~SVの自分磨き~ロジカルで行こう!第2回



原因究明から実行計画まで
問題解決のロードマップを描く!


「何が問題であるか」を見定めることができない管理者は数多い。現象や原因は、必ずしも問題の本質を指しているとは限らない。本当に運営に支障をきたしている要素を抽出することが重要だ。また、問題解決のプロセスは「原因究明」「対策検討」「実行計画の課題」の3ステップを踏むが、どのステップから始めるべきかは状況により異なる。

著者:Y'sラーニング 浮島由美子
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 前回は、そもそもロジカルシンキングとは何かを考え、あくまでも手法であると説明しました。

 手法ですから、手順があります。手順とは、ロジカルに考えるためのルートです。これをロードマップと呼びましょう。

 ロジカルシンキングでは、ロードマップの出発点は1つで、通過地点は3つあります。つまり、ルートは3本あるわけです(図1)。

図1 問題解決ロードマップ


 問題解決ロードマップのポイントは、次の2つです。

・出発点を間違えないこと
・正しいルートをたどること

 簡単なことのようですが、私たちの「思考(=考え方)」にはそれぞれ「くせ」があります。日ごろ、私たちはこのことに無頓着で、「自分の好きなように」考えています。簡単なことでも、すぐに切り替えができるとは限りません。

 前回、ロジカルシンキングとは、「思考の技術」です、とお伝えしました。「考え方を変えろとはいいません、こんな考え方もいかが?というものです」と書きました。素直な感覚で、「考え方を増やす」つもりで受け入れてください。

■現象・原因は「問題点」と異なる

 問題解決ロードマップの「出発点」は図1の中心に記述されている「問題は何か→取組みの課題」という部分です。「問題解決」なのだから、当然かもしれません。

 「問題点」とは、「あるべき姿とのギャップ」です。

 次にあげるケーススタディで、問題点を考えてください。

「毎日、遅刻と突発休の人が必ず発生する」

 多くのコールセンターで、よくある事象ではないでしょうか。管理者の立場では、「誰も遅刻していない、突然休まないことがあるべき姿なので問題だ」と思いがちですが、もう一歩踏み込んで考えてください。もし、「数人遅刻しても電話の応答率は落ちなかった」としたら、問題はないのではないですか?現実問題、そんなことはあまりないかもしれません。だからこそ、私たちは思い込みの落とし穴にはまるのです。「遅刻」=「問題」としてしまうのは早計です。これは考え方の問題です。

「新人研修のトレーナーが不足している」

 これはどうでしょう。問題ですか?「トレーナーが足りないと新人研修ができないから問題だ」ほんとうですか?他の方法はありませんか?

 問題解決は、「困っていること」「気になること」の解消です。

ですから、極論をいえば、「遅刻者がいても業務に支障がないなら構わない」「トレーナーが足りなくても新人が予定通り立ち上がれば問題ない」わけです。もし、「遅刻者がいても特に問題は起きなかった」としたら、「遅刻者がいること」よりも「遅刻者がいても運営に支障が起きないこと」の方が問題です。「トレーナーが足りなくても新人は立ち上がった」とすれば、「今回の新人は(新人研修は)どこがよかったのか」が気になることです。

現象や原因を「問題点」にすり替えてはいけません。「出発点を間違えないこと」というのは、そういう意味なのです。問題点は「本質」を見極めましょう。

■原因究明を省くケースもある

 問題解決ロードマップのもう一つのポイントは、「正しいルートをたどること」です。ルートは、3本あります(図2)。

図2 正しいルート


 問題が起きたとき、そこには必ず原因があります。しかし、その「原因」は私たちがいま追求すべきものかどうかはわかりません。もうわかっていることをあれこれ論じるのはナンセンスですが、思い込みで原因を決めつけて「原因究明のプロセス」を飛ばしてしまうのも危険なことです。ここに「見極め」が必要となります。

 第一のルートはフルコースです。原因究明を行ったうえで「対策」を検討することが、よりよい解決を導き出すときは、このコースです。原因究明にはさまざまな手法が有効です。適切な手法を使い、正しい原因もしくは一番多い原因を見出すことが、対策を導き出す近道になるのです。

 第二のルートは、「原因究明」省略コースです。「明日台風がくるらしいが、センターの朝一の要員確保はどうしようか」などというとき、もちろん「原因究明」は不要です。どんな要因にせよ、台風はくるからです。このように「原因究明は不要だが対策はいろいろ考えられる」というとき、このルートを使います。

 第三のルートは、「原因究明」も「対策検討」も不要なコースです。原因がわかっていて、対策も決まっている。ルーチンワークの多い私たちの業務では、いまさら「原因究明」や「対策検討」に時間を使うこと自体がもったいないケースもさまざま抱えています。例えば、「新サービスの開始が決まった」などというとき、私たちは原因究明はもちろんのこと、対策もいちいち検討しません。経験的に正しい対策を心得ているそのような場合、やるべきことは「実行計画の課題」です。つまり、つまずきなく対策を実行するための計画策定です。

 問題解決のルートを正しく見極めることが、「問題の課題化」です。問題解決までの道のりの段取りを行う作業であり、問題解決成功の肝でもあります。

(コンピューターテレフォニー2012年5月号掲載)

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2024年01月31日 18時11分 公開

2013年02月22日 14時08分 更新

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