メンタル不調者を戦力にする “リワーク支援”のススメ 第2回

2025年10月号 <メンタル不調者を戦力にする “リワーク支援”のススメ>

加藤 菜々香/川野克俊

実践編

第2回

休職・復職支援は容易ではない
事例にみる「メンタルケア体制」の課題(前編)

現在、ビジネスの現場でメンタル不調に見舞われるケースは多く、コールセンターも決して例外ではない。むしろ、可能性は高いと考えられる。今回は、コールセンターの現場でメンタル不調を経験し、休職・復職をした当事者のケースを取り上げ、復職までのプロセスを振り返る。当事者視点で、コールセンター業界におけるメンタルヘルス不調者のケア体制の現状と課題を明らかにする。

PROFILE
日本就労移行支援センター
(本社:赤坂、代表:高橋慶治)
加藤 菜々香(本社勤務:マネージャ)
復職を含む就労移行支援全般の管理・統括
川野克俊(本厚木駅前校勤務:支援員)
過去CC業界でCX推進。現在は就労支援員

 前回は、ビジネスの現場ではいかにメンタル不調者が多く、とくにコールセンター業界においてその傾向が強いのではないかという問題提起をさせていただいた。今回から2回に分けて、合計4ケースを取り上げ、休職・復職/転職を経験した当事者の経緯を振り返ることで、この問題をさらに深掘りしてみたい。

 今回は幸いにも復職しているケースが多いものの、環境が整わず、あるいは体調を著しく崩して離職せざるを得なかった方も少なくないはずである。

図 休職・復職/転職に至った4つのケース
図 休職・復職/転職に至った4つのケース
ケース1
Aさん/センター業界

「酷い鬱ながらも復職」

<休職前>
 Aさんは、某コールセンターの当該案件に責任者として着任。クライアントや業務上の部下との間でKPI遵守などさまざまな重圧に直面し、目眩、頭痛、不眠、倦怠感、自信喪失などの症状に見舞われる。Aさんはこのような症状を抱えながらも6カ月ほど勤務を続ける。本人の異変を察知したのは奥さんで、朝、起きあがれなくなっていたり、表情が暗いことに気づき、メンタルクリニックの受診を勧める。「妻の気づきがなかったら、休職が長引いていたかもしれない」と本人は振り返っている。

<休職中>
 Aさんが休職していた最初の2週間は状態が酷く、自宅の廊下で倒れたまま家族の帰りを待っていたこともあったほどである。時間の経過とともに、徐々に仕事のことを忘れるようになり、近所に散歩に出かけたり、好きなゲームを1日中やって過ごす。2カ月目は奥さんが休みをとってくれ、2人で旅行に出かけて時間を過ごすようになる。家族はとてもよい理解者だったと感謝しているものの、同時に強い孤独も感じており、なかなかその時間には慣れることができなかったと本人は振り返っている。主治医からは、もう1〜2カ月休んだほうがよいと言われていたものの、“社会人として働いていないと……”という焦りもあり、2カ月での復帰を決意する。

<復職後>
 復職は新設の部門かつ受け入れに積極的だったこともあり、休職前とは異なる部門に配属される。業務のマネージャーや本社の支援が厚くなり、これまでなかなかなかった上長との面談がされるようになる。ただし、月1回かつ30分程度の面談で、メンタルなどの体調面というよりは、仕事の計画や目標に対する進捗の報告、その状況に関するフィードバックがメインとなる。メンタル不調の際の相談窓口に関する情報は提供されていたものの、本人がメンタル不調をきたした時に思い出すことはなかった。

ケース2
Bさん/センター業界

「上司に恵まれ復職」

<休職前>
 Bさんは、その能力を買われ、コールセンターの運営部門から支援系の部門に異動になる。慣れない仕事でモヤモヤが長く続く(約2年間)。そんな中、担当していた案件が忙しくなり残業が増え、タスクをこなすことができずに抱え込むようになる。労働時間が長くなり、家に帰ると夜中の1時、2時で、日常的な睡眠不足になる。食欲も落ち、不安感も頭をもたげてくる。そんな状況でも本人は比較的冷静で、仕事が一区切りついたら「休職」を申し入れようと、メンタルクリニックを受診し、診断書を入手する。

<休職中>
 休職期間中、Bさんは働いていた頃の活動サイクルは崩さないよう早寝早起きをする。朝はジムに通い、日中はリラックスして配信サービスで映画を観たり、ゲームをしたり、自分の好きなことをするように心掛ける。その間、上長との面談は定期的(月1回)に行われ、主に体調をたずねる内容で、もう1カ月休んだほうがいい、もう1カ月という感じで延長されていく。復帰が近くなると、上長との面談では、復職に向けての計画が含まれるようになる。

<復職後>
 結果として6カ月間になった休職期間を経て、休職前の元の部門に復職する。復帰する際には、残業時間の削減、タスクの軽減を実現する計画がしっかりあったと振り返る。

“発症予防”にはなっていない

 いずれのケースも復職はできているものの、メンタルクリニック受診までの期間が相当あり、その間の変化は見過ごされている。また、本社としての支援はほとんど見受けられない。本来であれば発症を予防(一次予防)したいはずであるが、そもそも十分に機能していないというのが現状ではないだろうか。

 次回、事例の後半では、コールセンター出身者の3つ目のケースと、異業種出身者(医療機関)で最終的に転職したケースを取り上げる。さらに、今回取り上げた事例と合わせ、4つのケースを通したときに見えてくる、メンタルヘルス対策としての課題を整理しつつ、解決に向けた糸口を探る。

2025年09月20日 00時00分 公開

2025年09月20日 00時00分 更新

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