センター長! 大変です!! SVの事件簿 第8回

2026年5月号 <センター長! 大変です!! SVの事件簿>

寺下 薫

実践編

第8回

たまには古風な応対も乙なもの?!
「ありがとうでござる」

コンタクトセンターに自社の役員や他社のセンター関係者が見学にやってくることはよくあることです。迎える側は、見学者に対して、当然、対応レベルの高い優秀なオペレータの応対を聞かせようとするのですが、そこで事件が起きます。オペレータが大勢の来客に囲まれ、緊張のあまり発した言葉で、コンタクトセンター見学者一同が大爆笑してしまう事件です。

PROFILE
クリエイトキャリア 代表取締役社長
寺下 薫
外資系企業を経て、ヤフーやソフトバンクで長年、人材育成に携わる。問題解決養成塾「SV研究会」を立ち上げ、若手のSVを育成。現在は独立して、コンサルティングや研修、講演、執筆などを中心に活動中。2024年6月に「スーパーバイザーの教科書」を出版。

 コンタクトセンターには、他社の見学者など、いろいろな訪問があったりします。ある日、私が勤めるセンターに経営層が見学に来ました。その会社では、各地にあった電話受付部署を1カ所に統合して、コンタクトセンターを立ち上げたので、経営層も興味津々だったのです。

 立ち上げ当初は、トラブルも多かったため、見学できるような状態ではなかったのですが、センター運営が軌道に乗ってきた時に、経営層から見学について打診があったのです。月次の報告書でも、私たちは経営層に対して、センター訪問を呼びかけていました。経営層にコンタクトセンターに関心を持ってもらえれば、顧客の声を元に改善していくこともしやすくなっていきます。

 私は、ある日の朝、センターの所長に呼ばれました。そして、所長が私にこう言うのです。「寺ちゃん、話を聞いていると思うけど、今度、センターに役員が数名来ることになったんだ。オペレータさんの対応をモニタリングさせてほしいから、準備よろしくね!」

図 今月の教訓・その8
図 今月の教訓・その8

優秀なオペレータで準備万端

 こんな時、SVはどのように判断するかというと、当然、対応満足度が一番高いオペレータを準備することになります。間違っても新人オペレータの対応をモニタリングさせて、誤案内をしてしまったり、お客様からの質問に答えられなかったりしたら、所長の面目も丸潰れになってしまうからです。

 今回は、顧客満足度も高く、他のオペレータの見本になるような対応ができている優秀なオペレータのMさんにお願いすることにしました。依頼をすると、Mさんは、最初「えー、困るー」と言いつつ、センターを代表して役員の前でお客様応対するわけですから、ある意味、選ばれし人になった感じで、周りのオペレータからも「すごいね」とか「いいなー」とか言われることも多かったみたいで、選ばれたことを周りのオペレータに自慢げに話をしていました。

 そして、役員がセンター見学される日がやってきました。役員数名が来るので、センターも朝からちょっとピリピリしています。所長も「寺ちゃん、抜かりはないな」と遠くから目で合図してきます。

 私もバッチリですよ! と言わんばかりに、所長に「ええ、もちろん大丈夫ですとも。準備万端です!」と、こちらも目で合図しました。オペレータのMさんにも、「偉い人が来るけど、普段通りの対応で全然問題ないから!」と事前に打ち合わせ済みです。

すべてが順調に思えたが……

 そして、午後、役員数名がセンターに到着。スーツをビシッと着用した、いかにもお偉い人たちがゾロゾロとセンターにやってきました。オペレータも見慣れないのか、少しザワザワしています。早速、Mさんの席の真後ろに役員数人が立って、モニタリングをしています。

 かかってきた1本目の電話は、若干クレームでした。ヒヤヒヤして聞いていると、Mさんの対応でお客様の怒りのボルテージは徐々に下がっていくのが分かります。それはそのはずです。Mさんは、笑声(えごえ)ができる人で、なんとも心地よい対応なのです。

 ちなみに自然と笑声ができるオペレータは、あまりおらず、私のセンターでも200名いるオペレータの中でたった数名しかいませんでした。クレームだったにもかかわらず、Mさんは上手に対応し、最後には「あんたでよかったよ。ありがとう」とお客様からも感謝の言葉が出ました。そして、電話を最後に切ろうとしたところで大事件が起きます。

 すべての案内が済み、あとは「申込受付について、担当○○が承りました。お電話有難うございました」と電話を切ればいいだけです。もうそれだけでいい。それを言えば、すべてが終わるのです。これで、私のボーナスアップも確定します。

 ここまで何の問題もなく、むしろ重役も全員ニコニコしており、「コンタクトセンターを作って良かったな」と小さい声でコソコソ言い合っているのが私の耳にも聞こえてきました。しかし、最後に事件が待ってました。Mさんも偉い人に囲まれてお客様対応していたので、かなり緊張していたのでしょう。

Mさん:「申込受付について、担当○○が承りました」

 ここまでは良かったのです。問題は、その後です。

Mさん:「お電話、ありがとうでござる」

お客様:「フフフ」

役員:「(小さい声で)え、何時代?」

 お客様は、少し笑いながら切電。すべてが終わりました。失笑する役員たち。「言わんこっちゃない」と無言で、肘で私をつつく所長。まるでカオス。所長と私が役員の皆さんに謝罪と緊張しすぎてこんな対応になったことを説明したのは、言うまでもありません。私が期待していたボーナスもどこかにすっ飛んで行った出来事でした。

 どんな優秀なオペレータでも緊張すればミスを起こすのです。

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会員限定2026年04月20日 00時00分 公開

2026年04月20日 00時00分 更新

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