2022年5月号 <特集>

特集扉

「採用難」が来る!

Part.1 <現状と課題>

人材の「コロナ特需」、終焉──
後手に回った“安心・安全な職場作り”

新型コロナ禍、コールセンター運営企業の多くが採用難を脱し、BPO各社は豊富な人材をバックボーンに特需に沸いた。しかし、その「祭り」は終局を迎えている。確実に深刻化するとわかっていたウィズ/アフターコロナの採用環境に備え、せっかく確保した人材を維持する工夫を施した形跡は、あまりにも少ない。これから、いかに人材不足を乗り越えるべきか、識者や運営各社に聞いた。

 国内コールセンターの運営は、常に「採用難」「人手不足」対策が最優先されてきた。新型コロナ禍においては、2020年春から2021年秋まで、飲食、観光などから非正規雇用者層が流入する「人材特需」が発生、かつ辞めにくい環境だったことから、一時的に解消した企業も多かったが、それも2021年暮れまでにはほぼ終わった。大手BPOベンダーの担当者は「コロナ以前より採りにくい」「一気に売り手市場に移行した」と口を揃え、採用難対策はまたもや最優先課題に浮上している。

 その大きな要因として、「有期契約社員、非正規社員の多くが在宅シフトできない就労環境」にある(参照)。安心・安全な職場作りという、この2年間の企業の人事施策に欠かせない取り組みが本格化できなかったツケは、今年以降、顕著となることが推察される。識者への取材と運用企業へのヒアリング、そして先駆けて取り組んでいる4社の座談会を通じて、「傾向と対策」を検証する。

図 オミクロン株拡大期の対策に見る「安心・安全な職場作り」への疑問

図 オミクロン株拡大期の対策に見る「安心・安全な職場作り」への疑問

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Part.2 <座談会>

求職者の視点で条件を見直す
「選ぶ」から「選ばれる職場」への意識転換

採用難、人手不足への危機感が高まるなか、すでにさまざまな取り組みに着手する運営企業も多い。オミクロン株の拡大がひと息つき、緊急事態宣言が解除された3月、自社運営、BPO、人材派遣など、異なる立ち位置から現状と課題、そして今後の方針をディスカッションした。大きなポイントは「求職者の視点」「安全・安心な職場」「出稿メディアの選択と集中」の3点だ。

出席者(順不同)

元木 広幸 氏

元木 広幸 氏
NTTマーケティングアクトProCX
CXソリューション部マネジメント部門
オペレーション統括担当統括部長

河田 裕司 氏

河田 裕司 氏
SBI証券
カスタマーサービス部長

平畑 悠 氏

平畑 悠 氏
ウィルオブ・ワーク
コールアンドオフィスデザイン事業部事業部長

國﨑 美香 氏

國﨑 美香 氏
あいおいニッセイ同和損害保険
コンタクトセンター事業部
品質管理グループ グループ長

──新型コロナ禍の2年間、コールセンターには外食産業などからの人材が流入し、採用難が一段落したと言われていました。皆様の状況をお聞かせください。

元木 確かに感染拡大によって、飲食や観光などサービス業の有期契約労働者が多数、雇い止めにあったようです。

 しかし、思ったほどコールセンター市場に求職者が流れた印象はありません。最近は若年層、とりわけ30代前後の採用が厳しくなっています。売り手市場化が進み、複数の内定先の中からよい条件の就業先を選ぶ傾向が強く、採用単価も上がっています。

河田 埼玉県熊谷市、島根県松江市、東京都新宿区に拠点を構えていますが、確かに採用単価が上がってきていると感じます。

 とくに都内の新宿拠点では、相当、苦戦しています。飲食店の再開に伴い、かなり高い時給で募集をかけていますね。熊谷と松江の地方拠点でも厳しさは感じます。

 ただ、コロナ禍においては、とくに熊谷で観光、飲食業の雇い止めにあった人から、「長く働きたい」という求職者が増えました。

平畑 コールセンターに特化した人材派遣と、自社運営のセンターでの受託を展開していますが、弊社では飲食や観光業からの流入が多かったです。

 最初の緊急事態宣言後に派遣登録希望者が増え、来社いただく人数を制限するほどでした。しかし、その多くが「コロナが収束したら、元の業界に戻りたい」と考えているため、短期就業を希望する人ばかりでしたね。2022年になり、一気に売り手市場へ変わった印象があります。

國﨑 当社は直接契約社員が約70%、30%が派遣社員となっています。応募数そのものに大きな変化はありませんでしたが、2020年、21年度の直接雇用する採用者の年齢層が変化しました。

 具体的には、50代が20年度の採用はゼロだったのに対し、21年度は36%。20年度は18%だった20代が、21年度はゼロ。年齢の高めな世代の採用が増えた結果、平均採用年齢が過去4年間で一番高い、43歳強まで引きあがりました。

 20代の応募は、事務職に集中しています。「コール(センター)業務はどう?」と声掛けもしましたが、思うような採用にはつながりませんでした。働き方のニーズへの変化も見られました。他業種での雇い止めの影響もあるのか、とくに年齢が高めの人は正社員を希望されますね。正社員になれないのなら、他社の正社員職へのつなぎとしての、短期就労を希望する人が多いようです。“安心、安全な労働環境で長く働きたい”ニーズが高まっているのではないでしょうか。

続きは本誌をご覧ください

 

2024年01月31日 18時11分 公開

2022年04月20日 00時00分 更新

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