大竹 健斗 第2回

本誌記事 連載 カスタマーサクセスBPOの効用 第2回

BPOの効果を最大化する
発注前に欠かせない5つの要点整理

事業拡大のキーファクターとなるカスタマーサクセスだが、中長期的な視点が必要なうえ、解約阻止からアップセルまで対応範囲も広い。このため、CS組織は常に人手不足に直面している。ひとつの解決策となるのが、事業拡大フェーズでの「BPO活用」だ。アウトソーシングするまでに行うべき具体的なプロセスを解説する。第2回目となる今回は、「発注までに整理しておくべき必須項目」を説明する。

大竹 健斗
Writer
Success Goal Lab. 代表取締役
大竹 健斗
リクルートスタッフィングで派遣・BPO領域の営業を経験したのち、サイシードで営業、PM、CSの責任者を経てCOO就任し、カスタマーサクセスとして多数の企業を支援。2023年にSuccess Goal Lab.を設立。導入事例獲得一体型カスタマーサクセスをはじめ、独自のフレームワークに基づいた事業開発・売上拡大支援を行う。

 前回は、カスタマーサクセスにおけるBPO活用のメリットについて解説した。今回はこれらのメリットを最大限に引き出すために欠かせない「発注までに整理しておくべき項目」について解説する。

 新たに人材を採用、あるいは業務を引き継ぐ際、業務フロー全体を書き出し、誰がどの業務を行っているのか、整理するのが一般的だ。だが、必要に駆られなければ、とくにカスタマーサクセスの立ち上げ期は日々業務範囲が拡大していることもあって、業務フローを整理する時間がとれなかったり、整理してもすぐに内容が変更されてしまうといった課題に直面しやすい。

 これは、BPOベンダーにアウトソーシングする際も同様で、事前に「業務フローの整理」をはじめとする「必要項目の整理」を行っていない企業が大半だ。だが、これはアウトソーシングの成否を左右するとともに、事業拡大にも貢献する非常に重要なプロセスのひとつである。BPOの効果を最大化するには、土台となる業務フローの整理が不可欠だ。

発注するまでの準備
5ステップで解説

 アウトソーシングを依頼する前段階で、整理しておくべき具体的な項目は下記5つ。以下で、順に整理する。

1.現状の業務フロー図の整理
2.ビジネスモデルから理想の「CSロードマップ」を作成
3.上記のギャップとペインポイントを明確化
4.課題への打ち手としてBPOベンダーに提案を依頼
5.スキルとの関わり方がマッチする人材選定をBPOベンダーに依頼して発注

1.現状の業務フロー図の整理
 発注前の第一歩となるのが、現状の業務フローの整理だ。これは、ビジネスプロセスを明確に把握し、改善の余地を見つけるための基盤となる。効率性の低い領域や改善の余地がある箇所を明確にしていく。

図 業務フロー整理図のサンプル
図 業務フロー整理図のサンプル

2.ビジネスモデルから理想の「CSロードマップ」を作成
 CSロードマップとは、顧客がビジネス成果を創出するまでのステップを整理し、顧客と自社で、目指すべき山がどのようなものであるかを定め、高さや登り方の認識を合わせるためのもの。これにより、関係者全体が同じ目標に向かって進むための枠組みが構築できる。

3.上記のギャップとペインポイントを明確化
 1の現状の業務フロー図と2の理想のCSロードマップを比較し、現存する課題や改善が必要なポイントを特定し、ギャップの具体的なポイントを明確化していく。関係者へのヒアリングも交え、課題と理想を語れる状態にまで持っていく。

4.課題への打ち手としてBPOベンダーに提案を依頼
 ここまで洗い出しができて、はじめて「特定した課題に対処するため」に、BPOベンダーに発注する。まず、特定した課題に優先順位をつけ、緊急性や影響度に基づいて取り組む順序を定め、具体的な提案を依頼する。

5.スキルとの関わり方がマッチする人材選定をBPOベンダーに依頼して発注
 提案を受けた後、ベンダーが提供する人材のスキルと関わり方が企業のニーズにマッチするかを検討したうえで発注する。ベンダー側で企業とコミュニケーションをとる人材は、適切なスキルがあることはもちろんだが、企業との「関わり方」がフィットする人材であることも重要だ。過去の類似プロジェクトでのフィードバックや評価も参考にし、その条件にあてはまる人材であるか、事前に確認するのも良い。原則として、人事に関するものを含めて指揮・命令権は委託元には存在しないので、事前確認は実施すべきだ。

 ベンダーを選定するうえで外せないのが、体制やスコープ(プロジェクトの対象となる範囲)、アクション、完了定義を明確に示すことだ。ただし、発注側が創業期である場合は明確にできないものもあるので3カ月単位で改善していくことを推奨する。

 企業文化との相性については、例えば、抵抗がないか、受け入れられそうかというレベルまでハードルを下げて確認することを推奨する。

業務フロー整理フェーズも
BPOに委託が可能

 だが、こうした業務フロー作成と課題の整理について着手できない企業も少なくない。そうした場合、ステップ1の整理段階からBPOに依頼することも可能だ。BPOベンダーは日頃から多くの企業に対して業務整理を行っているため、効果的なサポートを受けることができる。業務整理を依頼することで、ベンダー側でも課題が明確化され、業務整理が進むことから、双方で理解が進むメリットもある。

 以上がカスタマーサクセスBPOへ発注するまでに整理するべき、5つの要点項目だ。次回はカスタマーサクセスBPOのオンボーディング方法について解説する。

(月刊「コールセンタージャパン」2024年5月号 掲載)

2024年04月20日 00時00分 公開

2024年04月20日 00時00分 更新

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