2019年9月号 <インタビュー>

見波 利幸 氏

「心が折れる職場」にならないための
“組織的メンタルヘルスケア”のすすめ

日本メンタルヘルス講師認定協会
代表理事
見波 利幸 氏

日本メンタルヘルス講師認定協会代表理事の見波利幸氏は、「職場で起こるメンタル不調は、上司の “マネジメントスキル不足”」と断言する。メンタル不調者を出さないポイントとして、(1)メンタル不調に対する本質的な理解、(2)少数の管理職に役割を集中させないこと、(3)個別のケーススタディに基づいた実践的な研修などを挙げた。

Profile

見波 利幸 氏(Toshiyuki Minami)

日本メンタルヘルス講師認定協会 代表理事

外資系IT企業などを経て、98年に野村総合研究所に入社。メンタルヘルスの主席研究員として活動の後、 2015年より現職。メンタルヘルス講師の育成に尽力している。講演や研修、カウンセリング、職場復帰支援、危機対応など活動領域は多岐にわたる。著書は、『心が折れる職場』(日本経済新聞出版社)「心を折る上司」(角川新書)ほか多数。

──2015年から施行されたストレスチェック義務化法は効果的に機能しているのでしょうか。

見波 実施されていても、すでに形骸化してしまっていて有効活用できていない企業が多く見受けられます。ストレスチェックの結果を周囲に知られてレッテルを貼られたり、人事考課に影響することを恐れて虚偽の申告をしてしまうために、必要な面接指導に至っていないケースも散見されます。以前と比べれば、インターネットやテレビ番組、書籍などでメンタル不調に対する知識は容易に得られるようになりましたが、知識はついても、正しい理解にはつながっていません。

──まずは、マネジメント側が、メンタルヘルスケアに関する正しい理解を得ることが必要と言えそうですね。

見波 管理職の仕事は、数値目標やノルマによる「管理」ではありません。本来は、「人材を育成すること」が最も重要な役割のはずです。ストレスを受けている部下に対し、いかに接していくか。例えば、コールセンターでいえば応対時間や応対件数などの数値で測ることができるスキルだけでなく、もっと個々の状態をつぶさに観察してから指導すべきです。顧客対応業務とは、職場内のコミュニケーション機会が制限されやすいだけに、1回の指導やサポートの質が重要です。せめて、マネジメントする側がストレスの種類に合わせて意図的な対処とコントロールをする「コーピング」の方法を理解していれば、職場で心を折る従業員は減らせるのではないでしょうか。

「投資」の視点で考える
メンタルヘルスケア

──メンタルヘルスケアの本質を理解するには、どのような学習方法があるのでしょうか。

見波 多くの企業で実施されているような、新任管理職や特定の職層向けの数時間の座学研修だけでは、現場を変化させるほどに受講者の意識を変えることは難しいです。既存の知識以上に得られることが少なく、「そうだよね」や「わかっているけど……」にとどまり、マネジメントにはまったく反映されません。

 せめて、すべての管理職に対し、1日単位の研修を定期的に実施すべきと考えています。ありがちな失敗は中間管理職、例えば課長だけを対象としてしまうパターンです。その上司である部長以上、あるいはその部下にあたる主任やグループ長といったマネジメント職の面々は知識がないため、すべての対応が課長に集中してしまいます。そうなると、今度は、課長にストレスがかかった際に、誰も助けの手を差し伸べることができなくなります。組織力としてメンタル不調にアプローチすることが大事です。

(聞き手・横田 麻生子)
続きは本誌をご覧ください