ロープレ/評価/フィードバックを自動化 オペレータ育成の『DX』

2024年9月号 <特集>

特集

ロープレ/評価/フィードバックを自動化
オペレータ育成の『DX』

Part.1 <現状と課題>

初期研修、OJT、評価&指導──
「SV業務の自動化」がもたらすメリット

人手不足が深刻なのは、オペレータだけではない。SVやトレーナーもまた不足している。結果、フォローが行き渡らずオペレータが離職、さらなる人手不足に陥る悪循環が発生。これを断ち切るためには、人材育成や応対品質の評価・指導といった、SV業務の大半を抜本的に効率化していく必要がある。生成AIこそ、その救世主というべき存在だ。

 AI活用が拡がり、顧客対応業務の自動化が進んでいる。これに伴い、有人対応の範囲は、複雑かつ高度な問い合わせに集約されつつある。しかし、採用難もあって「優秀な人材を選ぶ」ことは事実上、不可能に近い。入社後に鍛えるしかないのが現状で、初期教育に要する業務負荷は高まる一方だ。教育を施す側、受ける側の双方の負荷を軽減する工夫が欠かせない。生成AIはDXを加速させる起爆剤となり、知識の習得から評価、指導までAI活用が進みつつある(図1)。本誌では、(1)初期研修、(2)OJT、(3)評価とフィードバック、(4)キャリアデザインについて活用できるITと運用のポイントを検証する。

図1 オペレータ育成のDX
図1 オペレータ育成のDX

Part.2 <ケーススタディ>

「困ったときの救世主」「練習相手」を代替
AIが新人を育て定着を促す4社の取り組み

生成AIの本格活用が進んでいる。メールやチャットの返信文の自動作成、ロールプレイングの相手をAIが担うなど、さまざまなソリューションが開発されている。これらは、人手不足を乗り切る救世主として期待が高まりつつある。オペレータは膨大な業務知識を詰め込まずとも顧客対応できるようになり、新人の早期育成を実現。業務負荷が軽減されることで、SVやトレーナーもメンタルケアをはじめきめ細かいマネジメントが可能になりそうだ。

 人手不足は、オペレータだけではなくSVやトレーナーも同様だ。しかし、「手が回らない」といって新人教育をおろそかにすれば離職を招き、さらなる人手不足に陥る。この悪循環を断つには、SV/トレーナーの業務負荷軽減を図る以外にない。

 SV/トレーナーがもっとも労力を割いている、新人のフォローや指導にAIを活用、成果を創出している4社の取り組みを検証する。

CASE STUDY 1
三井住友カード

文章作成スキルは研修不要!?
「読み書き」は生成AIにお任せ

 三井住友カードは、2024年6月、AIベンダーのELYZAが開発したLLM実用化プラットフォーム「ELYZA App Platform」をベースに、メール返信業務の一部を自動化(図2)。生成AIによって文章を“読む”スキルと“書く”スキルの両方をカバーする。これにより、オペレータのスキルに依存せず、一定レベルの対応が可能になった。今後は、チャット対応業務への適用も検討している。生成AIが作成した文章を、ほぼそのまま送信できるレベルまで精度を高められれば、リアルタイムのやり取りであるチャットでも活用できるはずだ。

図2 メールの問い合わせ業務に生成AIを活用
図2 メールの問い合わせ業務に生成AIを活用
CASE STUDY 2
TENTIAL

テキスト対応を生成AIが強力支援
OJT研修期間を大幅短縮

 リカバリーウェア「BAKUNE」シリーズを主力製品としてEC事業を展開するTENTIAL。健康志向の高まりを受け、売り上げは好調だ。急拡大するCS部では新人教育が課題となっていた。そこで、AIを活用した生産性向上を本格検討。2023年9月、カラクリのチャット・メール返信対応支援ツール「KARAKURI assist」を導入した(図3)。同ツールは、回答の定型文やナレッジを基に自動で返信文を作成するもの。オペレータは、生成された文章に誤りがないかを確認、送信するだけで、新人スタッフでも最低限の商品知識があれば対応が可能になる。導入後、新人スタッフのOJT期間は、従来の45日間から15日間に短縮されたほか、スペルミスなどの課題も解消。当初、新人スタッフの誤字脱字による差し戻しが5回に1回の頻度で発生していたが、KARAKURI assist導入以降は差し戻し率も1%以下まで減少した。

図3 「KARAKURI assist」のオペレーション画面
図3 「KARAKURI assist」のオペレーション画面
CASE STUDY 3
富士通コミュニケーションサービス

「新人のOJT」という“魔の期間”を支援
自己学習の確立で研修工数を7割削減

 BPOベンダーの富士通コミュニケーションサービスは、コロナ禍を機に、これまで横浜と九州の2拠点を中心に全国で実施してきた対面型の集合研修を、動画を活用したオンライン研修にシフト。また、2022年度より自己学習を推進するためeラーニングコンテンツ を導入。各動画はおおむね1時間以内に設定し、コンテンツは90カテゴリにおよぶ。2024年時点で延べ5558人のスタッフが受講し、受講者ごとの動画の視聴状況を管理者側で確認することもできる。

 座学研修の後は、OJTを実施。同社は生成AIを活用したロールプレイングツールを独自開発。「Azure OpenAI Service」の生成AI「GPT-3.5」および「GPT-4」をベースに、既存のオペレータ向けFAQや各種製品マニュアルを教師データとしてチューニング。ロールプレイングではAIが顧客役となり、自動音声で質問。新人スタッフが回答し、その内容を自動評価する。発話内容はテキスト変換され、画面上で確認可能だ(図4)。

図4 ロールプレイングの画面イメージ
図4 ロールプレイングの画面イメージ
CASE STUDY 4
テレパフォーマンス

個々のパフォーマンスや課題を可視化
人材管理プラットフォームで成長を支援

 外資系BPOベンダーのテレパフォーマンスは、全体の97%が在宅勤務で運営しており、採用から教育、オペレーション業務まですべて独自の人材管理プラットフォームで管理している。採用はリモートで行い、タイピングスキルやテクニカル面の知識などをテストでチェック。教育は、管理者が設定した10種類のゲーム形式のコンテンツを、受講者が自分のペースで楽しみながら学べるeラーニングツール「TP Gamification」を活用。動画研修と生成AIを活用したロールプレイング、習熟度を測ることができるオンラインテストを実装したセルフラーニングツール「TP Simulation」は、新人が1人でOJTを実践できる。オペレーション支援ツール「Digital Floor Walker」は、まさにSVを代替するAIソリューションだ(図5)。応対に必要な情報をタイミングよく示し、「お詫びを伝えなさい」など行うべきアクションも提示する。

図5 Teleperformance研修~導入期サポートツール
図5 Teleperformance研修~導入期サポートツール
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2024年08月20日 00時00分 公開

2024年08月20日 00時00分 更新

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