コンタクトセンターで使える!ソーシャルメディア活用の手引き 第2回




センター運営のノウハウを応用
FAQ/ガイドライン策定が成功への第一歩


いきすぎた属人性や炎上リスクは、事前準備で防ぐことが可能だ。ガイドラインやFAQ、KPIを決めて、応対者の意識統一を図る。ガイドラインは、社員が個人利用する際の事故防止の役割も持つ。これらは、センター運営で培ったノウハウをそのまま応用することで実現できる。

著者:オフィスバトン うねだ友希
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 今回は、ソーシャルメディア対応を開始する前に行うべき準備について解説する。具体的には、必要なガイドライン策定や迅速な対応をするためのFAQ、コンタクトリーズン分類、最初にみるべきKPI――の4つだ。

■個人利用にもガイドラインは必須

 いわゆる「ソーシャル疲れ」を防ぐためにもガイドラインは非常に重要な役割となるのだが、ソーシャルメディアを始めた企業のうち、最初からガイドラインを策定して取り組んだという事例はあまり聞かない。

 アディダス社員が契約選手とその家族についてツイッター上で誹謗中傷し、炎上したケースや、ホテルの従業員が宿泊にきた芸能人の情報を同じくツイッター上で漏らし炎上した。こうした不幸な事件を避けるためにも欠かせないのがガイドラインの策定だ。今や、社内規定にソーシャルメディアについての項目が必要不可欠だといえる。企業でソーシャルメディアを使う、使わないに限らず、例え個人で利用を楽しむ場合であったとしても、何かあった場合は会社として謝罪が求められるケースもある。個人のソーシャルメディア使用を制限する企業もあるが、隠れて使うケースもあり、それでは意味をなさない。ガイドラインは、実際にソーシャルメディアを担当するチームやその管理者などいくつかのパターンが必要とされる。規定があることで会社を守ることにも繋がることを理解し、最初から作り込んでしまおう。

 策定にあたっては、弁護士の協力を得る企業も多いが、インターネット上に公開している企業も多いのでぜひ参考にされるとよい。資生堂や東急ハンズの事例はわかりやすいような工夫がされている。立派なガイドラインを用意しても社員に浸透しなければ意味がないことを念頭に置こう。

 前述のアディダスの事例はコンプライアンスもしっかりひいていたようだが、新入社員が無視してしまったという悲劇に陥った。毎朝の朝礼で伝え続ける、社内研修を実施する、会議や会合で事あるごとに意識共有するなどの努力が必要とされる。

■「FAQ」あれば憂いなし

 事前のFAQ作りの重要性は、コンタクトセンターの運用経験があればすぐにピンとくるのではないだろうか。想定される問い合わせや質問に備え、予め応えられる内容を準備しておくことで返答をお待たせする時間の短縮化が図れ、サービスの向上に貢献できる。

 迷走している既存のアカウントに一番足りないのが、実はこのFAQ作りだ。そのために「こんな質問がくるとは思わなかった」「どう返信していいのかわからない」と困惑し、対応に時間がかかりクレームに発展するケースも見受けられる。ある調査にもあったが、酷いところは質問やクレームさえも返答できず無視してしまうこともあるらしい。

 コンタクトセンターの場合、立ち上げ時には少なくとも100近いFAQを用意しているところが少なくない。コンタクトセンターのノウハウはソーシャルメディア運用に流用できると断言できる。

■広くコンタクトリーズンを分類する

 顧客とのやりとりも多く発生し、ソーシャルメディアの稼働率が高いところでは有料のアクセス解析ツール、VOC分析などおこなっているところもあるだろう。その際に必要となるのが、コンタクトリーズン分類だ。これもコンタクトセンター経験者ならピンとくることだろう。

 顧客からの問い合わせはどういったものがあるのか知ることはもちろん、商品開発や自社サイトの改善に役立つ情報が得るためにもまずは分類が必要となる。

 余談だが先日、「リッスン・ファースト!」の著者であるスティーブン・ラパポートしが来日し講演を行った。同氏は、「傾聴」はカスタマーサービスに集まる顧客の声や会社の評判、風評ばかりに捉われがちだが自らVOCを限定せず、すべての消費者、ステークホルダーの声に耳を傾けようと訴えていた。そうすることで新規顧客の発見や新商品の開発などあたらしい視点が広がっていくという。そのためにやはり顧客の声、VOCを分析しやすいようにある程度の分類がされている必要があると思われる。しかし、分類そのものに捉われず、当てはめるのが難しい場合はタイトル付けして別に分類するなど、柔軟な考えがここでも必要だ。同氏が強調して語った言葉、「Don't limit listening!」がとても印象的だった。コンタクトリーズンのカテゴリ分けにも当てはめて考えてもらいたい。

■最初のKPIに最適な「クラウトスコア」

 最後に、当初の目標設定に有効な指標を紹介する。

 前回、ROI算出のためにも、まずは「最初の目標」を決めた方がいいと伝えた。有効な指標の一つにKlout(クラウト)スコアとNPS(ネットプロモータースコア)がある。いずれも個人のソーシャルメディアにおける影響力を数値化したものだ。海外の事例では影響力のある一定のクラウトスコアを持つユーザーには特別なプランを用意するなど差別化も進んでいる(図参照)。ネットプロモータースコアについては、11段階評価(0~10)のためロジックも複雑ではなくわかりやすいと評判だ。いずれも明確な指標となるため信頼性もあるが、スコアをあげることが目的となってしまっているケースも個人利用では見受けられるので注意したい。

図 クラウトスコアの見方

(コンピューターテレフォニー2012年7月号掲載)

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2024年01月31日 18時11分 公開

2013年02月22日 14時14分 更新

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