コラム
第157回
10年以上ぶりにソウルを訪れた。驚くほど地下鉄はキレイで、車両も新しい。電車内のデジタルサイネージには駅名とともに番号表記があるため、迷うことはない。東京メトロなどと同じだ。しかし、乗換駅に降りると少し状況は異なった。駅構内の路線案内図には、電車の方面がハングルと英語でしか書かれていないため、どちらの方向の電車に乗り換えるのか分かりづらい。また、街中の看板には英語もあるが、コンビニ店員やタクシー運転手には、昔と変わらず英語は通じない。日本と同様に、昔から韓国人は英語に抵抗があると思う。私がスマホの翻訳アプリに言葉を変換させて、スマホが韓国語を話しているにもかかわらず、私に直接韓国語で返事をしてくる。母国語で話すことで感情を伝えたいらしく、フレンドリーなのだろう。私が行った飲食店では最近日本で見られるQRコードによる注文システムにはなっていなかったが、キャッシュレスが浸透しているという情報を得ていた通り、すべての店でカード決済ができた。ところが、明洞のようなショッピング街では現金主義が残っていた。そのため、両替商がおり、値引き交渉も楽しめた。
ところで、皆さんは、韓国国内でGoogle Mapsが使い物にならないことをご存知だろうか。機能はするが、ルート検索するとバスによる乗り継ぎしか表示されない。観光地であれば、拡大して徒歩圏内を調べてルートは表示できるが、情報が少なく使い物にならない。Google Mapsが役に立たないのは国家安全保障上の制限というが、本当の理由は分からない。私は下調べで、そのことを分かっていたため、NAVERマップとk.rideという外国人向けタクシーアプリを日本でインストールしてから現地で利用した。
現地でこれらのアプリを利用してみると、検索機能で目的地がヒットしなかったり、ヒットしても候補表示がハングルのため区別がつかなかったりと、使いやすいとは言いがたい。マップでは地下鉄の乗り継ぎも検索できるが、運賃に関する情報は表示されないし、実際の駅構内表示がハングル表示ということもあり、結局、乗り継ぎで迷うことになった。しかし、これしかないので仕方なく使った。それでも位置情報は正確だから、それをベースにした機能には助けられた。タクシーは正確に私の居場所を把握して来てくれた。私の場合、普段は位置情報をオンにしないが、今回のような慣れない土地ではオンにしている。これらのアプリ提供会社は、外国人である私がたどった道や行ったレストランはすべて把握したことになる。インバウンドのマーケティングのためには有益な情報源になっているだろう。こう考えると外国のサービスに制限をかけ、自国のサービス利用を促すことで、国益につながることがよく分かる。
普段、私たちがGoogle Mapsを多用すれば、日本国民の行動履歴も訪日外国人の行先も、Googleが把握している。増え続ける訪日外国人にどのようなサービスを提供したらよいかは、日本の企業は知らないがGoogleでは分かっている。本来、日本各地の魅力を訪日外国人にアピールするのは日本企業の役割だ。その原点となる地図情報や移動サービスの提供も、日本企業に担ってほしい。
2025年04月20日 00時00分 公開
2025年04月20日 00時00分 更新