2018年11月号 <インタビュー>

上田 恵陶奈 氏

AIで変わるのは現場仕事だけではない
「マネジメント改革」への備えが必要

野村総合研究所
コンサルティング事業本部
ICT・メディア産業コンサルティング部
上級コンサルタント
上田 恵陶奈 氏

「日本の労働人口の49%がAI(人工知能)やロボット等で代替可能」──2015年に発表された、野村総合研究所と英オックスフォード大学との共同研究の成果は、世間のAIへの関心を一気に高めた。同研究に携わった上田恵陶奈氏に、オフィスワーカーが身につけるべきスキルや、変化させるべき評価や管理のポイントを聞いた。

Profile

上田 恵陶奈 氏(Etona Ueda)

野村総合研究所 コンサルティング事業本部
ICT・メディア産業コンサルティング部 上級コンサルタント

東京大学法学部卒、英エセックス大学政治経済学修士。AI、決済、通商など、複数の事業領域にまたがる戦略の構築・実行支援、および政策立案に従事。AIと共存する未来を提言し、英オックスフォード大との共同研究を実施。金融法学会会員、情報ネットワーク法学会会員。主著に『誰が日本の労働力を支えるのか?』(共著)

──御社と英オックスフォード大学との共同研究で、約半分の仕事がAI(人工知能)やロボットに代替されるという予測が話題になりました。

上田 「今のAIでは半分しか代替されない」と訴えるつもりで発表したのですが、世間の反応は逆でした。「AIに仕事を奪われる」という声が非常に多く上がりましたが、それでも、残る仕事は何か、人間はどう変わるべきか、という議論に向かったので結果的には良かったと思います。ちなみに国際間比較では、日本人の楽観傾向が強く「単純労働から解放される」と前向きに捉えていたのが興味深い結果でした。確かに、AIは多くの仕事を楽にしてくれますが、決して万能ではありません。当面は、認識技術を中心に、限られた範囲でのみ実用化が進んでいく見込みです。例えば、チャットボットはQ(質問)に対して明確なA(回答)があるものしか対応できませんし、標準化が可能な問い合わせに絞ってチャットボットの業務フローを設計することも人にしかできません。AIやロボットは、これまで人間が行ってきた仕事の一部を代替するに過ぎず、またAIやロボットを管理するための新たな仕事を生み出します。

──AIは、すでにどの程度、仕事を変化させているのでしょう。

上田 建設業や製造業では、画像認識技術を使って品質チェックを行ったり、物流倉庫でも多くのロボットが活躍しています。莫大な投資が可能な一部の大手企業のみが導入しているわけではなく、例えば町のパン屋でも実用化されています。従来、個包装されない焼きたてのパンには値札を付けられないことから店員がすべてのパンの価格を覚える必要がありました。画像認識を使って購入金額を自動算出する仕組みによって、集計ミスを防ぐ他、店員の育成期間を短縮できるようになりました。このように、アイデア次第で、AIは業種業態を問わず、さまざまな用途で活用できます。AIができることは何か、自動化が向いている業務は何かを見極めるITのセンスと、何を自動化することでビジネスを変革できるかという発想力があれば、あらゆる職場でAI活用は進むでしょう。

 導入の壁があるとすれば、「今の業務は変えられない」という現場の思い込みです。AIに向いているものを切り出して自動化するということは、残った仕事を従来とは異なるやり方に変える必要が生じるということです。ときには、AIに合わせるという柔軟な発想が必要になります。

(聞き手・石川 ふみ)
続きは本誌をご覧ください