クレーム対応のレシピ 第26回

安請け合いは禁物です!
「ならぬことはならぬ」で損失を防ぐ


著者:JBMコンサルタント 玉本美砂子
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 大河ドラマ「八重の桜」がなかなか面白い。
前回より随分見やすい感じがする。

 ドラマの中に「ならぬことはならぬものです」という会津の掟が出てくるが、これは「できないことはできない」という否定的な意味ではなく、「してはいけないと決められていることは、絶対にしてはいけない。理屈を言うな」という強い教育であるらしい。
例えば「虚言を言うことはなりませぬ」などの条文が並んでいる。

大阪弁に翻訳すると「あかん言うもんはあかんねん」だろう。

 クレーム応対では、「ならぬものをなるように言う」=「できもしないことをできると言う」とする安請負は禁物だ。

だが、最近はクレームを恐れすぎるあまり、事実をよく調べもせずになんでもかんでも、交換/返金で済ませてしまう風潮がある。

 例えば、何万円もする某高級ブランドのブラウスにシミがついているというクレームを電話で受けて、すぐに新品に取り替えて送るという応対があったと聞いたことがある。

なぜ、どのようなシミがついていたのか。
こちらの落ち度なら仕方がないが、もしかすると顧客の不注意で口紅が付いたのかもしれない。

クリーニングで決着するかもしれないことを、よく調べないばかりに何万円もの商品との交換で済ませるのは、会社に不利益をもたらす怠慢ではないだろうか。

 顧客の要求に応え、満足してもらうのもクレーム応対なら、会社の損失を防ぐのもクレーム応対だ。安易に交換に応じる応対の底流にあるのは、「新品になれば文句を言わない」「お金や品物で済ませるのが一番」という応対者の精神性なのだ。

 もう一つ、知人のクレームのエピソードがある。
真空パックの饅頭の箱を開けると饅頭にカビが生えていた。
電話をすると商品を送ってくれと言う。
それも「着払いでけっこうです」という上から目線の言葉付きでの応対だった。

2~3日後、同じ饅頭が3箱送りつけられてきた。お詫びの手紙の一つも、電話の一本もない。
「2箱分儲かったのだから文句はあるまい」という感じだ。
知人は気分を害して饅頭を捨ててしまったという。
もちろん、その商品がリピートされることはない。

クレーム応対にクレームが生まれた例である。
不満を持つ→二度と買わない→そのことを言いふらすという負の三段階が生まれ、会社としては饅頭3箱分の損失だけで済まなかったことになる。

 商品の価格とは、商品そのものが50%、その上に応対力が50%上乗せされて決まると言われている。
価格=商品力+応対力と言ってもよい。

 応対力で必要となるのは、金の勘定より人の感情に思いを馳せることである。

返金や交換をするだけなら、応対者がいなくても機械でもできる。そんな応対には、それこそ「ならぬことはならぬものです」と言っておきたいものだ。


(コンピューターテレフォニー2013年5月号掲載)

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2024年01月31日 18時11分 公開

2016年06月29日 16時52分 更新

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