2017年9月号 <特集>

特集扉

データに見る
コールセンターの「深刻な課題」

 「採用難で“数”を揃えるのが精一杯。クオリティ・マネジメントどころではない状態」──今年の「コールセンター実態調査」からは、品質や生産性管理以前に、“人材の確保”を最優先せざるを得ない管理者の苦悩がにじみ出ている。

 本調査は毎年、「コールセンタージャパン」の読者を中心に、センター運営企業(アウトソーサー除く。業務委託している委託元は対象)に対するアンケート調査を実施。席数やサイト数、稼働時間や業務内容といった基礎的なデータから、人材マネジメントやミッション、チャネル対応状況、VOC(Voice of Customer:顧客の声)活動、ITソリューションの導入状況などを聞いている。


Part.1 <基礎データ>

サイト数、稼働時間にも表れた
「人材不足」「採用難」の影響

 運営センターの拠点数(サイト数)は、50%以上が「2カ所以上」と回答。「災害時のバックアップ拠点として」というBCPを目的とした運営スタイルが多いが、「1カ所では必要な人数が集まらない」という回答もあった。

 有人対応の稼働時間は、「24時間対応」が昨年度調査よりも大幅に減少。「人材不足で、有人による24時間対応を中止してWebサイトに誘導している」(通販事業者)、「24時間対応しているが、緊急案件のみでそれも業務委託に切り替えた」(製造業のテクニカルサポート)と、ここでも人手不足による変化を強いられた回答企業があった。

図1 回答企業センターのサイト数(n=204)

図1 回答企業センターのサイト数(n=204)


Part.2 <人材マネジメント>

教育だけではカバーできない
悪化する「新人の離職率」

 人材マネジメントに関する設問からは、「運営上の課題」「運営形態」「改正派遣法への対応」「採用状況」「新人オペレータの離職率」「離職予防施策」のデータを抜粋した。

 とくに深刻さが顕著となったのは「新人オペレータの離職」だ。「71%以上」という極めて高い離職率が全体の約2割を占めた。採用難のあまり、採用基準を緩和した影響が出ている可能性は高い。

 離職予防施策では、「シフトの柔軟性を持たせた」が全体の約3割と昨年度調査から増えた。また「評価とフィードバックの強化」「研修の充実」も取り組むセンターの比率が上がっている。

図2 新人オペレータの離職率(n=204)

図2 新人オペレータの離職率(n=204)


Part.3 <チャネル活用>

強まるWebサービスと電話の連動性
チャット、FAQ運用センターが急増中

 コールセンターで顧客対応しているチャネルは、電話だけでなくメール(Webフォーム含む)も全体の88%を占めている。チャット対応は16%、「今後対応予定」は30%に達しており、対応企業が増えそうだ。

 「Webサイト上に公開しているFAQ構築・運営への関与」は33%が「コールセンターがすべて作成、運営している」と回答。全体的にWebを起点とした顧客コンタクトもコールセンターが中心となって運営する企業が増えているようだ。

図3 コールセンターで対応しているチャネル(複数回答あり)

図3 コールセンターで対応しているチャネル(複数回答あり)

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Part.4 <ITソリューション>

「AI導入予定」は約4分の1!
期待領域は“オペレータ支援”に集中

 「導入予定ソリューション」については、約25%が「AI関連ソリューション」と回答。その活用シーンは、意外にもチャットボットが少数派で、多くは「FAQなどのナレッジ検索精度向上によるオペレータ支援」「バーチャル・オペレータ」「VOC分析」に集中している。

 ITベンダー各社の訴求は、もはや「チャットボット一辺倒」に近い。しかし、運営企業、とくに現場レベルでは異なる期待を抱いている可能性もありそうだ。

図4 AIソリューションに期待したい機能(n=161、複数回答あり)

図4 AIソリューションに期待したい機能(n=161、複数回答あり)

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2024年01月31日 18時11分 公開

2017年08月20日 00時00分 更新

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