いまやさまざまな業種業態で事業拡大のキーファクターとされつつあるカスタマーサクセス。しかし、顧客への対応期間の長期化に加え、解約、アップセルなど対応範囲も広い。CS人材はさまざまなスキルが求められ、多くの企業が人手不足に直面している。第3回目となる今回は、事業拡大のためにBPOを有効活用する方法と具体的な業務について解説する。
前回は、カスタマーサクセス業務をBPOベンダーへ発注するための必須項目について解説した。今回はBPOベンダーとの最適なコミュニケーション法について解説する。
自社採用した人材に対しては、入社初日の受け入れから3カ月程度のオンボーディングプログラム(研修カリキュラム)を用意している企業が多いはずだ。しかしBPOベンダーに対しては、適切な距離感がわからなかったり、契約直後に成果を求めるがゆえに、さして介入せず“見極めモード”になる企業が多い。しかしこれではBPOベンダーが成果を出すのは難しい。とくに初期の段階では、委託元企業の協力がなければ必要な情報がインプットできず、成果も出せない。BPOベンダーのオンボーディングをスピーディに行うことは、パフォーマンスを発揮する速度にも角度にも影響するため、委託企業にとって重要なことだ。
差が出るポイントは、BPOベンダーとのコミュニケーションだ。円滑に進めるために考慮すべきは、最低限3点ある(図1参照)
・現状の課題に基づく業務範囲と期待値のすり合わせ
・進捗と成果に対しての定期的なフィードバック
・業務範囲の拡大提案と柔軟な調整
しかし、これは理解できていても実現は容易ではない。例えば、期待値のすり合わせが甘く、定期的なフィードバックをしなかったことで失敗してしまった事例がある。
これは、サービス導入後の顧客対応をハイタッチで支援してほしいというSaaS企業からのリクエストで、顧客が求める成果は「短期間でのエクスパンション(売上増など)」だった。エクスパンションは通常、オンボーディングやアダプションが実現できた「その先の成果」だが、委託元はオンボーディングも整っていない状態でいきなりエクスパンションによるアップセルを求めていた。そのような状態でエクスパンションを行うのは、適切なステップを踏んでいないため実現が困難で再現性も低いため、カスタマーサクセスとして業務フローを固めることができず、成果には結びつけにくい。
結果的にはオンボーディングから完了定義とアクション検討を行ったため、顧客の期待より3カ月以上設計に時間がかかったことと、成果が出るまでには更に3カ月以上の期間を要した。
まずは、委託開始前の段階で、委託企業側での現状の業務フローと課題の整理をすることが大前提であり、そのうえで求める成果に結びつくロードマップを作っていくコミュニケーションが必要だ。こうしたケースはカスタマーサクセスの領域ではよく発生している。他の領域のBPOと比べると、カスタマーサクセスはBPOベンダー自体が少なく、委託企業もどのようなコミュニケーションを取るべきかが不明瞭で、ベンダーもコントロールできていないケースが多い。
具体的なOK/NGコミュニケーションをまとめた(図2参照)。ポイントは「情報の非対称性を埋める歩み寄り」「定期的なフィードバックを可能にするコミュニケーション設計」「業務支援範囲の拡張性を見極める」の3点である。詳細を確認し、ぜひBPOベンダーとのコミュニケーションを成功させ、貴社事業拡大の一助にしてほしい。以上がカスタマーサクセス分野のBPOベンダーとの最適なコミュニケーションである。次回はBPOベンダーに依頼すべき業務3選について解説する。
(月刊「コールセンタージャパン」2024年9月号 掲載)
2024年08月20日 00時00分 公開
2024年08月20日 00時00分 更新