本誌記事 ケーススタディ ワオ・コーポレーション

ワオ・コーポレーション

エンジニアからセールスまで
顧客対応を「全社」で行うCX効果

教育事業を展開するワオ・コーポレーションは、積極的かつ寄り添ったサポートとVOC活用によって、長期的な顧客関係構築を目指し、LTVの向上を図っている。同社の取り組みを支えるのが、ヌーラボのプロジェクト・タスク管理ツール「Backlog」だ。応対履歴をすべてBacklogに集約することで一次対応完了率が約80%となり、FAQのメンテナンス精度も向上、自己解決の促進も実現している。

セールスセクション リーダー 小林大陸氏
セールスセクション リーダー 小林大陸氏

 ワオ・コーポレーション(大阪市北区、津江芳典 代表取締役社長)は、学習塾やオンライン個別指導サービスなど教育事業を展開している。0歳から12歳までを対象に年齢別の知育アプリを展開する「ワオっち!」シリーズは、20種類以上をリリース。シリーズ累計2000万ダウンロードに達する。

 セールスセクション リーダーの小林大陸氏は、「アプリは、弊社とユーザーのファーストタッチポイントです。ユーザーが成長した時、弊社が運営する塾への通学を検討いただけるよう、ポジティブな体験を提供し、信頼関係を醸成するコミュニケーションを目指しています」と説明。サポートをはじめ、ユーザーとのコミュニケーションは、エンジニアやデザイナー、セールスといった職種の開発チームに所属するメンバーが直接行う。

 問い合わせは、アプリ内のメールフォームで受け付け、まずアルバイトのスタッフ(1名)が一次対応し、社員のエンジニアやセールスが二次対応を行う。フォームには、「間違って課金してしまったので返金してほしい」といった問い合わせや、新規コンテンツの要望などさまざまな声が集まる。アプリストアのレビューにも同様の投稿があるため、返信が必要なものは返し、意見や要望はVOC(顧客の声)として収集、開発に活かしている。

 「サポートは、お困りごとを解決するだけではなく、ユーザーを知ることも目的に行っています。問い合わせ内容は、すべて全社員が目を通せる環境にあるため、機能拡張や新たなアプリの開発のヒントにもなっています。また、内容や要望によって、お薦めのアプリをご紹介するなどエンゲージメント強化にもつなげています」(小林氏)

 アプリの収益モデルは、ユーザーからのアプリ内課金と、協賛企業からの協賛金が主だ。ビジネス指標は、ダウンロード数やアクティブユーザー数、インストールして4週間後の継続率、1カ月あたりの起動回数など。できるだけ長く利用を継続してもらえるよう積極的にコミュニケーションを図る。

応対履歴を一元管理
業務の標準化を実現

 ユーザーとのコミュニケーションは従来、メンバー各自の記憶や経験に頼って運用してきたため、対応品質/スピードのバラつきに課題があった。

 小林氏は、「チームのメンバーが増えたことでタスクの進捗確認や情報共有も必要になっていました」と振り返る。

 ナレッジ共有と負荷軽減を目的に、従来からアプリ開発に利用してきたヌーラボ(福岡県福岡市、橋本正徳代表)のプロジェクト・タスク管理ツール「Backlog」をサポートでも活用、情報の一元化と業務の標準化を図った。

 「応対履歴をはじめ、すべての業務をBacklog上で共有しています。フルリモートという環境もあり、1対1でのコミュニケーションではなく開かれた場で情報共有することを重視しています。これにより、新人メンバーも情報をキャッチアップしやすくなりました」(小林氏)

 顧客とのやり取りを応対者以外の社員もリアルタイムで把握できることから、迅速かつヌケモレのないフォローも実現()。テンプレートをベースにした運用も検討したが、「1日数件の問い合わせのために、継続的にメンテナンスするのは割にあわない」(小林氏)といい、Backlogに蓄積した応対履歴をそのままナレッジとする運用に落ち着いた。Backlogを参照することで、約8割が一次対応で完了するという。

図 迅速な指示やフォローを受けられる仕組み
図 迅速な指示やフォローを受けられる仕組み

 Backlog上にナレッジを集約することで、問い合わせの傾向分析が容易になったことから、FAQのメンテナンスの精度も向上した。

 小林氏は、「アクティブユーザーの増加と比較し、問い合わせ件数が増えていないのは、FAQによる自己解決率が向上している証とみています」と分析する。

 Backlogは、APIを開放していることから、同社では2つの自動化システムを開発している。

 ひとつは、アプリストアのレビューを自動でスクロールしBacklogに取り込み、ヌケモレのない対応を実現している。

 「アプリが20種類以上あるため、すべてを目検でチェックするのは大変な労力がかかります。自動化することで、対応可能件数は5倍に増え、結果、アプリに対する評価も向上しました」(小林氏)

 もうひとつの自動化が、問い合わせ内容のタグ付けだ。どのアプリ(20種以上)に対する、どのような内容(17カテゴリ)の問い合わせなのか、自動でタグをつけることで、管理の効率化と、検索精度の向上を実現した。

顧客を知りエンゲージメント強化
知見をすそ野拡大につなげる

 今後は、アプリの認知を広め、エンゲージメントを強化するため、体験会などのリアルイベントの開催や、プロモーションの強化を図る方針だ。そうしたすそ野の拡大に向けた取り組みも、顧客をよく知り、直接、ユーザーとのコミュニケーションを重ねてきた開発チームが担う。

(月刊「コールセンタージャパン」2025年5月号 掲載)

2025年04月20日 00時00分 公開

2025年04月20日 00時00分 更新

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