2022年7月号 <特集>

特集扉

「安価な労働力」はどこにもない!
ロケーションの選び方

Part.1 <変容するロケーション選定>

“どこに作る”ではなく“どう働いてもらう”
場所にとらわれない「拠点戦略」のあり方

安価な労働力の回転を求め、地方に活路を見出す時代は終わった。人が資本のコールセンターでは、働く側の求める労働環境の提供こそが円滑な拠点運営の鍵を握る。一部の企業から“No”の風潮が出てきた在宅勤務の継続もその1つ。働き手に求められる労働環境の許容こそが、存在価値を高め、雇用の維持を実現させる。本特集では、コロナ禍で変容する拠点戦略を検証した。

 コールセンターの運営に、ロケーション(場所)、器(施設、設備)が占める割合は大きい。2000年代前半から、沖縄県、北海道(札幌市)がいち早くコールセンターの誘致に乗り出した。進出企業にとって、運営コストの約70%を占める人件費が都市圏より安価なことは魅力的。

 さらに、自治体の助成金も期待できるとあって、Win-Winの関係で進出が進んだ。だが、安い地代を求めて地方へ活路を見出した企業の思惑に、大きなズレが生じている。コールセンターのロケーション戦略は、業種や規模を問わず、大きな分岐点に差し掛かっている。

図1 立地選定の評価項目(例)

図1 立地選定の評価項目(例)

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Part.2 <チェックリスト>

「必ず採れる場所」は存在しない!
安定稼働の可能性を高める『24のチェックリスト』

「東西に分散すれば、BCPとしては十分」「政令指定都市や集積地ならば採用できる」──こうした理由で拠点を決めるのはリスクが高い。地域を問わず災害や感染症流行のリスクは存在し、採用難と無縁の場所はもはやない。拠点進出は人材戦略に深く踏み込んだ検討が必要だ。編集部は、これまでの取材をもとに「ロケーション選定チェックリスト」を作成した。検討項目について解説する。

 従来、コールセンターのBCP対策といえば、東西あるいは南北に拠点分散するという手法が一般的だった。しかし、世界的なパンデミックを経て、BCPの考え方は根本から見直されている。

 人材確保の観点においても、従来は札幌市や福岡市、那覇市、仙台市など、「とりあえず集積地」という検討が多かったが、全国レベルの人材不足を背景に見方も変わりつつある。センターを安定稼働するには、単純に頭数を揃えるという発想ではなく、自社の業務に合った人材や物件の確保──「マッチング」の視点が不可欠だ。

 編集部では、取材をベースに、選定時に利用できるチェックリストを作成した(図2)。24項目あり、(1)採用、(2)物件、(3)自治体、(4)災害対策、(5)人材──の5カテゴリに分類。それぞれのチェック項目について詳しく解説する。

図2 チェックリスト

図2 チェックリスト

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事例企業

SBI証券
呼量増を受け不可避だった増床
BCPも兼ねて島根県に進出

拠点所在地:埼玉県熊谷市/東京都新宿区/島根県松江市

ファンケル
サテライトセンターを構築
3密対策と通勤時間削減を実現

拠点所在地:神奈川県横浜市/一部在宅

TKCカスタマーサポートサービス
人口9万人余りの町で300席が稼働
採用数3倍超えの応募を維持する秘訣

拠点所在地:栃木県鹿沼市

ナイル
社内のコミュニケーションを重視
つくば市から都心へセンターを移転

拠点所在地:東京都品川区/一部在宅

プレステージ・インターナショナル
地域密着、働きやすさを徹底追求
東北・北陸で「4000席・24時間体制」を実現

拠点所在地:秋田県秋田市/秋田県横手市/秋田県にかほ市/山形県酒田市/山形県鶴岡市/富山県射水市/新潟県魚沼市/岩手県一関市

アフラック生命保険
4拠点+在宅で有事に備える
800名規模の“ミラーリング”戦略

拠点所在地:東京都調布市/兵庫県神戸市/宮城県仙台市/北海道札幌市/一部在宅

プラス ジョインテックスカンパニー
VOC重視の証しは“センターは本社とともに”
有事に備えて在宅勤務も併用

拠点所在地:東京都千代田区/一部在宅

アクサ損害保険
地方で「世界」を意識できる!
ステップアップできる職場を強調

拠点所在地:福井県福井市/高知県高知市/北海道旭川市/一部在宅

アイビーシステム
徹底した“穴場狙い”
「データとフィールド」で入念に選定

拠点所在地:北海道札幌市/東京都豊島区/長野県諏訪市/大分県大分市

 

2024年01月31日 18時11分 公開

2022年06月20日 00時00分 更新

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