2019年9月号 <マネジメント・オブ・ザ・イヤー 2018>

杉本 智香子 氏

カイゼンの形骸化を防ぐ!
「当事者意識」の醸成をリード

大正製薬
学術研修センター
メディカルインフォメーショングループ
グループマネージャー
杉本 智香子 氏

Profile

杉本 智香子 氏(すぎもと・ちかこ)

大正製薬 学術研修センターメディカルインフォメーショングループマネージャー。大学卒業後、薬剤師免許取得し製薬会社に入社。2007年よりくすり相談室にて問い合わせ対応に従事。会社合併により大正富山医薬品にてメディカルインフォメーションセンター担当。2019年4月より大正製薬に転籍して現職

 患者と、薬剤師、医師などの医療従事者。医療用医薬品のカスタマーサポートにコンタクトしてくる顧客層は実に幅広い。患者にはわかりやすく丁寧に、医療従事者には迅速かつ正確にと、求められる要素も異なる。

 大正富山医薬品(現・大正製薬)のメディカルインフォメーションセンターは、2018年当時、各地に分散設置されていた。それだけでもマネジメントの難易度は高いが、加えて勤務しているスタッフの属性や前歴はさまざまで、持つスキルにもバラつきがある。コールセンターに欠かせない、品質や生産性の平準化は極めて困難だ。

 杉本智香子さんは、マニュアル化とQ&Aの利用による回答の統一化によって、品質平準化をリード。IT導入においてもクラウドCTI、テキストマイニング活用を進め、さらに社内外への広報活動も担うことで、センターの機能強化のみならず、プレゼンス向上にも大きな貢献を果たした。

IT導入を積極リード
社内外のプレゼンスも向上

 杉本さんが実践したアプローチは、(1)ミッションやビジョンの浸透、(2)課題別のチーム活動への参加募集、(3)各チームのキックオフ会議、(4)課題抽出から検討項目を決めるためのブレスト会議で全員の意見共有とコミットによる課題認識と対策設定、(5)年間活動を決めスケジュールをToDo表で管理しながら各チームが進行──というものだった。

 ただ、こうした手順は、ともすれば机上だけのものになりがちで、形骸化の可能性を常に秘めている。そこで杉本さんは、成果物を年度末にグループ内および外部の学会などで発表することで達成感の充実を図り、全員参加型の取り組みとすることで当事者意識向上に務めた。結果、各チームとも徐々に意識が高まり、単なる問い合わせ対応にとどまらない、自らの行動力向上にもつながっている。

 IT活用では、CTIの導入で分散拠点における効率化を実現。テキストマイニングシステムによって「顧客の声」の社内フィードバックが自動化され、メディカルインフォメーションセンターの社内プレゼンス向上をもたらした。実際に他部署からの照会やデータ利用の依頼も着実に増えているという。

 さらに薬剤師を対象としたアンケートでも、こうした取り組みによる成果は徐々に表れており、当時の業界コールセンターランキングにも反映されていた。

2024年01月31日 18時11分 公開

2019年08月20日 00時00分 更新

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