クレーム対応のレシピ 第9回

とるべき対応は十人十色――
「違い」がわかる応対者を育てよ


著者:JBMコンサルタント 玉本美砂子
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 ダバダァー♪♪で始まる某コーヒー豆のテレビCM。二十数年ぶりに「違いがわかる男」のキャッチコピーが復活した。さまざまな作家や指揮者を起用したこのシリーズは、筆者も子供の頃から見ており、国内のCM史上屈指の出来だと思う。なるほど「違いがわかる男」は「上質を知る」のだ。

 「違いがわかる」ことは、人生においてもビジネスにおいても非常に大事だ。子供には、「やっていいことと悪いこと」の違いがわかるためのしつけを行うし、一流の料理人は舌先で味のわずかな違いを感じ取り、指揮者は半音の差を聴き分ける。ビジネスでは、「概念の差異」「情報質の差異」が決め手になる。「製品」「商品」「作品」の差別化ポイントや「仕事」「作業」の差異、「同感」と「共感」の違い――これらを見極められる人は、上質の仕事をたぐり寄せることができるのだ。

 違いがわかるために必要な力が、『察知力』だ。いささか強引にクレーム応対に結びつけると、顧客の語気やちょっとした言葉を察知し、どういう状況でどういう気持ちで電話をかけているかに気づく感性――これが弱いと“違いのわかっていない”応対になってしまう。

 クレームなのにクレームだとわかっていない応対や、緊急事態なのに「それではご住所を~」とのんびり反応してしまう応対などは、クレームを大きくし、別のクレームを生んでしまう。一例として、実際にあった電話を紹介する。ある商品について、「おたくからアウトバウンドで営業があり、『簡単に使えるから』というので買ったのだが、まったく使えない。おたくの会社は右手のしていることを左手がわかっていないんじゃないかな」というクレームがあった。応対者がこのクレームからまず察知すべきことは、「この顧客は商品そのものに不満があるわけではなく、会社の体制を非難している」ということである。また、「アウトバウンドで営業」「右手のしている~」などの言葉から、シロウトではなく、しかも知的な人物であることを察するべきだ。こうした顧客心理や顧客属性が察知できていれば、何に謝罪して、どのように対応すればよいかの筋道が見えてくるはずだ。

 クレームの応対者には、クレームの内容と顧客の属性について“違い”を聞きわける耳と、状況をイマジネーションする力が不可欠だ。緊急の対処が必要か、そうでないのか、商品の不満なのか、体制の不満なのか、一番解決しなければならない問題は何なのか――こうしたことを観察・察知する力をつけるためには、実際の音源を聞いて「いい応対」と「よくない応対」の違いを体感するトレーニングを実施するといい。トレーニングで応対力が上がれば、休憩時間にはダバダァ~♪♪とコーヒーを飲んでクレーム応対で溜めたストレスを発散できる、「違いのわかるオペレータ」になれるにちがいない。


(コンピューターテレフォニー2011年12月号掲載)

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2024年01月31日 18時11分 公開

2016年06月29日 16時46分 更新

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