コラム
第160回
先日、スマホのICカードが突然使えなくなる事象に見舞われ、駅の改札から出られなくなった。駅員に相談したものの埒が明かず、やむを得ず出発駅を申告し、運賃を現金払いして改札から出ることができた。
問題を解消しなければ、翌日からの出張が不便になる。そう思った私は解決を急いだ。あいにく、既に夜の時間だったこともあり、FAQを検索し、じっくりかつ慎重に読み進めた。だが、回答文は30行以上あり、リンク先もあるから、膨大な量だ。注釈がいくつもあるので、あちらこちらを読むことになった。恐らく、いろいろな指摘を受けて、例外的な記述が継ぎ足されてきたのだろう。とても読みづらい文章になっているから時間がかかった。さらに、ケースによっては、AppleやGoogleなど他社への問い合わせを推奨される内容もあり、FAQを読んだだけでは解決しそうにない。こんな記述もあった。「夜間に操作した場合、再設定ができなくなる可能性がある」──。
FAQに書いてあることは正しいのかも知れない。でも、可能性と書かれても利用者に判断はできない。また、「再設定ができない」とは、ICカードの情報が二度と復活できない最悪の状態を指すのか、新規設定すれば復活できることを言っているのか分からない。この少しのニュアンスに不安があるため、人に尋ねたいが、電話番号が見当たらない。あちこち検索して、ようやく電話番号を見つけたものの、時間外だ。見知らぬ人のブログやYouTubeも閲覧してみたが、解決の糸口が見えない。いくつか試行錯誤を繰り返した結果、翌日の昼頃に復旧できた。ほっとしたが、相当なるエフォートだった。もう御免だ。
もし、詳しい人に尋ねることができたら、10分もかからずに復旧できたと思う。普段、自己解決を心がけている私であるが、各種サービスが混在し、何が起きているのか分かりづらい状況では、最後の砦として電話が大事であると時々感じる。そう言えば、交通機関だけでなく、クレジットカード会社も通信事業者も、電話をかけさせない仕組みが増えている。とくに日常生活に欠かせない金融や交通サービスにおいて、緊急性が高いときに人に頼れないのは実に残念である。その昔、サービス拡充のためにコールセンターが整備されていた時代は、分からないことがあるとすぐに電話ができて、すぐに教えてもらえた。慣れないサービスを利用するときも安心して使うことができた。デジタルチャネルが広がっている今、以前のように電話だけがコンタクトチャネルではないが、言葉で伝えたい状況はある。
企業の担当者は「マニュアルやFAQに書いてあるのに電話がかかってくる」と言う。だが、要領を得ないマニュアルや読んでも解釈に困るFAQは、書いていないのと同じである。決して好んで電話したい訳ではないのだが、電話せざるを得ない。自己解決やデジタルチャネルで解決できない事象や感情的なサポートが必要な場合に、電話は“最後の砦”である。記憶に長く残る顧客体験が重視されている今、電話の復活に期待したい。企業は「電話を減らす」のではなく、「本当に必要な場面で価値ある電話対応を提供する」方向へシフトしてほしい。
2025年07月20日 00時00分 公開
2025年07月20日 00時00分 更新