2019年11月号 <特集>

特集扉

事例に見る
「音声認識」活用のヒント

Part.1 <課題と活用目的>

CS向上? 人材育成? ACW短縮?
用途で異なるツールの「選び方」「使い方」

「コールセンター白書2019」によれば、音声録音システムの導入率は94%におよぶ。全件録音が当たり前となり、「蓄積した音声ログをもっとビジネスに有効活用したい」というニーズが拡大。AIによって認識精度が飛躍的に向上したこともあり、音声認識の活用が進んでいる。さらに、「対話内容のテキスト化」だけでは解消できない課題を、感情解析で解決を図る事例も増えつつある。

 音声認識機能の利用は、一般消費者にとって、もはや当たり前となりつつある。スマートフォン、スマートスピーカー、自動車(カーナビ)など、さまざまなデバイスで利用され、ここ数年で一気に身近な存在となった。

 コールセンターでも活用事例が増えつつある一方で、具体的な運用シーンをイメージしないまま「とりあえず全文テキスト化できれば、何かしら成果が生まれる」という“安易”な検討が増えているという。

 ベンダー各社は、「“とりあえずテキスト化”を起点にした案件は、PoC(Proof of Concept:概念実証)でも認識精度にばかりに目がいきがちで、結局導入に至らなかったり、導入してもうまく活用できないケースが少なくない」と口を揃える(図1)。

 本特集では、音声認識や感情解析を活用して音声データを可視化することを検討する前に必要な、「活用目的の明確化」を中心に検証する。

図1 あらかじめ課題/目的を明確にすることが重要

図1 あらかじめ課題/目的を明確にすることが重要

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Part.2 <音声認識>

“とりあえずテキスト化”では成果は出ない
「目的別」のソリューション選定法

音声認識システムの導入は、現場が“使いこなす意思”の有無が成果を分ける。「とりあえず“テキスト化”できれば何かが得られる」のような曖昧な考えでの導入では成果は得られない。現場主導で設定した目的に基づいて適したソリューションを見極めること、“音声認識は100%完璧ではない”を前提とした運用の工夫を凝らすことが重要だ。

 音声認識システムの実用が本格化している一方で、思うような成果を出せずに迷走している事例も数多くある。この原因は、「とりあえずテキスト化できれば新しい知見が得られる」という、導入目的の曖昧さだ。本来は、モニタリングを効率化したいのか、顧客応対の効率化を図りたいのか──。まず、現状抱えている業務課題や運営方針に基づいて現場主導で目的を定めて導入を進めない限り、選定すべきソリューションは定まらず、費用対効果の算出も難しい。SI・ベンダー各社の提案とユーザー事例から、音声認識システム導入・活用のポイントを検証する。

(1) モニタリング自動化:ビーウィズ

『全件』評価がもたらす“納得感”
オペレータに浸透した自律的な改善

(2)VOC活用 :住信SBIネット銀行

音声ログをマイニングし詳細分類
ペインポイントを抽出しUX改善

(3)音声認識IVR :NTTドコモ

顧客の発話と窓口を紐づけ
リーズンごとのコールフローを設計

図2 導入目的別の音声認識エンジン活用例

図2 導入目的別の音声認識エンジン活用例

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Part.3 <感情解析>

CS/ES向上から人材育成まで
“感情解析”で高まる通話音声の付加価値

コミュニケーションとは、単なる“言葉のやりとり”だけではない。非言語情報(パラランゲージ)を活用し、互いの感情を読み取りながら対話している。カスタマーエクスペリエンスの向上には、顧客の感情把握も必要だ。音声認識によるテキスト化では抜け落ちてしまう“感情”を可視化する、「感情解析」技術がもたらす効果をまとめる。

 顧客の「ありがとう」は本当に満足を表しているのか──。音声認識によるテキスト化だけでは、この真相は永遠にわからない。テキスト情報には、会話の温度感や話者の感情の起伏などが現れにくく、相手の真意がわからないためだ。しかし、発話音声から感情を可視化する「感情解析」技術を用いることで推測は可能となる。

 従来の感情解析は「怒り」の解析が中心だった。具体的にはクレーム電話の抽出だ。しかし、「怒りの電話ならば、オペレータでも判断できる」という意見が圧倒的で、これも普及に至らなかった理由のひとつだ。AI技術の進化により、喜怒哀楽すべての感情がリアルタイムで“視認”可能となったことで、活用シーンは飛躍的に拡大しつつある(図3)。

 本誌では、感情解析の現在と活用シーンを解説するとともに、コールセンターでの導入事例を紹介する。

ケーススタディ(1):TMJ

オペレータの自信/不安を可視化
SVの的確なフォローで業績向上

ケーススタディ(2):WOWOWコミュニケーションズ

顧客の「購入本気度」を可視化
セールスパフォーマンスを向上

図3 コールセンターにおける感情解析の活用例

図3 コールセンターにおける感情解析の活用例

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2024年01月31日 18時11分 公開

2019年10月20日 00時00分 更新

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