の減速に連動して車間距離を維持する自動ブレーキが作動するのだが、自分の感覚より厳しめに強くブレーキがかかり、びっくりした。また、突然警報が鳴るので、何事かと思うこともあった。原因は車線逸脱を知らせるものであったが、正しくウィンカーを上げれば警報されないことが分かった。いろいろ試しているうちに、車間距離の基準などもつかめるようになり、交通量が少ない時は前走車に追従するアクセルやブレーキの自動操作に任せることができた。自分ではほとんど操作しなくてもよいため、快適さを感じる一方で、このままでは自分の安全感覚が鈍りそうな気がした。

 日本でも昨年、自動運転レベル3の「特定条件下における自動運転」が公道で認められた。今後、自動運転機能が充実して、システムに委ねる範囲が増えると思うが、システムを過信した事故の発生が懸念される。その場合の責任分界点はどうなるのか。

 さて、コンタクトセンターにおいても、自動化の範囲が議論されている。IVRやACDのような決まった機能の自動化は古くからあり、生産性向上に欠かせない。また、音声認識システムを活用したボットやチャットシステムによる自動化が進められているが、完全自動化までには、ほど遠い状態だ。生命に関わる自動車に完全自動化の時代が来るなら、センター業務の完全自動化もできるという人もいるが、私は懐疑的だ。もちろん、住所変更などの手続き業務に関する自動化の進行に異論はないが、相談系のコミュニケーション業務は無理だろう。道路の場合は、交通に関する法律があり、それに従わなければならない。つまり、正しい答えがある。一方、法律のある交通と違い、コミュニケーションという緩くて、正解もなく、ルールも変わるコンタクトセンターの応対の完全自動化はできないと思う。

 自動車もコミュニケーションも、システムによる自動化と人間との分担ということに当面なるだろう。一方で、自動化された部分に委ねすぎるのもリスクがある。カーナビの利用で一度来た道を覚えなくなったり、自動運転に頼りすぎて安全感覚が鈍ってしまったりということもあるだろう。いつか不具合や設定ミスで、運転のルートが誤案内されたり、車間距離を詰め過ぎたりされても、それに気付けなくなってはならないはずだ。コンタクトセンター業務においても、チャットボットの処理ルールや、自動表示されたナレッジが正しいかなどのチェックは人が行わなければならない。実際に、IVRの設定が間違っていて、休日にセンターの電話が鳴っていたとか、入電時のルーティングの設定が長期間誤っていたという話も聞かれる。自動化しても人によるチェックは必要ということである。

 人と機械の境目のあり方は、技術進化のもと、当面の間、模索する日々が続く。