Asana Japan
カスタマーサクセス部門が担う業務範囲は、事業モデルや目的によって大きく異なる。アップセルやオンボーディングに特化するケースもある一方で、ユーザー企業の経営課題に踏み込み“コンサルティング”に近い支援を行う場合もある。業務管理プラットフォーム「Asana」を提供するAsana Japanは、クライアント企業の社員の行動変容や組織変革なども促すカスタマーサクセスを実践している。
カスタマーサクセスの役割は、顧客を「成功(サクセス)」に導くことだが、その手段はオンボーディング支援から継続的な業務支援までさまざまだ。
Asana Japanは、個人/チームレベルの生産性向上から組織レベルの目標管理までを支援する業務管理プラットフォーム「Asana」を開発、提供する。カスタマーサクセス部門は、「最大限に活用し仕事において最大の価値を与える」をビジョンに掲げ、ユーザーの行動変容やAI活用、チーム変革を促すことでソリューション(Asana)を有効活用してもらうことがミッションだ(図1)。仕事のやり方を変えたり、マネジメントや組織体制の見直しを促すなど、“コンサルティング”に近い役割も担う。
カスタマーサクセス部門 部長の後藤誠一氏は、「Asanaは、個々の業務の進捗を可視化し、組織の透明性を確保するプラットフォームです。個人のタスク管理から部門横断のプロジェクトマネジメントまで多様に使えるからこそ、カスタマーサクセスが行う支援も幅広くなります」と説明する。
対象となるユーザーは中小企業からエンタープライズまで幅広いが、60%以上が社員数2000名以上だ。一部の部署で活用を開始し、徐々に全社に拡大するケースが多い。例えば、「残業時間を減らす」という目的で、部署にAsanaを導入、業務を可視化した結果、残業時間の目標値を達成、そのプロセスや成果を他部門に横展開していくという事例もある。スモールスタートで短期間に目的達成を実現することで成功体験を作り、それを社内全体へ活用を広げていく、横展開を推進するのも、カスタマーサクセスチームのミッションだ。
カスタマーサクセスチームのメンバーは、課題を丁寧に聞き出し掘り下げ、パフォーマンスを可視化、行動変容を促す。戦略の提示やKPIの分析を行い、長期的に改革を伴走する(図2)。
一連のプロセスを順調に進めるためのカギが、ユーザーのなかにキーパーソンとなる存在を見出すことだ。
「アンバサダーと呼ぶ、“Asana Love”になってくれる素質を持つ方を特定し、活用を率先してもらうことで、組織改革が進みやすくなります。トップダウンで活用を促進してくれる方、プロジェクトを理解し推進してくれる方、成果などのクチコミを拡げてくれる方など、キーパーソンは複数いると望ましい」(後藤氏)
まずはキーパーソンを特定し、使いこなすまでオンボーディングを徹底。目的達成まで伴走し、成功体験を可視化し、他部署への横展開を促す。具体的には、社内コミュニティの開催や経営向けビジネスレビューも支援する。
ユーザー勉強会やeラーニングの提供など、Asana Japanが直接、ユーザーの利用を促す仕掛けも用意している。
Asanaは、AIエージェントを実装し、ユーザーの業務効率化を支援している。ユーザーが増えるに従い、知見が蓄積され、AIエージェントの精度が向上する。つまり、カスタマーサクセスチームが、ユーザーの利用を支援し、拡大することで、ソリューションの価値が向上する。
このため、カスタマーサクセスのKPIは、チャーンレートに加え、シートエクスパンションを重視する。カスタマーサクセスチームの働きかけにより、どれだけ利用を拡大できるかが、ソリューションの価値向上とビジネスに直結するためだ。
VOCを収集し、商品改善のリクエストを集め、開発チームにフィードバックすることも重要な役割のひとつだ。同社のカスタマーサクセスは、単にユーザーの利用を促すだけにとどまらず、経営拡大に直結している。
(月刊「コールセンタージャパン」2025年3月号 掲載)
2025年02月20日 00時00分 公開
2025年02月20日 00時00分 更新