コラム
第164回
昨年から、健康維持のために少しずつゴルフに行く回数を増やしています。先日、久しぶりに、会員になっているコースに行ったところ、スマートフォンから予約ができるようになっていました。フロントでは、予約時に取得したQRコードを端末に読み込ませるだけで受け付けが済みます。精算も、フロントに設置された専用の機械に、スコアカードホルダーに付いているバーコードをかざすだけで、現金、クレジットカード、QRコード、交通系ICカードなどの支払い方法が選べます。ラウンド中も、ゴルフカートに備え付けられた機器を通じて、全員のスコアが確認できるなど便利です。こうした合理化が追求されたことなどから、ゴルフ場の方たちとの接点はほぼなくなりました。元々、練習場に行く感覚で行っていたため、大きな不満はありませんが、デジタル化される前を思い出すと物足りなさは感じます。これには、つい最近、旧友たちと回ったコースで、人による手厚いサポートを受けた背景があります。ただ、何度も行っているのに毎回、名前や住所などを受付で書かされたり、ラウンド後の精算も有人対応のため支払いの列に並ぶ点は、デジタル化をもう少し進めたほうが良いと感じます。
10月に当社が主催したイベントの基調講演者は、数年前にオープンしたゴルフ場の総支配人でした。ホスピタリティ評価が最も高いと話題のコースです。この方は、開業前からCOOとして運営の責任者を担い、サービスを設計しました。設計では2つの戦略として、「テクノロジーに頼れるところは頼りながら、人でしかてきないことに注力する」、「徹底したホスピタリティ教育をする」を立てました。また人材も、ゴルフ場の運営経験者ではなく、ホテルやレストランなどのコンシェルジュとして高い評価を得ている人たちを集めました。そして、人で対応すべきことを徹底的に分析したうえで、システムをイチから作りました。具体的には、受付でのチェックインやレストランでの注文は、予約時に顧客に渡してあるQRコードをかざすのみで、署名などは一切不要。プレー後の精算も、フロントで行う必要はなく、スマートフォンなどから行えます。一方で、クラブハウスの扉を開けて顧客の名前を呼んであいさつをする、寒い時にはカイロを渡す、レストランでは顧客の好みに合わせた食事を提供する、プレー後の顧客それぞれに声をかけるなどは、必ず人が行います。つまり、デジタルで行う内容と、人が対応する事柄を選択した結果が、その企業のアイデンティティになるのです。私が会員のコースは、デジタル化は進んでいる半面、人による接点を徹底的に削減しているため、会員であることにロイヤルティをさほど感じません。つまり、顧客に提供するサービスは、機能的なものと情緒的なものに分ける必要があるということです。機能的なものは徹底的にデジタル化しつつも、情緒的なものはあえて人がサービスを行い、ホスピタリティ教育を徹底することで、顧客はその企業にロイヤルティを感じファンになるのです。
2025年11月20日 00時00分 公開
2025年11月20日 00時00分 更新