2020年12月号 <サービスのプロに聞く>

今野 ひろ子 さん

<コーナー解説>
店舗など、コールセンター以外を含めた接客やサービスのプロにその心構えやノウハウを聞きます。

顧客の迷いや不満を見抜く
観察力と洞察力に基づく「職人」の提案

オーソドキシー
代表
今野 ひろ子 さん

Profile

1981年、下北沢で革製品のフルオーダーメイド店「オーソドキシー」を開業。1992年、ショップを代官山に移転した際、代表に就任。2009年、工房とショップを銀座に移転して現在に至る。

 「製作技術を持っていなければ、お客様との会話を通じて、この世に存在しない革製品の形を明確にすることは、不可能です」──フルオーダーメイドの革製品を提供するオーソドキシー代表の今野ひろ子さんはそう語る。店の代表として、現在は技術者と顧客の橋渡しを担っているが、自身もかつては製作していた。軽くて、ストレスなく使えて、身に着けると品格が出る──既製品では得られない満足感ある革製品を、注文者の要望に合わせたデザインで提供できる秘訣を、今野さんは「お客様への愛情です」と説明する。

 今野さんの完成品を見た顧客は、しばしば「どうしてあれくらいの会話で、私が心に描いていたものが分かったの?」と感嘆する。

 それは、ずば抜けた観察力/洞察力の賜物だ。所作ひとつで、利き手はどちらか、つまずく動作はあるか、器用な人なのかなど、多くの情報が得られるという。そこから本人が言葉に表せない漠然とした希望を読み取り、適切な提案をすることが信頼感につながる。また、注文者の店内での様子や、持ち物の扱い方、ファッションの傾向なども、その人物像や好みを探る手がかりとなる。「とにかく顧客を観察することが重要」と今野さんは考えており、「自分も同じように実際に動作して、何がストレスなのか、相談者になりきる“イタコ式シミュレーション”で顧客のニーズを想像します」と笑顔で語り始めた。