2019年9月号 <サービスのプロに聞く>

柿沼 京子 さん

<コーナー解説>
店舗など、コールセンター以外を含めた接客やサービスのプロにその心構えやノウハウを聞きます。

接客のスペシャリストに学ぶ
「観察力」「想像力」の体得法

タリーズコーヒージャパン
社員研修チーム
トレーニングマネージャー
柿沼 京子 さん

Profile

2010年に防衛医大病院店にアルバイトとして入社。2015年タリーズコーヒーバリスタコンテスト全国大会 アルバイトの部で優勝した。その後、社員として国分寺店や立川店など、複数の店舗に赴任。
2019年SCロープレ全国大会に出場し、審査員長賞を受賞。その実力が認められ、同年5月にトレーニンググループへ異動した。

 「作り込んだ接客じゃなく、いつも通りを心掛けました。接客コンテストはそこを評価されたと思っています」と語るのは、タリーズコーヒージャパン トレーニングマネージャーの柿沼京子さん。柿沼さんは、店舗スタッフを務めていた際、日本ショッピングセンター協会の「第24回 SC接客ロールプレイングコンテスト全国大会」で受賞し、同社の「バリスタコンテスト」でも優勝経験を持つ、接客のスペシャリストだ。

 柿沼さんが、内外から評価される接客スキルが身についたのは、入社当時に配属された病院内店舗での経験が大きい。例えば、車いすが入りやすくするなどの機転が必要なので、他店と違いカウンター内の仕事以外にも隈なく目を配る必要がある。オーダーをしにきた目の前の顧客だけではなく、店舗全体を常に観察し、「必要な案内は何か」を察知、実行するホスピタリティを身につける良い経験になったと振り返る。

 柿沼さんは、現在は接客だけではなく、トレーナーとして多くのスタッフの教育に携わっている。

 「学生さんのアルバイトも多く、(彼らは)どう立ち回ればいいか分からない場面もあります。でも、それは単に今まで経験したことがなかったからというだけ」と語る柿沼さんは、ただマニュアル動作を指示するのではなく、“どうしてその行動が必要になるのか”を認識してもらうことを重視している。例えば、車いすの顧客が来店した際は、ただ「行ってあげて」と指示するのでは不十分で、「車いすだから、椅子がひとつ要らないよね」「でもお客様自身では動かせないよね」「だからその行動が必要」と理由付けをすることで、個人の想像力を育てることに尽力する。

 一番の教育は「仕事の楽しさを感じてもらうこと」だという。「いざ、お客様と対面してもなかなか言葉が出ず、レジに立つのが怖くなるという新人を何人も見てきました」と柿沼さんは語る。敬語を正しく使えなくても、「顧客を楽しませよう」という気持ちが伝わればいい。最初は「今日は暑いですね」など、リラックスしてできる範囲の会話ならば何でもいい。「自分の言葉でお客様と会話し、お勧めした商品を選んでいただけた。こうした小さな成功体験が仕事の楽しさにつながり、頑張る理由になると思っています」という。

 「(会社にとって)お客様はもちろん一番大切なのですが、スタッフも同じくらい大切。スタッフが笑顔でない店舗は、お客様を笑顔にすることはできません」と柿沼さんは強調する。「私は仕事がとても楽しいです。私と新人スタッフたちに差があるとすれば、経験の差だけ。そこを埋めてあげれば、彼らの仕事も楽しくなると信じています」(柿沼さん)