実践編
第3回
ビジネスの現場におけるメンタル不調者は増加傾向にあり、ストレスフルといわれるコールセンターでも決して無視できない問題だ。前回は、コールセンターでメンタル不調をきたし休職・復職した2つのケースを紹介した。今回は、コールセンターだけでなく医療機関のケースも取り上げる。4つのケースから見えてくる、メンタル不調者の把握から休職・復職までのケア体制の課題を明示したい。
前回に引き続き今回は、コールセンター出身者で転職を考えつつも最終的に復職したケースと、コールセンターとは異なる業界出身者(医療機関)で最終的に転職したケースの2つを取り上げる。さらに、前回の2つのケースと合わせて計4つの事例から見えてくる、メンタルヘルス対策の課題を整理する。

「転職が頭によぎるも復職」
<休職前>
業務的には新規の立ち上げ案件のうえ、さまざまなタスクがCさんに偏るようになる。その頃から、発熱、不眠、集中力欠如、情緒不安定などの症状が現れるようになる。そもそもやりたい仕事と異なっていたこともあり、『異動願い』を申し入れたが実現せず、最終的には『退職願』を出すまでに至る。
これに対して、主に業務の安定運営を優先した『慰留』がされる。このあたりから先行きが見えなくなり、「このままではもたない」と感じたと本人は振り返っている。このような状況の中、出勤しなくても良い状況をつくらなければならいとメンタルクリニックの受診を決意する。「仕事は離れたほうがいいですね」と言われる。しかし、経済的な問題も感じていたため、「2週間に1回くらい受診して、様子を見ながら復職を判断しましょう」ということになる。
<休職中>
休職期間中は、ほとんど何もできず、前半はベッドから起き上がる元気もなく、何かをする気力がなかなか湧かなかったと振り返る。“このままで仕事に戻れるか?”という不安もあり『転職』の選択肢も徐々に強くなる。「定期的に連絡する」と休職前に言った上長からの連絡はほとんどない状態だった。
<復職後>
『転職』の選択肢を真剣に検討したものの、組織編成が変わる時期で異なる部門への復職が可能だったこともあり、『復職』の道を選択する。働き慣れた会社の安心感もあったと振り返っている。
「苦しんだが、最終的に転職」
<休職前>
Dさんは医療機関で働く看護師。働き方があわず、発熱、倦怠感、食欲不振、体重減少、生理不順など、心身ともに不調をきたしていた。とくに食欲不振による体重の減少は顕著になっていた。メンタルクリニックの受診は自ら決断し、“適応障害”という診断のもと休職に入る。主治医からは、「休職ではなくて退職したほうが良い」とまで言われるほど、心身は衰弱していた。
<休職中>
休職期間は約3カ月であるが、『復職』に対して職場からの前向きなアプローチはほとんどなく、むしろ、退職するか復職するか厳しく迫られるほどであった。心身が衰弱する中で、「看護師の資格を活かした職業に就いていたい」という思いが強く、迷いながらも『復職』を選択する。
<復職後>
復職後は、病院側の強い意向もあり異動となった。「〇〇部署の人が足りないので来てください」というヘルプ対応が毎日のようにあり、本来は小児担当の看護師であるにもかかわらず、成人を診ることも度々あった。半年ほど経過すると心身ともに限界になり、離職(転職)する結果となった。転職後は看護師の資格がベースにあるので医療脱毛の施術師になった。現在は、働く環境が以前に比べて改善され、満足度はとても高い状態で過ごすことができている。
ケースから見えてきた4つの課題
以上のケース(図1)から主に4つの課題が見えてきているように思う。①休職するまでの期間が相当あるにもかかわらず本人の異変に誰も気付いていない、②本人が相談をするのは業務の管理者であることが多いにもかかわらず、メンタルヘルスに関する教育が十分ではない、③人事の意思決定を行うときに業務や本人のヒアリングが十分に行えていない、④厚生労働省の「職場復帰支援の手引き」にあるステップ(図2)が実行されることが少ない──などである。

◇◇◇
次回は、今回整理した課題に対する対応策を検討しつつ、リワーク(復職)を選択する場合にはどのような社会資源としての支援サービスがあるのかにフォーカスする。それぞれのメリット・デメリットを整理するとともに、サービス提供者の視点から企業におけるメンタルヘルスに関する現状と課題を明らかにする。
2025年10月20日 00時00分 公開
2025年10月20日 00時00分 更新