カスタマーサクセス(CS)は、さまざまな業種で事業拡大のカギを握る部門となりつつある。しかし、長期的な顧客対応や解約防止、アップセルまで業務範囲が幅広く、多くの企業がCS人材の不足に悩んでいる。事業成長を加速させるためのカスタマーサクセス向けBPOベンダーの活用法と、ベンダーに依頼すべき具体的な業務10選を紹介する。
前回まで、カスタマーサクセス業務の整理の手法、カスタマーサクセス向けBPOベンダーへの発注の仕方、コミュニケーションについて解説した。最終回となる今回は、カスタマーサクセス業務のうち、BPOベンダーに依頼すべき内容について具体的に解説する。
BPOベンダーのサービスがマッチしやすい業務領域の特徴は、“専門性は高いがスポット業務”あるいは“専門性は低いが定常業務”の2点といえる(図1)。
BPOベンダーのサービスの使い方は、正社員がより生産性が高く、安定した業務に従事できるように、スキルとリソースを補完しながら進めていくのが理想だ。そのうえで、BPOベンダーの活用に向いている企業やプロダクトには、7つの特徴がある。それを踏まえ、企業がBPOベンターに依頼すべき業務を、10選としてまとめた(図2)。
BPOベンダーに向いている業務(プロダクトやサービス)には、次の特徴が挙げられる。
・導入後のオンボーディングに一定の工数がかかり、人力による支援が必要
・データ移行やCS定例会の進行などの高度なスキルが必要
・人材のタレント性に依存し、広範囲にわたり業務が属人的かつ社内共有も少ない
これらの特徴を持つ企業のカスタマーサクセス業務を、図1のように整理すると、正社員がカスタマーサクセス業務を実施するよりも、BPOベンダーに依頼した方が成果を最大化できる業務といえる。
その一例として、
・大手企業の現場担当者や、ITリテラシーの低い中小事業者向けに行うオンボーディング・問い合わせ対応
・カスタマーサクセスのコンサルタントが行う定例会の資料作成・議事録作成・顧客との調整連絡
などがある。
ここで、CSコンサルタントなどのサポートを担う、CSアシスタントについても触れたい。現状は、カスタマーサクセスマネージャーが業務を広範囲に行うことや、費用の問題から、採用があまり進んでいない。しかし、営業の補助を行う営業アシスタントが一般的な職種であるように、今後はカスタマーサクセスが売り上げの創出に貢献ができるようになっていけば、CSアシスタントという職種も増えていくと予想している。
カスタマーサクセス向けBPOベンダーを活用すべき企業の特徴や、具体的な業務をまとめた。カスタマーサクセスにおいて、BPOベンダーを活用することを強く推奨する背景には、採用の観点を考慮してのこともある。
カスタマーサクセスを正社員として採用する場合は、専門家や該当領域に詳しい人物が持つ体系的な、専門知識の“ドメイン知識”が優先されやすい。その結果、ビジネス経験やCS経験の浅い人材の採用も余儀なくされる場合もある。
しかし、事業拡大には大手顧客の深耕や、成功事例の創出、ナレッジの整備から業務標準化といった“営業・マーケティング・PM・コンサル”などの、カスタマーサクセス以外の職務を経験した人材の登用が必須となる。だが、こうした人材をすべて、CS組織に取り入れるのは、自社のみでは非常に難しく、不可能に近いはずだ。仮に採用できたとしても、組織のフェーズの変化により、業務が標準化されて難易度が下がる可能性は高い。その結果、雇用した高度な人材に別の役割をアサインするなど、将来的なミスマッチも発生しかねない。
プロフェッショナルとして活躍できる人材は今後、BPOベンダー内にも増加していくことが予想される。だからこそ、“事業拡大の特急券”として、BPOベンダーを積極的に活用したい。こうして活用した人材が、場合によっては委託側の企業文化に合致する、あるいは、サービスへの愛情(ロイヤルティ)が深まった結果、業務委託から正社員になるケースも少なくないはずだ。
カスタマーサクセス向けBPOベンダーに依頼すべき業務は多数ある。事業拡大のキーファクターであるカスタマーサクセス部門を、より確実かつスピーディに成長させるために、BPOベンダー活用を検討する一助になれば幸いである。
(月刊「コールセンタージャパン」2024年10月号 掲載)
2024年09月20日 00時00分 公開
2024年09月20日 00時00分 更新