2019年5月号 <特集>

特集扉

応答率から“カスタマーサクセス”まで
イチから学ぶ「KPIマネジメント」

Part.1 <KPIマネジメントの課題>

応答率だけでは何もわからない!
“ロイヤルティ”の影響因子を分析

日本のコールセンターで最も重視されている数字──それが「応答率」だ。しかし、コールセンターにとって電話がつながることは、“最も重要”ではなく、“大前提”にすぎない。しかも、応答率は「つながった」という結果を示すだけで、つながるまでのプロセス、つまり「待ち時間」が無視された数値だ。少なくとも、「カスタマーエクスペリエンス」の視点においてはKPIとすらいえない。

 コールセンターにおけるKPIマネジメントとは、結果だけを重視するものではなく、さまざまなKPIの相関関係を理解し、「あるべき姿」に対する“現在地”を把握する取り組みだ。センター最大の目的(ミッション)である顧客満足度やロイヤルティを左右する要素が何なのかを理解するためのKPIマネジメントを検証する。

図1 主なKPIの大分類

図1 主なKPIの大分類

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Part.2 <オペレーションKPI>

“相関性の理解”“脱・平均値偏重”
CX視点を実現する「2つの条件」

電話対応のオペレーション手法は、KPIマネジメントを含めてグローバルで確立されている。しかし、日本のコールセンターにおいては、必ずしもその確立された手法が定着しているとは言い難いのが現状だ。その最たる現象こそ、「応答率偏重」というKPIの捉え方にある。

 応答率(放棄呼率)、サービスレベル、呼量、稼働率、平均応答時間、そしてCPC(コスト・パー・コール)、顧客満足度など、コールセンターのKPIはほぼすべて相関関係にある。その関係性を理解することに加え、オペレーションKPIについて大きなポイントとなるのは、「時間帯」ごとのトラッキングだ。

 これを実践してはじめて、「ムリ・ムダ・ムラ」のない、顧客にもオペレータ(現場)にも経営にも貢献するセンター運営の“出発点”に立つことができる。

Part.3 <オムニチャネル(チャット)KPI>

リソース管理が急務のチャット対応
カギは特性を踏まえた「レポート機能」

急速に採用企業が増えているチャットボット/有人チャット対応。前者は正答率、後者は顧客満足度が最も採用されているKPIだが、課題も多い。とくに有人チャットは、電話同様のリアルタイム・チャネルでありながら、科学的なリソース管理はほぼされていない状態だ。件数が少ないうちは「メール対応の延長」で可能だが、電話に匹敵するチャネルに成長する可能性が指摘されている現在、その手法確立は急務となりつつある。

 メール対応は、レスポンスタイム達成率を軸に、生産性を対応時間や1案件あたりの対応回数、1時間あたりの対応件数でチェックし、満足度と解決率をトラッキングする手法が半ば、定着している。

 一方で有人チャットとは、電話同様のリアルタイム・チャネルであり、本来、KPIマネジメントも電話同様、「サービスレベル」を基準に考えるべきだ。

 さらに、電話にはない、AHTの再定義や顧客側が放置した場合のルールや数値の捉え方、同時対応セッション数といったKPIを考慮にいれなければならない。その手法はまだ確立されていないのが現状だ。

Part.4 <ロイヤルティKPI>

何をすれば「ファン」になるのか
ポイントは根拠を聞く“調査設計”

「顧客視点の徹底」のスローガンのもと、NPSやCS向上を目指すセンターが増えている。しかし、そのスコア自体は“ゴール”にはなり得ない。会社の収益への直接的な貢献、あるいは“ファン作り”“離反防止”をもたらす業務改善の根拠となる数値──これらをいかに取得し、経営に示すかが、これからのセンターマネジメントに課された課題だ。

 近年、コールセンターのKPIとして顧客満足度以外にもロイヤルティに関するKPIを設定する企業が増えつつある。とくに採用企業が増えているのがNPS(ネット・プロモーター・スコア)だ。NPSは、米ベイン&カンパニーとフレッド・ライクヘルド氏が開発、提唱しているロイヤルティ指標で、サービスや商品を利用した顧客に対し、他者への推奨意向を0〜10の11段階で評価してもらい、「9、10」をプロモーター(推奨者)と定義。その比率からデトラクター(批判者)と定義した「0〜6」の比率を引いたスコアをNPSとするものだ。

 また、CES(カスタマー・エフォート・スコア)も徐々に採用企業が増えている。コールセンターなどの顧客接点を活用した顧客に「問題解決(目的の達成)のために要した手間や苦労、努力の度合い」を7段階(5段階の事例企業もある)で聞き、トップ2(7段階の場合は6、7)の比率からボトム3(同1〜3)の比率を引いたスコアだ。

 顧客満足度、NPS、CESの運用ポイントは、すべて「評価の根拠」を合わせて聞くということに尽きる。フリーアンサーで聞きとったり、あるいはオペレーションKPIとの相関関係を探ることで、「ファンを創る」ための施策、あるいは「批判者を生まないためのインタフェース作り」に役立てることが可能だ。