ジェネシスCEOが語る “究極の1to1”

CX向上へ先進機能を続々追加

ミレニアル世代以降を中心に、製品やサービスそのものよりも体験を重視する「Experience Economy:経験経済」が広がっている。企業にとっては、消費者1人ひとりの属性や嗜好、状況に合わせたパーソナライズ対応ができているかどうかが、ビジネスを左右する。コンタクトセンターのマネジメントに与える影響も大きい。コロナ禍を経て、CCaaSソリューション『Genesys Cloud』を中心に、急速に市場シェアを拡大したジェネシスの会長兼CEO トニー・ベイツ氏 と製品最高責任者のオリヴィエ・ジューヴ氏に、消費トレンドを踏まえたうえで、導入動向と機能開発戦略について聞いた


tonyOlivie氏

写真左から会長兼CEOのトニー・ベイツ氏、製品最高責任者のオリヴィエ・ジューヴ氏

 


――コロナ禍を経てコンタクトセンタープラットフォームのクラウドシフトが大きく進みました。CCaaS(Contact Center as a Service)である『Genesys Cloud』の導入状況を教えてください。
ベイツ 現在、100カ国超、5700社の企業がGenesys Cloudを導入しており、約130万人のエージェント(オペレータ)が利用しています。日本でも、300社以上が導入しており、各社各様のCX(カスタマーエクスペリエンス)革新に取り組んでいると考えています。
――コロナ前後で消費活動は大きく変わったとされています。CX向上のための取り組みは、コンタクトセンターにおいても変化があるということでしょうか。
ベイツ
 コロナ禍において対面接点の活動に制限がかかったことで、コンタクトセンターは、CXを提供するための“生命線”という認識が浸透しつつあります。具体的には、消費者側の変化として、製品やサービスそのものよりも体験を重視する「Experience Economy:経験経済」がミレニアル世代を中心に広がっていることも動機になっていると考えられます。当社が毎年実施している消費者調査のなかで、コンタクトセンターの対応に不満を感じた顧客の3分の1が離反するという結果がでています。
――革新に必要な要素を具体的に教えてください。
ベイツ
 顧客はチャネルを問わず、また対応するのがオペレータであってもボットであっても、自身の属性、嗜好や個別の状況を踏まえたパーソナライズ対応を望んでいます。現に、パーソナライズしたサービスを提供している企業の売り上げは、していない企業の2.5倍という調査結果も出ています。
――ジェネシスは、どのようにパーソナライズ対応を実現していきますか?
ベイツ
 「Genesys AI Powered Experience Orchestration」によるパーソナライズ対応強化は、現在最も注力している領域です。具体的には、問い合わせ前の顧客のWebやSNSでの行動データやリアルタイムのコミュニケーションから、必要な情報(データ)を的確に把握し、オペレータに提示、あるいはボットの対応に反映します。

 

日本は「重要市場」として投資
信頼性・可用性の担保進める

 

――もともと御社のユーザーは、日本では音声系機能が中心のプラン(GC1)」を選択する企業の割合が多い印象ですが、消費のデジタルシフトを受けて変化はありましたか。
ベイツ
 CXという観点ではデジタル対応は不可欠です。グローバルにおいても、2023年までは5割弱がGC1を占めていましたが、現在提案中の比率でいうと、企業も含めるデジタルチャネル機能を利用できるGC2、WEM(ワークフォース・エンゲージメント・マネジメント)機能も包含するGC3が増えつつあります。また、GC1を利用中の企業がGC2、GC3に移行するケースも増加傾向です。1社1社のビジネスに適した方法と順番で、段階的に革新を進めていっていただけていると感じています。
――日本はグローバルから数年遅れて技術が浸透すると言われてきましたが、どのようにみていますか。
ジューヴ 新しい技術の浸透という面だけで見ると多少の遅れはありますが、日本はコンタクトチャネルのデジタル化が進んでいる国の1つであり、提供体験の差は縮まってきているとみています。フランス語圏、スペイン語圏と並ぶ優先度の高い市場(Tier1)として、引き続き投資をしていく計画です。
――日本市場で導入拡大していくうえで、重視しているのは。
ジューヴ
 プラットフォームとしての信頼性と可用性です。2023年12月の大阪リージョン開設もその一環ですが、オンプレミスシステムからクラウドに移行する際のありがちな懸念を解消していきたいと考えています。そういった意味では、直近4年間100%安定稼働していることも、お客様(企業)の安心材料になるのではないでしょうか。
――今後の機能開発の計画を教えてください。
ジューヴ
 毎年400前後の機能追加を実施しており、2024年も同様のペースで、「AI(生成AI含む)」「ジャーニーマネジメント/アナリティクス」「デジタルエクスペリエンスのオーケストレーション」の3つを柱として、企業の「Experience as a Service」の実現を支援する方針です。
――AIについての2024年の戦略は。
ジューヴ
 従業員の20%にあたる350人規模の開発者およびプロジェクトマネージャーが携わり、2023年は約60の機能追加を果たしました。データの安全性、信頼性(正確性)、倫理観の3点を満たすものを、組み込んでいきたいと考えています。日本市場向けには、日本語に特化したLLM(大規模言語モデル)を提供するベンダーとのパートナーシップも検討中です。
――Avayaがパブリッククラウド型のコンタクトセンタープラットフォームを提供開始したことで、クラウドシフトが一層進むとともに、市場シェアも変わりそうです。
ベイツ
 Avayaがオンプレミスシステム市場をけん引してきたのと同様に、クラウド市場は当社がけん引してきたと自負しています。実際、グローバルでは毎日2社のペースでオンプレミスシステムからGenesys Cloudへの移行が進んでいます。競合に応じて動きを変えるのではなく、これまでと変わらずにお客様(企業)の方を向いて、新しい技術への投資・開発をし続けていく方針です。

2024年05月27日 11時01分 公開

2024年05月27日 11時01分 更新

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