2019年6月号 <Focus/コールセンター>

Focus

「全件チェック」がもたらす納得感
教育を最適化する“モニタリング自動化”

モニタリングに基づく指導は、膨大な時間を要することと、一部のコールしか評価できないといった課題があった。近年、音声認識の精度向上に伴い、テキスト化した音声ログの全件評価が注目されている。評価作業の効率化、フィードバックの充実、モチベーション向上に効果が見られた事例を検証する。

 モニタリングをベースにオペレータを評価している企業は多いが、トレーナーやSVにとっては時間も労力もかかる作業だ。音声認識の精度が向上し、応対ログの全件テキスト化が可能になった今、“モニタリングの自動化”を試みる企業が増えつつある。最新の音声認識ソリューションを活用し、自動化を図った2社の事例を検証する。

グローリーテクノ24

全件評価で弱点の傾向を掴む
集合研修の効果も向上

 通貨処理機などの製品についてのサポート業務を行っているグローリーテクノ24では2017年からモニタリング自動化に着手。サービスサポート部 部長の尾上直樹氏は、「認識率が100%ではないものを使って公平な評価ができるのか、という議論もありましたが、機械が認識しやすい話し方はお客様にとっても聞き取りやすい話し方だと捉え、オペレータごとの認識率の違いも評価対象になると発想を切り替え、導入に踏み切りました」と振り返る。

 システムで評価できない対応、例えば寄り添う対応や適切なタイミングでの提案などに関しては、SVが自動化で効率化した時間を利用して評価する。結果、導入前には3カ月に1本の評価とフィードバックだったが、全件評価を行うことで、より公平で納得のいくものに変わった。効果はフィードバックの高度化にも表れた。長期的に全件評価することによりオペレータや項目ごとの傾向が可視化され、同じ傾向が見られたオペレータのみを集め、弱点項目について集中的な研修が可能になった。さらに、同じ弱点を克服するなかでの教え合いや、グループコーチングによる得意な項目の教え合いが生まれ、切磋琢磨する環境により研修の時間も短縮されつつある。

三井住友海上火災保険

評価項目をオペレータに公開
教育と品質向上を一挙に

 三井住友海上火災保険もモニタリングの自動化に取り組む。コンタクトセンター企画部 企画チーム長の鎌田 豊氏は、「音声認識による効率化で生み出した資源を応対品質の高度化にあてるため、できる限り人手を介さない評価システムを目指しています」と語る。

 自動評価のアルゴリズムは、同チームの品質管理メンバーと、同取り組みの協力企業であるパーソルワークスデザインがノウハウをシステムに落とし込み構築した。評価項目は外部評価機関のHDI-Japanが作成した評価シート「SCA(サポートセンターアナリスト)国際認定スタンダード」をベースに5つに分類、関連するキーワードにより評価する仕組みで、キーワードの数は数百にものぼる。キーワードは会話に取り入れてほしい“推奨ワード”としてオペレータにも公開している。保険会社の平均通話時間は長く、従来は人の耳で評価していたため、3カ月に1本しか評価できなかったが、自動モニタリングの導入後は全件評価が可能になり、オペレータ個々の強み・弱みを明らかにすることができた。

2024年01月31日 18時11分 公開

2019年05月20日 00時00分 更新

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