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──アルティウスリンク
消費生活のデジタルシフトや生成AIの台頭などにより、問い合わせチャネルが多様化している。アルティウスリンクは2018年より毎年、「企業とお客様とのコミュニケーション実態」調査を実施。消費者の問題(ペイン)発生時の行動実態やニーズについて聴取している。今回は、性別・年代別の行動特性やチャネルごとの利用意向まで調査。本稿では、とくに問題発生時の顧客行動とCS利用実態について紹介する。
アルティウスリンクは、企業と消費者の間におけるコミュニケーションの最新動向とニーズ把握を目的に、2018年より「企業とお客様とのコミュニケーション実態」調査を実施。今回は消費者の問題(ペイン)発生時の行動実態やニーズを性別・年代別に捉え、さらにカスタマーサポートの利用実態や不満・ストレスを感じた際の行動特性にまで踏み込んでいる。
調査対象は、過去1年以内に商品・サービス利用時に困りごとが「あった」「一度もなかった」と答えた、20〜79歳の男女(日本の人口動態にあわせてサンプル回収)。調査時期は2025年6月で、3000件の有効回答を得た。
図1は、直近1年以内に利用した商品・サービスについて問題があったかを聞いた結果だ。とくに不便はないトラブル・不明点については、「一度もなかった」という回答が53.3%で、消費者が感じる問題は比較的少ないといえる。一方、解決しないと利用できないケースでは、「一度もなかった」との回答は約4割にとどまり、6割弱はクリティカルな問題に直面していることが明らかになった。

この結果は、問題の発生頻度が低下している一方で、発生時の影響度は依然として高く、トラブルや不明点が生じた際には、消費者は大きな不便を経験していることを示している。トラブル発生時に迅速かつ的確に解決できるサポート手段が、企業には求められる。
図2は、困りごとがあった際の行動についての回答だ。問題に直面した際に自己解決を試みたかを聞いた結果、8割以上が「試みた」と回答、試みない層は全体の2割に満たない。一方、実際に問い合わせたかを聞くと、「問い合わせた」は全体の55.7%にとどまり、問題があっても問い合わせない人が半数程度いるとわかった。こうした人は、自己解決に成功したか、あるいはそもそも問い合わせを回避する傾向にあると推察される。企業は、消費者が自己解決できるよう、引き続き取扱説明書やFAQページなどの参照チャネルの拡充や精度向上に努める必要がありそうだ。

疑問点や不安点がある時の行動についても聴取。利用に大きな支障がない場合、7割以上が「調べたうえで問い合わせる」と回答。説明書・FAQの拡充、検索機能・チャットボットの設置など、自己解決手段の充実に努める必要があるといえる。一方、大変不便な時でも、6割が「自分でできる限り調べ、わからなければ問い合わせる」と回答。多くの消費者にとって問い合わせは、自己解決しなかった場合にやむを得ず選択する手段と位置づけられているとわかる。
また、大変不便な時は「できる限り調べ、わからなければあきらめる」割合が減り、「ざっと調べてから/とくに調べず問い合わせる」割合が増えている。自己解決を省略して問い合わせる割合が増加することから、情報収集の段階で挫折した、あるいは説明書・FAQでの解決が難しいと判断したと推察される。
年代別では20代の2割以上が、大変不便な時でも問い合わせをあきらめており、若年層ほど問題を解消しないまま放置する傾向が見られた。問題が未解決のままの消費者が一定数存在する実態を認識しておく必要がある。
図3は、問題発生時に最も利用したい解決方法を聞いた結果だ。全体の2割を占めたのは、「電話(コールセンター)」だ。

「ネット検索」や「公式サイトのFAQ」「商品ページ」「取扱説明書」などの参照チャネルを選択した消費者は半数以上にのぼる。一方、「Web問合せフォーム」「店員(店舗)に聞く」「メールで問合せる」といった電話以外の有人チャネルは、いずれも数%〜1割未満。能動型のチャネルは、参照チャネルと比べて利用意向の割合が低いといえる。
企業は、参照チャネルを好む消費者が容易に自己解決できるよう、サポートページへの導線の最適化やFAQ・商品ページの情報の充実に取り組む必要がある。また、参照チャネルだけでは解決できず、有人チャネルでの問い合わせを余儀なくされた場合は、顧客体験価値(CX)が低下するリスクも念頭に置き、サポート体制の充実を図ることが重要となる。
図4は、問題発生時の利用チャネルを年代別にまとめた結果だ。全体として「公式サイトなどの商品ページの参照」が63.3%、「FAQ/よくある問合せページの参照」も59.1%と、約6割の消費者が利用している。また、「ネットで検索をする」は全年代で4割以上と、日常的な自己解決手段だとわかる。

年代別に見ると、20〜50代は商品ページやFAQを参照する割合がとくに高く、60〜70代は取扱説明書や電話(コールセンター)が6割以上を占めている。多くの消費者が参照チャネルで自己解決を試みているが、参照先はある程度、年代で傾向が分かれている。
全年代で4割以上が「Web問合せフォーム」を選択。20〜30代では電話(コールセンター)を上回っている。チャットボット、有人チャット、SNSは全体で見ると少数派だが、20〜30代では比較的好まれるチャネルといえそうだ。
カスタマーサポートを利用した際、何らかの不満やストレスを感じた経験を聴取すると、8割以上が「ある」と回答した(図5)。この割合を性別で見ると、男性のほうが女性よりもやや高く、性別・年代別では50代男性(84.4%)、60代男性(84.1%)、70代男性(83.6%)の順で、一度でも「ある」と回答した割合が高い。ただし、いずれの属性においても75%以上が一度でも「ある」と回答しており、大きな差は見られない。カスタマーサポート利用時の不満・ストレスは性・年代を問わず高い割合で感じられているとわかる。

一方、不満・ストレスを感じたことがある人のうち、66.2%が「購入・利用を見合わせた」と回答。カスタマーサポートへの不満が、購入の取りやめという深刻な行動に直接影響を及ぼしている。また、「別の商品・サービスの購入を避けた」「利用頻度減らした」は合計15.3%、「不満はあるが継続利用した」は合計32.9%で、購入をやめはしないが不満を抱えている消費者は少なくないとわかる。
企業は、消費者がカスタマーサポートのどの場面で不満を感じているのかを把握し、離反防止の手立てを講じていく必要がある。
問い合わせ前に不満に感じた点を聞いた(図6)。5割以上が「FAQやチャットボットで解決方法が見つからない」と回答。次いで「問い合わせ方法/先がわかりにくい」「電話番号がみつからない、電話窓口がない」など、問い合わせたいのにできないシーンが大きな不満につながっている。問い合わせ先を隠す、導線をわかりにくくするなどの問い合わせ削減方法は消費者の不満に直結する恐れがあり、配慮ある設計が求められる。

最も不満に感じた点を聞いても、電話番号や問い合わせ先が不明瞭なことが合わせて4割弱と比較的高い割合を占める。また、FAQに起因する不満は合計35.4%と一定の割合を占めている。自己解決を試みても解決に至らない場面で利用者の不満が生じやすいとわかる。
企業はFAQにおける解決策の見つけやすさ、わかりやすさを一層意識しつつ、解決に至らない場合の問い合わせ窓口は明確に示す必要があるだろう。
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以上の報告から、カスタマーサポートでは、消費者の8割超が何らかの不満やストレスを感じた経験があると判明した。困りごとに直面し、解決を望んでいる人の多くは、企業が提供するサポートに十分な満足を得ているとはいえないのが実情だ。
問題に直面した際、消費者の多くが参照チャネルを利用する。このため、商品ページ・FAQ・チャットボットなどの自己解決手段の精度向上が必須だ。また、自己解決に至らなかった場合は、問い合わせ方法や連絡先をわかりやすく示し、消費者が迷うことなく利用できるよう配慮する必要がある。
消費者の特性を理解し、最適なコミュニケーション環境を構築することが重要だろう。
2025年11月20日 00時00分 公開
2025年11月20日 00時00分 更新