実践編
第10回
コンタクトセンター業界でも、法令遵守を徹底できないことで、不祥事が発生しています。ルール違反が発生すると、やってしまった本人はもちろんのこと、コンタクトセンターにも、また、会社にも多大な影響が出ます。そうならないためには、何を心がけるべきなのでしょうか。今回は、コンプライアンス違反が発生する背景や、法令遵守の意識の高さの重要性について解説します。
最近、企業や自治体から、コンプライアンスに関する研修の問い合わせや相談が多くなっています。コンタクトセンターでも悪さをする人は結構いて、「コンタクトセンター コンプライアンス違反」などのキーワードでネット検索するだけでも、結構な数のニュース記事が出てきます。
これまでの大きな事件としては、コロナ禍の時の自治体への過大請求、顧客情報漏洩、コンタクトセンターの実績数値の改ざんなど。さまざまな不正が発生しており、枚挙にいとまがありません。
不正を行うにあたっては、いろいろな動機があります。
・給料が安い。もっとお金が欲しい
・有名芸能人から問い合わせが来たので、友達にも教えたいから携帯番号をメモしておきたい
・会社に不満があり、報復してやろうと思っている
・高い目標達成が求められていて、プレッシャーを感じている
・他の人が不正をやっているのを見ていて、多少なら許されると思っている
・外部から不正を誘われ、つい手を出してしまう
──などです。私は、人間は、不正をやるかどうかは紙一重だと思っています。ちょっとした気の緩みで、人は犯罪に手を染めてしまうのです。だからこそ、SVは日頃から自分自身を律することが必要になりますし、コンタクトセンターに従事する人に啓発していく必要がある訳です。
私は、コンタクトセンターで起こる不正には、次の6つの背景があると思っています。
①顧客や企業の重要情報にアクセスしやすい環境がある
②管理・監督体制が機能しておらず、コンプライアンス教育が不足している
③人材流動性が高く、モチベーション管理が難しい
④ストレスが高い環境で心理的な負担がある
⑤組織文化・倫理観が低下している
⑥外部からの働きかけや誘惑に負けている
これらを防止するための取り組みがコンタクトセンターに必要だと思っています。
不正がバレると、当然のことながら、企業は致命的な損害を被ることになります。ニュースやネットでひとたび取り上げられれば、炎上したりしますし、当然のことながら、大量のクレームの電話がコンタクトセンターにかかってきます。会社のブランド価値が毀損してしまえば、株価も大きく下がったりするわけです。
少し前にあったアウトソーサーによる顧客情報漏洩事件は、記憶に新しいでしょう。やった本人は会社をクビになりますし、場合によっては逮捕されたり、会社から多額の損害賠償を求められたりと、良いことは何一つありません。
また、会社をクビになったりした場合は、再就職もほとんどできません。なぜなら、転職する時、履歴書を書きますよね。その履歴書には何が書かれていますか? そう、学歴や職歴など書く欄があり、最後に賞罰を書く欄があります。もし不正を行い、懲戒免職になった場合は、この賞罰欄に記載する必要が出てくるのです。そんなの別に隠して入社すればいいじゃん、と思うかもしれませんが、それを黙って入社したことがバレると、また新しい会社でも懲戒免職になってしまいます。
私は、過去、懲戒免職になった人を何度か見たことがありますが、みんな、再就職に相当苦労しています。1年近く就職先が決まらなかった人もいるのです。今は、企業側でもネットで名前やSNSから素性を容易に調べることができます。もう、悪いことは隠せない時代なのです。
つい先日も、ある人事の方から相談を受けました。
「うちで不正が発生したんです。信頼していたある中堅社員が、相手先企業に通常より高い金額で支払い、相手先からキックバックを受けていました」
不正は1回ではなく、過去に複数回やっており、不正で得ていた金額は数百万円近くになっていました。経理の人が「あれ? この請求金額、高すぎる。おかしいな」と気づいて、事件が発覚したのです。当然のことながら、やってしまった社員は懲戒免職になりました。そして、不正で得ていた金額も賠償する羽目になったのです。
コンタクトセンターを運営していると、SVはさまざまなプレッシャーや誘惑に遭遇する場面があります。でも、それらに負けてはいけません。ルール遵守に関する一歩高い意識を持って、センター運用をしていくことです。センターに従事するオペレータにもルール遵守のため、定期的に啓発していく必要があります。まずは図にあるチェックリストでチェックしてみてください。不正はいつかバレるのですから。
2025年04月20日 00時00分 公開
2025年04月20日 00時00分 更新