定着する組織作り『人財』最適マネジメント講座 第1回

 

自立とモチベーション向上を促す
「職務内容定義」と「公正評価」のススメ


「職務内容定義」を文書化し、認識を共有しているセンターは多くない。だが、従業員管理には不可欠で、センターで働くすべての職務・階層に必要だ。中長期的な仕事への目標を立てやすくなり、キャリアアップが明確になる。これがモチベーションとなり、離職率低下にもつながる。


著者:HDI-Japan(ヘルプデスク協会) 長掛文子
この著者の講座はこちら

 コンタクトセンターで最も大事な 存在は誰か。答えはもちろん顧客だ が、その顧客と第一線で対応してい るスタッフ(従業員)も当然、大切 な存在だ。
 だが実際には、顧客満足を意識す るセンターが多い一方で、スタッフ の満足度を意識していないセンター が多いことに愕然とする。
 ES施策は、加湿器やマッサージ チェアを用意したり、従業員の希望 を聞き言いなりになることではな い。スタッフが楽しく、モチベーシ ョン高く、責任を持って業務を遂行 し、長く勤めることを指す。従業員 が、自分に求められていることと評 価対象が何かを理解し、その評価が 公平であること――それがスタッフ の満足度を継続的に上げることにつ ながるのだ。

管理だけでは不十分
ESへの投資が必要!

 本連載では6回にわたって、HDI サポートセンター国際認定(以下 SCC国際認定)の項目の一つ、「従 業員管理」について紹介していく。 SCC国際認定は8つのモデル要素 があり(図1)、全68のスタンダー ドから構成されている。


 
この68のス タンダードに基づいて、HDIオーデ ィタ(SCC国際認定基準に基づいて センターを評価し、SCC国際認定の 現地監査を推進できる監査官)がア セスメントを行う。これにより課題 や改善点、その手法まで明確にでき る。なお、日本の監査官28名は、 W e b サイト( w w w . h d i - j a p a n . c o m / h d i / c e r t i f i c a t i o n - training/auditors.asp)に詳細を掲載 している。

 図2は、2009年度にHDIサポート センター国際認定に基づくアセスメ ント(以下SCCアセスメント)を実 施した企業の結果をグラフ化したも のだ。



 8つのモデル要素ごとのスコ アを見ると、「従業員管理」と「従 業員満足」には大きな開きがある。 SCC国際認定を取得しているセンタ ー(実線)は、「従業員管理」と 「従業員満足」のスコアが高いが、 SCC国際認定をまだ取得しておらず SCCアセスメントを実施しただけの センターは、スコアが非常に低い。 これは、ツール(「サポート資源」) に投資しプロセス改善(「プロセス と資源」)に時間をかけるセンター が多い一方で、「従業員管理」に時間やコストをかけるセンターが少な いかを示している。

職務定義で役割を把握
向上心を刺激する


 「従業員管理」の詳細項目は、① 職務内容定義、②トレーニングプラ ン、③キャリア開発プラン、④実績 評価、⑤従業員満足、⑥給与、⑦報 奨・表彰、の7つだ。
 第1回目は、このうちの「職務内 容定義」について解説する。
 職務の内容を定義し文書化してい るセンターは決して多くない。
 一般的に、一次窓口スタッフの業 務内容は、①電話を受け、②顧客の 問題を解決、③ログを入力、などだ が、センターごとに求めるスキルは 異なり、必要なトレーニングや推奨 する資格も同じではない。

 職務内容定義は、「どんな業務を するか(WHAT)」だけでは不十分 で、「なぜその業務をするか(WHY)」 が大事だ。つまり、「役割と責任・ミッション」などの定義が必要にな る。これにより、機械的に仕事をこ なすのではなく、仕事への思いを持 ち、顧客のために何ができるのかを 考えながら業務にあたるようにな る。HDIのプラクティス&サラリー サーベイ2009の結果からも、仕事上 のモチベーションに影響する要素は 「報酬」よりも「会社への貢献」だ という結果が出ている(図3)。

 なお、定義されている職務内容が できないとその職務に就けないとい うものではない。これは、あくまで も「センター(企業)が求めるもの」 だ。定義を明確にすることで、各ス タッフは現在の自分のスキルと、定 義されている内容との間にどれだけ ギャップがあるのかを知り、それに 近づくために1年間の目標を立てて 取り組むことにもなる。このため、 センター側は、実績の評価により各 スタッフのスキルギャップを把握 し、個々に合わせたトレーニングの 実施を行う必要がある。職務定義は評価や育成にも連動するのだ。

定義は戦略・評価とリンク
定期的見直しで形骸化を防止

 「職務内容定義はどの職位まで作 成すべきなのか?」という質問をよ く受ける。基本的には、センターに かかわるすべての職位に存在するこ とが望ましい。なぜなら、スタッフ は自らキャリアプランを立てること ができるからだ。「今後の自分のキ ャリアが見えない」という理由で離 職するスタッフは少なくない。職務 内容定義によって、一次窓口スタッ フが、最短でSVになるには何年か かるのか、センター長になるには、 どんなスキルを身につける必要があ るのかを明記することが、離職率を 減らす第一歩になるかもしれない。 職務内容定義は、各職位の実際の 役割と責任と必要条件を正確に反映 している必要がある。そのうえで全 員がその内容を理解し、個人の目標 やチームの目標、センターの目標と 連動させる。センターのビジョン・ ミッションと同様、定期的な見直し も不可欠だ。SCC国際認定の監査で は、そこまでを求めている。

(コンピューターテレフォニー2010年10月号掲載)

第2回はこちら

この連載の一覧はこちら

この著者の講座はこちら

2024年01月31日 18時11分 公開

2013年02月22日 11時37分 更新

その他の新着記事

  • スーパーバナー(リンク1)

購読のご案内

月刊コールセンタージャパン

定期購読お申込み バックナンバー購入