2019年8月号 <インタビュー>

阿部 正浩 氏

労働力は「644万人分」不足する!
採用コストを「IT」に振り分ける視点が必要

中央大学大学院経済学研究科委員長・経済学部教授
阿部 正浩 氏

「人手でなんとかなる」は、もう通用しない。中央大学経済学部教授の阿部正浩氏とパーソル総合研究所の共同研究において「2030年、労働力は644万人不足する」と推計結果を取りまとめた。ビジネスを継続するには、採用コストを「ITによる業務自動化・生産性向上」に振り分ける視点が必要だ。

Profile

阿部 正浩 氏(Masahiro Abe)

中央大学大学院経済学研究科委員長・経済学部教授

1966年生まれ。2013年から現職。専門は労働経済学、経済政策論。厚生労働省「労働政策審議会」委員、内閣府「仕事と生活の調和連携推進・評価部会」委員、経済産業省「新・ダイバーシティ経営企業100選運営委員会」委員を兼務。著書は、『職業の経済学』(中央経済社)、『5人のプロに聞いた! 一生モノの学ぶ技術・働く技術』(有斐閣)など。

──パーソル総合研究所との共同研究プロジェクト「労働市場の未来推計2030」で、「2030年、労働力は644万人不足する」という推計を出されました。

阿部 現在の経済成長と人口動態の推移の延長線上で、労働需要と労働供給の差を試算した結果です。2017年時点の人手不足数は121万人ですが、13年間で5倍以上に膨らむことになります。結果、残業等によって「1人で1.5人分働かなければならない」状況が将来起こりうるということです。労働需要が十分に満たされていた2000年代から多くの産業で続いている、大量の労働力を雇用して成り立つ“薄利多売型のビジネスモデル”は限界を迎えつつあると言えます。

──労働集約型の典型であるコールセンターは、「比較的高い時給」や人材確保に努めて運営を維持してきましたが、それも難しくなるということでしょうか。

阿部 採用をはじめとした人材マネジメントは、人手を奪い合う施策ではなく、長期的な視点で経営を含めた抜本的な見直しが必要だと考えます。まず、賃金(時給)については、国と企業はこれまで以上に賃上げの努力が要求されます。時給に換算した実質賃金は、現在の1835円から2096円まで、年率0.87%上昇すると推計されています。実質賃金が2096円まで上昇しても「644万人」不足するのです。もし賃金が2096円に満たない場合、不足人数はさらに大きくなります。ただし、国内全体で労働力が不足するわけですから、賃金を2096円以上に設定したからといって、すべての産業で不足が補えるというわけでもありません。たとえ高額時給であっても、労働者が「働きたい」と思える環境を整える努力がなされていなければ、これまでよりもさらに厳しい人手不足に陥ることが容易に予測できます。

(聞き手・横田 麻生子)
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