コールセンター現場力向上の鍵 即実践できる採用・定着マネジメントの考え方 第4回

2025年10月号 <コールセンター現場力向上の鍵 即実践できる採用・定着マネジメントの考え方>

栗栖俊輔

実践編

第4回

「感情報酬」で支える職場づくり
メンバーが定着するための土台の築き方

コールセンターにおけるマネジメントのあり方を、「採用」「定着」「育成」の3段階に分けて解説している本連載。今回は、オンボーディング後の定着の段階において、メンバーが職場に根づき、主体的に行動し続けるためのマネジメントの要点を説明する。「ポイントは働く意味を感じる」「自分の頑張りが誰かに届いている」といった感情の満足を得る機会を創る「感情報酬」の取り入れ方だ。

PROFILE
リンクアンドモチベーション
EMカンパニー カンパニー長
栗栖俊輔
一貫して採用領域のコンサルティング・アウトソーシングに従事。近年は採用および入社後の定着・活躍支援を行うオンボーディング事業の責任者を経て、2024年より、採用コンサルティング事業の責任者に就任。

 「顔の見えない相手と話し続けていると、どっと疲れてしまう」「クレーム対応が続くと、気持ちが沈んでしまう」──いずれも、コールセンターでよく耳にする。相手の表情が見えない状態でのコミュニケーションが求められるコールセンターの応対業務は、想像以上に神経をすり減らす。限られた時間内に正確な応対が求められるというプレッシャーも重なり、心身には確実にストレスが蓄積されていく。とくに新しく加わったメンバーは、こうした業務の特性に適応できず、働く意味を感じられなくなると、早々に離職する危険性がある。実際に、求人情報サイトを運営するビズヒッツが実施した調査でも、「コールセンターから異職種に転職した理由」の第1位は「ストレスが多い」であった。ストレスを抱えながらも、感情のやり場や報われた実感が乏しい環境では、働き続けることそのものが大きな負担となる。

定着を促す
4つの「感情報酬」

 新入社員が定着し、前向きに働き続けるためには、「働く意味を感じる」「自分の頑張りが誰かに届いている」といった感情面での充足が欠かせない。

 そこで、マネジメントに取り入れたいのが「感情報酬」という考え方だ。感情報酬とは、給与などの金銭的な報酬とは異なり、日々のやり取りや人間関係の中で得られる感情的な満足感のことを言う。

 たとえば、「自分の仕事が誰かの役に立っている」「誰かが自分の努力を見てくれている」といった実感は、感情報酬に該当する。このような感情報酬を得ることで、新入社員は組織への愛着を深め、主体的に業務に取り組むようになっていく。

 感情報酬は「貢献欲求」「親和欲求」「承認欲求」「成長欲求」の4つに分類できる()。まずは貢献欲求と親和欲求を満たし、チームワークの土台を築くことが重要だ。そのうえで、承認欲求と成長欲求を育てていくことで、メンバーはより主体的に職場で力を発揮できるようになる。

図 感情報酬の4つの欲求
図 感情報酬の4つの欲求

2つの欲求が築く
チームワークの土台

 4つの感情報酬のうち、組織の土台を支える要素としてとくに重要なのが「貢献欲求」と「親和欲求」だ。

①貢献欲求

 貢献欲求とは、「誰かの役に立ちたい」「自分の仕事が組織に貢献していると実感したい」といった欲求のこと。貢献欲求を満たすには、「直接承認」に加えて、「間接承認」を行うのが効果的だ。

 直接承認とは、「ありがとう、君のおかげで助かったよ」というように、身近なメンバーから直接感謝や評価を受けることである。一方、間接承認とは「△△部の○□さんが、君の働きを褒めていたよ」というように、上司などを介して他者の評価が伝えられることを言う。間接承認があることで、本人はより「自分の働きが周囲に届いている」と実感しやすくなる。

 貢献欲求を満たすうえで効果的な施策の1つが、「サンクスカード」である。日々の業務で感じた感謝の気持ちをカードに記し、メンバー同士で送り合うこの仕組みは、貢献を可視化し、共有する役割を果たす。チーム内で導入すれば、直接承認の機会となり、感謝の気持ちをダイレクトに伝える風土が生まれる。さらに自チーム内だけでなく、部署で導入することで、「○□さんの対応、別のチームでも話題になっていたよ」といった、業務で関わる機会が少ない人からの間接承認も自然と生まれるようになる。

 サンクスカードを、直接・間接の両方の承認を支える仕組みとして機能させることができれば、貢献欲求の充足につながるはずだ。

②親和欲求

 親和欲求とは、「周囲と良好な人間関係を築きたい」という欲求のことである。表面的な雑談だけでは満たされにくいため、管理職には、メンバーが本音を共有できる対話の場を設けることが求められる。

 その一例が「振り返り会」だ。これは、月1回程度のペースでチーム内、あるいはチームを越えて集まり、「最近良かったこと」や「改善したいこと」について、感情を交えながら振り返る場である。こうした場を設けることで、日常の雑談では生まれにくい気づきや本音が引き出される。「あの人も同じように感じていたのか」「自分にはなかった視点だな」といった気づきが得られれば、相互理解や共感が深まる。その結果、「困ったときは○□さんに相談しよう」「問題が起きたらチームで解決しよう」といった協力意識が育まれ、組織としての一体感が醸成されていく。

 新しいメンバーを「早く一人前にしたい」と思うのは当然だ。一方で、チームとのつながりや自身の役割の意義を実感できていなければ、職場に定着し、力を発揮するのは難しい。まずは、日常的に感謝の言葉を交わすこと、そして月に1回でも感情を共有できる場を設けることを心がけたい。こうした積み重ねこそが、貢献欲求や親和欲求を満たす土壌となり、定着率の向上や職場文化の改善へとつながっていく。

 次回は、メンバーの前向きな挑戦とキャリア形成を支えるうえで欠かせない「承認欲求」と「成長欲求」の満たし方について解説する。

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会員限定2025年09月20日 00時00分 公開

2025年09月20日 00時00分 更新

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